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28.留守番



曇った空に押しつぶされるような感覚。今日はそんなどんよりとした天気だった。
まぁ自分の気分も関係しているからだろうけれど。
この街には緑がないね。・・・・・前にティファにそういった事があったな。
「ここの大地はつい二年前まで魔晄エネルギーとして星の命を吸っていたから、今は痩せてしまって居るの」って答えてたっけ。
でも、そんなところでも人は懸命に生きようとしている。そりゃ、人間だから自分と違うものは受け入れたくないって思いがあるから、星痕に苦しむ人達をのけ者にしてしまうことだってある。私だってそれは間違ってると思う。
でもね、人はそれでも、互いを思って支え合って生きていけると思うの。
今までだってそうだった。私は、そうして救われて、ここに居る。

だから、力になりたいの。
こんな無力な私だけど。











「デンゼルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!!!ミアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「ふぐぅっ」
「にゃぁっ」

抱きつくと言うより飛びついてきた、いや、タックルしてきた真琴に、デンゼルとミアは潰れたような声を上げた。
ぎゅぅぅぅっと締め上げんばかりに抱き込んでくるデカイ子供を横目で睨み付ける。

「マコト・・・・・・っ」
「よかったよぉ二人ともぉ!あの森で死んだ魚みたいな目ぇしてた時は思わず引っぱたきたくなったよぉぉぉ!!」
「やめてよ!痛いよ!」
「・・・・は!?もしかしたらそうしてた方が早く治ってたかも!!??くそー!だったらさっさとそうすればよかったぁぁぁぁぁ!!」
「やめて!そんなクラウドにいつもしてるみたいな暴挙俺に向かってしないで!!」
「デンゼル“ぼうきょ”なんて言葉良く知ってるねー」
「「感心してないでマリン!早くマコト剥がして          !!!」」

一向に離そうとしない真琴の腕をバシバシと叩く。
しばらくして満足したのか、ようやっとデンゼルたちの身体から腕を離した真琴は、今度は帰還組みの二人の顔をペタペタと触り始める。
一通り真面目な顔をして確認した後、やっと落ち着いたのか、深々と絞り出すようなため息を付いた。
身を竦める二人をもう一度、今度は包み込むようにしっかりと抱きしめる。

「よかったぁ〜・・・・・何ともないんだね」
「うん・・・・・・・・・・・星痕以外は」
            無事でよかった」
「・・・・・・・ごめんなさい」
「ごめんなさい・・・・」

あそこであの銀髪の男の人に付いていかなければ。
そう思うと悔やんでも悔やみきれない。
反省しきって俯いてしまったデンゼルとマリンの旋毛を見下ろしていた真琴は、ちらりと二人の後ろの階段を見やった。
隠れているようで隠れていない、寝癖の付いた頭が階段の壁からこっちを見ている。

ま、本当の説教は家の女主人に任せますか。

そう一人自己完結して、目の前の二人の頭をわしゃわしゃと撫でた。
乱暴な撫で方のせいで、二人の髪はぐっちゃぐちゃ。
小さく悲鳴を上げる二人に苦笑しながら、「ほら」と後ろを促してやる。

「“私の”説教はここまで。早く行って二人を安心させてやんな」
「私のって・・・・」
「いーから早く行きなさい」

背中を軽く叩いて促してやると、デンゼルは腑に落ちない顔をしながらに、マリンとレイの元へミアと小走りに駆け寄る。

「レイ!」
「お姉ちゃん!」

ひしっとミアにしがみ付いたレイは声こそ挙げなかったものの、姉の服に顔を埋めて小さな嗚咽を漏らした。
そんな弟をぎゅっと抱きしめ、ミアは「ごめんね」と何度も謝っていた。
レイは鼻をすすりながら顔を上げ、涙でべしょべしょになった顔で姉を見上げて少し情けない顔をして笑った。
ようやく戻ったレイの笑顔に、ほっと胸を撫で下ろす。

・・・・・・・・・・・・・ん?
なんか忘れてる。この感動的な再会シーンに胸打たれて大事な事が吹っ飛んだ気がする。

ん〜、と首を捻りながら再会を喜ぶ子供達を見つめる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。


「デンゼル。クラウドとティファは?」

アカン一番聞かなくちゃいけない事だった。

何時もと変わらない声音でそう聞いてみると、デンゼルは一瞬「え?」と愛らしい顔をきょとんとさせたが、すぐに気付いたように目を瞬かせた。

「クラウドたち、戦ってる」
「やっぱり・・・・・」
「えっと、たしか召喚獣のバハムートって          
「なにいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ                 っっ!!??」

突然大声を上げた真琴に、デンゼルや後ろに居る子供たちも兎のように飛び上がった。
召喚獣って!よくゲームとかで見るヤバいヤツじゃん!!
なんでそんなヤツいんの!?ていうかなんでそんなヤツと戦っちゃってるんですかクラウドさんティファさん!?
顔面蒼白でガタガタと震える真琴に、デンゼルたちは思わず後ずさった。
この震えが恐怖や慄きではなく、怒りからであることは今までの経験から骨の髄まで瞬時に理解したからだ。

人外と戦うなんて聞いてないよ知らないよ!ていうかモンスターって街中にも出るの!?今まで会ったことないけど!
気を付けてとは言ったけど戦ってていう意味じゃなかったんだけど!!

しかしそこでハタと気づいた。
彼等がそんな危険な状況を黙って見過ごすわけがない。
むしろ頭突きする勢いで迫っていくに決まってる。

それが我が家の家主と女主人だ。

静かになった真琴に、子供たちは怪訝そうに顔を見合わせる。

「・・・・・・・・・・・・考えても無駄か」

そう、無駄なんだ。
どんなにこっちが止めたって、心配でたまらなくても。
こっちの世界ではモンスターがいたら正面から突っ込むのが礼儀なのだろうか・・・・・・・やめてそんな体育会系なノリ。

信じよう、真琴。ただでさえ待っている事しか出来ないのだから。
待つことしか出来ないなら、全力で戦う彼らを。全力で待ってみよう。

一人で納得するように大きく頷いた真琴は、心配そうにこちらを見上げてくる子供達に視線をやった。

「大丈夫だよ、きっと。だってクラウドだもん。そのバハムートなる召喚獣がどんな図体してるのか皆目見当つかないけど、アイツだってあんなひょろっこいのにあんな大剣ぶん回してるくらい力があるんだもん」

傍に居てくれ。
アイツはそう言ってくれた。

だから私は、クラウドの事を心から信じる。

「大丈夫。アイツはきっと、マリンやデンゼルの所に還ってくるから」

そういって笑った真琴に、子供達もつられるようにして笑う。

でもきっと、なによりそう願うのは自分自身なんだ。
何もできない自分が、出来る事は信じる事だけ。

ここが、今戦っている皆の帰るべき場所の一つなら、ここで、彼らの帰りを待とうではないか。









(え!デ、デンゼル水道管壊して逃げてきたの!?)
(うん。ドカーンと)
(さ、流石クラウドの傍にいただけあるわ・・・・)



(ACC初めて見てからずっと「デンゼルかっけー!」と騒いでました。(ずごくね!?))

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