小説 | ナノ




幸せな朝

『日向』

柔らかな声音に誘われて。

日向はゆらゆらとしていた思考を次第に覚醒させた。

『おはよう』

クスッと。

幸せそうな笑みを浮かべる菅原に。

日向はほにゃりと締まりのない笑みを返した。

まだ半分くらいは眠気が残っているせいで、ぽわぽわする。

『おはよう、ございま……?』

返す言葉が上手く出ず、日向はおやと思った。

全力で応援した後のような、喉のザラつき。

『喋らなくていいよ。昨日、いっぱい声出したからね』

昨日は応援をしたっけ?

疑問に思うも、猫を構うように喉元を撫でられ、気持ちよさに目を眇め。

ようやく思考が戻ってくる。

……そうだった。

昨日は部活帰りに誕生日だからといろんな人に奢ってもらって。

最後の最後で菅原に誘われてお家にお邪魔して……。

思い出すだに恥ずかしい。

ボフンと音が出そうな勢いで顔を赤らめた日向は、かけていた布団にすっぽりと隠れた。

『どうした?』

突然布団に潜り込んだ日向に、菅原は不安げだ。

不安が如実に声に出ていたけれど、昨夜の行為を思い出すと叫び出したくなってしまって日向は出られない。

『日向、何かあるなら言って?』

気遣うように、布団の上から撫でられて。

日向はひょこりと顔を出した。

真っ赤な顔に、菅原は原因を察して。

思わず抱きしめた。

『日向、大好きだよ』

想いの丈を一言に込めて囁いた。

ぎゅうぎゅう抱きしめられて。

これ以上ないくらい甘く囁かれて。

こんなに甘やかされていいんだろうかと思う。

何か、返したいな。

布団から両腕も出して菅原の背に回して。

恥ずかしいのを頑張って堪えて。

日向は菅原に囁いた。

『俺も大好きです』

くすぐったそうに目を眇めて、菅原は笑うと。

恥ずかしがる日向をぎゅうぎゅう抱きしめながら、幸せを噛み締めた。




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