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<少年陰陽師>…小話:ズバリ、幼児化(ドヤ)



(時間軸:「我、天命を覆すもの」前)

注:落ちなんてありません









陰陽師って危険な仕事よね。
分かるよ、だって同居人だもん。三日くらい断食してほとんど水しか口にしなかったりしてミイラになるんじゃないかって心配になるし、夕飯後に出かけたかと思うと明け方まで帰ってこなくておまけに全身ボロボロだったりするし、ホント危険だよね。たまに背中に幽霊くっ付けて帰ってくるときあるし、神様はりついてたときは目玉落ちるかと思ったよ。
・・・・・けど。

「まさかそんな風になるとは思わなかったぁ        あははははははははははははははははっ」
「わらうな!しつれいだぞ!」

腹を抱えて床を転げまわるマコトに文句を言う晴明の声は、何故か以上に甲高い。

「あ〜・・・・・マコトや。そろそろ晴明が可哀想だから一度落ち着こう?な?」

ひぃひぃともう息が苦しそうに笑う親友の背中をたたきながらも、笠斎の目元も赤くなっているから笑いの波が着そうなのを寸止めで押さえているのが見て取れた。
そんな笠斎を分かっているのかいないのか、突然ガバッと起き上がったマコトはその勢いのまま目の前の“それ”に勢いよく抱きついた。
「わぶっ」とくぐもった悲鳴が聞こえてきたが、全力で無視される。

「これを笑わずに何を笑う!最っ高!!!妖グッジョブ!!」
「なにがさいこうだ!こっちはさいていだ!!いーからはなせー!」

怠けてるとはいえ、元は自衛隊上がりのマコトに熱い抱擁をかまされる晴明は苦悶の声を上げる。
そう。マコトの腕に、すっぽりと。

「しっかしまぁ災難だよなぁ。妖退治したのはいいけど、最後の足掻きで散り際にそんな格好にさせられて」
「ふふ。頭から蛙お化けに食われて、それで唾液まみれになったんだっけ?うひょっ、きったね〜」
「まぁしばらくたてば元に戻るだろうから、な?」
「もし戻らなくても、このマコトさんがちゃーんと面倒見てあげまちゅからねぇ〜晴明くーん」
「マコトころす!!」
「いやぁ〜ん可愛くないこのクソ餓鬼っ」

額にびしっと青筋を立てながら更に腕を締める。
ぐえぇっ、と晴明らしからぬ悲鳴に慌てて笠斎が止めに入った。

「待て待て!一応子供になってるんだからやりすぎたらだめだって!」
「はっ、そうだった」

本気で忘れていたらしく、今は自分より華奢な細い首筋から腕を外す。
と、くらりと小さな身体がふら付いたので慌てて手を伸ばしてキャッチ。結局マコトの膝の上に逆戻りだ。

目を回す清明の身体は今やマコトの腰ほどの身長しかなく、いつもは吊り上っている目も、きょろりと円らな瞳に変わってしまって居る。

昨夜(というか今朝早く)、笠斎と蛙モドキの妖怪と一戦交えてくると出かけて行った晴明。
しかし気を抜いた一瞬のすきにビヨーンと伸びた蛙モドキの下に巻き取られるとそのまま引っ張られ、大きなお口にごっくんと飲まれてしまったそうな。
慌てて笠斎が蛙モドキをどうにか倒し、晴明を引きずり出すも、その身体は何故か見事なまでに縮んでしまって居たのが事の顛末。

あんなツンツンツンツンツンデレくらいの晴明が、こんなに可愛い容姿になると威力も半減以下だ!

興奮で赤くなった頬をどうにか押さえようと深呼吸しつつ、ムスクれてしまって居る晴明にヘラリと笑って見せる。


「ごめん晴明。なんか何時ものノリで・・・」
「・・・・・元に戻ったら覚えてろ」
「うわっ、こわっ」

なんて言ってみるも、クリリとした大きな目で睨まれても全く怖くない。
むしろ可愛い。いますぐ抱き潰してしまいたいくらい可愛い。あぁもう堪らない!!

「・・・・ってもう抱き潰してるから!!」
「はっ!」

イカンまたやってしまった。

しっかりしろ晴明ー!と小さくなってしまった晴明の身体を振る笠斎。・・・・あまりの圧力だったのだろう幼い身体の晴明は多分特殊な見方をすれば口から魂が出てしまって居る状態なのだと思う。
何時もは憎ったらしいったらありゃしない言動も、ちみっちゃくなれば子供の癇癪にしか聞こえないから痛くもかゆくもない。

・・・・・こんな可愛いなら、ずっとちびっ子のままでいいのに。

「・・・・マコト。いまふざけたことかんがえてなかったか」
「・・・・・・・イエ、何モ」
「うそだ!ぜったいかんがえてただろう!」
「いいえ、別に考えてませんよ〜晴明がこのままチビのままなら毎日弄り回して振り回してきっと楽しいだろうなぁとかそんな不純なこと考えてるわけないじゃないかぁ〜っはっはっはっはっ」
    っ!!!」
「はいはい。一旦冷静になろうかマコト」

恐怖に硬直する小さな身体を#nameの不埒な思考と眼差しから隠す様に袖で覆い、笠斎は呆れたように微かに笑った。

「まぁ、きっとこの状態は一過性のものだろうから、二、三日たてば元に戻るさ。師匠には俺から言っておくから心配するな。な?」

そう言って顔を覗き込む笠斎。
居候から守るためとはいえ自分を抱き寄せている腕が気に入らないのか、ちろりと上目使いで笠斎を見上げ、ムッとした顔で無言で頷く晴明。
頬を膨らませてコクリと頷くものだから、その可愛らしさは倍増。
流石の笠斎も、中身が大人の晴明だと分かっていながらもキュンとしてしまった。(言わずもがな、真正面でそれを目撃してしまったマコトは黄色い悲鳴を口の中で噛み殺しながら七転八倒している)

「じ、じゃあ俺は、そろそろ帰ろうかなぁー」
「!?」

薄っすらと頬を赤くした笠斎は、この居た堪れない現場がいずれ修羅場と化さないよう早々に逃げようとヒョイと晴明を膝から降ろし、立ち上がる。

が。


ガシィッ


「!?」

狩衣の長い裾を掴まれ、思わず身体がふら付く。
何事かと犯人を見ると、幼い姿になった友は必死の形相で笠斎を見上げていた。

その顔にアリアリと書いてる文字に、笠斎の顔が引き攣る。

“か・え・る・な”

「・・・・・えと、清明さん?」
「おまえ、わたしをこいつとふたりきりにするつもりかっ」
「え、だって俺自分が可愛いもん」
「こいつのことだからぜったいおかしなことをされるにきまってる!わたしの“ていそう”が!
「ちょっ!子供の形で“貞操"とかそんな単語言わないでくれません!?なんか意味もなく幻滅しちゃうから!」

仕事で妖と対峙した時でさえこんな必死な顔をした晴明には拝めないだろう。
こそこそと顔を突き合わせながら、死にそうな顔で泣きつく晴明は子供の姿も相まって可愛いが、流石の笠斎もこのお願いは消えない。だって命が惜しい。

晴明はこちらを見ていて気付いてないだろうが、ニコニコと自分達を見つめるマコトの笑顔がものすんごい黒い。
何故か行儀よく正座をしているが、膝の上に乗せた手がワキワキと動いているから、抱きしめたくてうずうずしているのだろう。

男にそんなことするなんて、人一倍矜持の強い晴明にとっては地獄だろう。
しかしマコトにはそんなこと関係ない。

ちろりと目の合ったマコトの眼が、獲物を捕らえたかのように弓なりに細まり、ぺろりと唇を舐め上げる。

     !!や、やっぱ帰る!いや、還る!!」
「どこまでかえるきだ!ってまて!」

済まない晴明―!という涙交じりの声が廊下の奥へと消えて行き、やがて戸の閉まる音と共に完全に掻き消えた。

「・・・・・・」
「あぁ〜。どうしたんだろうねぇ笠斎ったらあんなに焦って帰っちゃって。ご飯食べて行けばいいのにぃ・・・・さて」
「!!」

突然低くなる声に小さな背中が面白い位に飛び上がる。
可哀想なくらい震えながらゆっくりおと振り返った晴明は、いつの間にかすぐ後ろに接近していた居候に思わず息を呑んだ。
満面過ぎて逆に怖い位の笑みを浮かべたマコトは薄っすらと涙を浮かべて自分を見上げる晴明をひょいっと抱き上げた。

「ご飯にしよっかっ」
「・・・・へ?」

きょとんとした顔で自分を見上げる小さな親友に笑いかけ、軽々と腕に抱き上げた身体抱え直す。

「疲れてるだろうから、粥を作っておいたよ。自家製の梅干し刻むからそれ乗せて食べてね。あ、でもその前にお風呂だね。・・・・一人で入れる?」
「あ、あたりまえだ!」
「え〜?遠慮しなくていいよ。頭の先から爪の先まできれーいに洗ってあげるからっ」
「あらえる!!」

真っ赤なお顔で抗議する晴明のまろい頬をプニプニと突きながら声を立てて笑う。

あぁ、やっぱりどんなに変人でも、コイツは自分を気遣ってくれているのか。
きっと突然小さくなってしまった自分が落ち込まないように、自分を励ますつもりで「で!ご飯食べたら寝ようね・・・っていいたかったんだけどね本当は」

「・・・・うん?」

あれ、ここはいい感じに感動する場面では・・・?と思わず顔を上げてマコトを見た晴明は、愛らしい顔をびしりと強張らせた。

笑ってる。
怪しい妖しい黒い笑みを浮かべて、我らが居候が笑っている。

身の危険を感じて本能的に逃げようとするも、それを読んでいたマコトが小さな背中に手を添え、膝をしっかり抱き込む事でそれを阻止してしまう。

「晴明が悪いんだよ?そんな私の萌ポイント直撃の格好で帰って来るから・・・・・・」

らしくなく「ひっ」と悲鳴を上げてしまう晴明(どうやら姿が後退してしまったせいで精神も若干戻ってしまっているようだ)。
そんな様子を至極楽しそうに見やりながら、マコトは硬直したままの晴明をしっかりと抱き上げたまま、屋敷の奥へと消えて行った。








後日。

「りゅーうーさーいー・・・・・」
「ぎく・・・・っ」

ここにマコトが居たら「昼間っから今晩みぃ」とギャグを言っていただろうが、此処は陰陽寮。
ギチギチと軋みそうな動きで後ろを振り返った笠斎は、そこに立つ友の姿にすっと身体の奥が冷えあがった。

「や、やぁ晴明。ようやく元に戻ったか。そりゃよかった。じゃ俺はこれで      

何事もなかったかのように去ろうとする笠斎の首根っこを引っ付かみ、思いっきり引き寄せる。
手加減無しの威力に無様にたたらを踏む笠斎。

「何一人で先に帰ろうとしている。それとも何か、本当にあるべき場所に“還して”やろうか?アン?」
「せ、晴明さん、性格変わってます居候さんのちょっと移ってマスヨ・・・!」

滅多に見れない笑顔を浮かべているが、それが「黒い」笑顔に分類されるほうだから恐ろしいったらありゃしない。
顔を真っ青にして自分を見る笠斎に晴明は今まで顔に張り付けていた笑みを引っぺがし、鬼と見紛う形相で顔面を近づけてきた。

「変わってるだと?誰のせいだと思っている・・・!お前が私を見捨ててくれたお陰で、あの後マコトに良い様に弄ばれたんだぞ!」
「その言い方やめない!?なんかすっごい如何わしいよ!?」
「女装させられたり女装させれたり女装させらえたり!挙句この二日間はアイツに抱き枕扱いされたんだぞ!」
「う、うわぁ・・・」

それは、酷い。

仮にも成人男子である晴明に対してあまりの仕打ちである。
石壁の様な晴明の心も相当な損傷を負ったようだ。

「とうわけで、お前にも責任の一端はあると判断した。よって、お前のせいで堪った仕事を片づけるの手伝え」
「はぁ!?」

講義の声を上げる笠斎。
しかし晴明は涼しい顔でそんな彼を見やる。

「文句は言わせんぞ」
「いやいやいや!大本の元凶はアイツだろう!マコトに手伝わせろよ!」
「あのバカは私が雷を落とす前に雑鬼共ととっとと逃げた。まったく逃げ足だけは姑息なくらい早い・・・」

“あのバカ”と言ってる時点で、怒りの沸点はとっくの昔に越えてしまったのだろう。
自分はただ巻き込まれているだけだと言うのに、何この二次災害。



恐らく今回一番の被害者であろう笠斎は清明にズルズルと廊下を引きずられながら、泣きそうな顔でため息を付いたのだった。










(真琴はウチの子ですが、私なりにこの三人の関係は結構気に入ってます。ふふっ。
晴明は造作が非常に整っているので、(というかお母様があんなに美人さんなので)子供の頃は絶対可愛かったのだろうと妄想しています。私だったら絶対即お持ち帰りです。腐腐っ。
設定としては、身体は5歳児くらいでしょうか。・・・・・・絶対可愛い。腐腐腐腐腐腐腐っww)


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