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Love or like?

『日向。ちょっと試したいことがあるんだけど、協力してくれる?』

部活を終えた帰り際。

鍵を施錠する担当だった日向は、部室を施錠したところで大好きな菅原に呼び止められた。

『俺で良ければ!』

珍しい菅原のお願いに、一も二もなく応じる。

『本当に?』

どことなく不安げな様子の菅原に若干不安が伝播したが、それでも菅原のためだからと日向は勿論ですと答えた。

『俺が何しても嫌いにならない?』

重なる問いにますます不安は増す。

だけど、あの優しい菅原が日向に対して理不尽なことや酷いことをするようには思えなくて。

それに、多少意地悪なことをされたって菅原のことを嫌いになるわけがないと思った日向は。

『はい、大丈夫です!』

不安を振り切るように元気良く答えた。

『うん。じゃあ、試させて?』

すいっと。

警戒することなく日向は菅原にパーソナルスペースを許す。

それは単に、菅原だから。

今すぐ抱きしめそうな近距離。

たとえ仲間だって早々入らない。

まずはいつものように頭を撫でられた。

日向は逃げない。

それどころか、嬉しそうにも見える。

頭からうなじへ手を移動させて、コショコショと擽る。

くすぐったそうな、気持ち良さそうな顔で、やはり日向はされるがままだ。

さて、と菅原は覚悟した。

次で、決まる。

『日向、目、閉じて?』

日向の耳元に唇を寄せ、静かに請う。

これで不思議そうにしたらやめよう。

菅原の脳裏にそんな意見がチラつく。

だが、日向は。

神妙な様子の菅原に何か感じたのか、コクリと頷くと素直に目を閉じた。

印象的な大きな瞳が隠れると、ちんまりとした鼻が可愛く思えた。

思わず摘まみたくなるが、今したいのはそれじゃない。

菅原はその下、唇へと視線を移す。

あぁ、やっぱり。

気付けば身を屈め、日向の唇へ自分のそれを合わせていた。

時間にして一瞬。でも、とてつもなく緊張したせいか数十分にも思える時間だった。

『日向』

呼びかけに、ゆっくりと日向の瞳が開かれる。

『あの、今のって……』

そっと唇に手をやりながら、日向は呟いた。

『ごめん、キスした』

がばりと上体を落として謝罪する。

だが、これで菅原の腹は決まった。

やっぱり。

日向が好きだ。

男同士とか。

仲間だとか。

いろいろ問題は山積みだけど。

この想いは間違いなく。

恋だ。

腹を括った菅原に、怖いものは一つしかない。

日向のこと、だけ。

すっと上半身を戻して日向に向き合った菅原は。

『日向のことが好きだけど。後輩としてか日向に対してなのか分からなかった。でも、もう、分かったから』

大丈夫、と呟いて。

菅原は今度はちょっと長めに、その唇の感触を味わった。

菅原のキスを享受しながら。

日向は、泣きそうだった。

大好きで大好きで、大好きで。

でも、部活に受験にと忙しい菅原に、男で後輩である自分が告白などしてはいけないと思っていた矢先につい滑った口。

それから数日、菅原は気まずそうで。

後悔ばかりだった。

それが今日になって。

こんな幸せが訪れるなんて思ってもみなかった。

『菅原、さん。大好きです』

泣き笑いで菅原を見れば。

申し訳なさそうに苦笑する菅原と目があった。

『なぁ、日向。いつか……試したいことがあるんだけど……』

どこか色付くその願い事に、日向はドキリと心踊らせた。

『お付き合いします!』

それがどんなものかは正しくは分からない。

だけど、菅原となら。

隣に菅原がいるのなら。

なんでもよくなってしまう気がした。



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