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ぎゅっとして、くるりと

部活の合間の束の間の休憩時間。

どうしてそうなったのかは分からなかったが。

気付けば西谷が東峰に抱きかかえられてくるくる回っていた。

子供っぽいし、なんだかバカップルみたいだけど。

日向はなんだかそれが羨ましくて。

自分もやってみたくなってしまった。

目に入った候補は二人。

菅原と影山である。

菅原……は、お願いしたら苦笑するけどやってくれそう。でも、細身だしなぁ。

影山……は、やってくれなそう。でも背が高いから回してくれたら楽しそう。

『むぅぅぅ』

悩む。

最早日向にやらないという選択肢はない。

どちらにやってもらうかが問題である。

そんなわけで。

日向は突撃した。

『お願い、あれやって下さい!』

きゃっきゃと回る東峰と西谷を指差し、並ぶ二人にお願いする。

反応は様々。

菅原は一瞬キョトリとしたものの、直ぐに手を広げて、

『はい、おいで』

対する影山は嫌そうに顔をしかめたがガシリと日向の腰に手を回した。

『バカなこと先輩に頼んでんじゃねーよ』

やってくれるのかと思いきや。

そのままコートへ行こうとする影山に、日向は足を踏ん張って拒否する。

『いーやーだっ』

『ちょっと、影山。俺、日向にあれやってあげたいから放せ〜?』

『菅原さんっ』

菅原の申し出に、日向は全力で影山から逃げ出した。

逃げて来た日向をキャッチした菅原は、日向に見えないのをいいことに影山へニヤリと意地悪げに微笑む。

『よしよし、あっちでぐるぐるしような〜』

その口調は甘すぎるくらいなのに、視線はどこまでも冷たい。

影山はそこで指を加えて見てればいいと言わんばかりだ。

その視線に対抗するかのように影山の視線も冷たい。

日向の預かり知らぬところでブリザードが吹き荒れる。

その光景に。

主将、澤村がのそりと動いた。

『全員、集合!』

かくして。

短いブリザードはなんとか収束したのだった。

***

『日向〜』

部室から駐輪場までの道すがら。

日向は菅原の声に振り向いた。

途端、脇の下に手を入れられ抱き上げられ、くるりと回される。

鞄の重さの勢いもあるのか、わりと勢いがいい。

『うわ、とと』

思ったより勢いよく回ってしまい、菅原も慌てた。

が。

運がいいのか悪いのか。

たまたま歩いてきた影山に支えられ、事なきを得た。

『影山、サンキュ〜』

能天気な日向に影山の眉間にシワがよる。

『ボゲェ、日向、ボゲェ!』

『はぁ?』

何故怒られなくてはいけないのか。

理不尽な怒声に日向もムッとした。

『影山、怒鳴らなくてもいいべ?俺が悪いんだし』

『そうですね。菅原さんも配慮が足りないと思います』

怪我したらどうするんですか、とプリプリしながら影山は行ってしまう。

そんな影山に日向と菅原はきょとんとすると。

二人見合って苦笑しあうと、パタパタと影山の元へと走り出したのだった。




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