▼Swing

微※



「わぁ〜凄い!見て見て律、こんなにたくさんいるよ!」
「本当だ。綺麗だね」
「うん!とってもカラフル!」


熱帯魚コーナーの水槽ではしゃぐおなまえを見て、律は微笑んだ。
生き物好きのおなまえの希望で動物園か水族館のどちらかにするつもりだったが、これだけ喜んで貰えるなら少し遠くても此方に来て良かったと思う。
薄暗がりの中青い光を受けて笑顔を浮かべるおなまえ。
それにつられるように律の気持ちまで高揚していく。


「ヒラヒラ動いて可愛い〜」


水槽に張り付かんばかりのおなまえに、律は「似てるな」と彼女の視線の先でひれを旗つかせる魚と今日のおなまえの服装を見比べた。
おなまえが駆けたり振り返る度に翻るシフォンのワンピースが水槽の光に照らされて青く揺れる。
まるで彼女も海の中にいるような錯覚さえ起きそうで、律はロマンチストじゃあるまいしと一人苦笑した。

イルカのショーで思いっ切り水を被って「レインコートがなきゃ大惨事だったね」と大笑いしたり、売店でお揃いのキーホルダーを買ったりと満喫した様子のおなまえは上機嫌に鼻歌を歌いながら律と手を取り合い歩く。


「ねぇねぇ、律。まだ時間早いし、あそこの遊園地も行ってみようよ」


そう言って水族館の隣の敷地に併設されている観覧車を指差すおなまえに、「行くならもう少し先の駅の遊園地にしない?」と律は提案した。
其方の方がアトラクションとしての規模も大きくて楽しめるだろうし、と続けると「多分今から行くと並んでる時間の方が遊べる時間より長そうだから…そこはまた今度行こ!」とおなまえが言う。


「それもそうか。…でもいいの?此処、そんなに大きくないけど」
「平気平気!…私ね、観覧車のてっぺんでキスするの憧れなの」
「…観覧車の?」
「ダ…ダメ、かな…?」


知らなかったおなまえの憧れに面食らっていると、おなまえが不安そうに律を見た。
その問い掛けに首を横に振って、律は笑顔を浮かべる。


「ううん、おなまえが良いなら。僕も観覧車好きだし」
「そっか…!良かったぁ!」


律の答えにおなまえは心の底から嬉しくて堪らなそうに頬を染めた。


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余りにも自然におなまえがゴンドラに乗り込むものだから、律はある程度の高さまで回り始めるまで"そのこと"を思い出せずにいた。
小規模さがそうさせるのか、並ぶ程待つこともなく順番がやってきたことに「タイミング良かったね」と隣に腰掛けているおなまえに話し掛けて、ようやく気付く。


「……そういえば、おなまえって…」
「………」


眼下にさっきまでいた水族館とそれに隣接した海を見下ろしてから、ふと隣のおなまえを見た。
おなまえは数分前までの賑やかさが嘘のように口を噤んで、心做しか白い顔で遠くを見ている。
その様子に律は「やっぱり」と苦笑した。


「おなまえ、高い所苦手なのに大丈夫なの?」
「……わすれてた」
「忘れてたって…」
「夢だったんだもん…」


とうとう目を開けていられなくなったのか、きゅっと瞼を固く伏せて耐えている。
しかし視界からの情報が遮断されたことで逆に僅かな揺れでも感じ取れてしまって、おなまえは「うー…」と汗の滲む自分の手を強く握り締めた。
そんなおなまえを律は抱き上げて自分の膝の上に座らせる。
急にやって来た浮遊感にビクリとおなまえは驚いて目を開いた。


「うあ!…え…っ、り…律?」
「目、閉じてても開いても怖いんならこうしかないかなって」
「こうしか…?」


ぱちぱちとおなまえは首を傾げている。
今なら此処が高所ということまで気が回れないみたいだ。
そのことに、"やっぱりこれでいこう"と律は一人頷く。


「これなら僕しか見えないでしょ」
「そ…そっか……あ、りがとう」


律の考えを知っておなまえはようやく笑顔を浮かべると、律の背に腕を回して抱き着いた。
けれどそうすると律の肩越しに地上を見下ろしてしまってすぐに額を肩に乗せて小さく呻く。


「……」


体を丸めてしがみつくおなまえを見て、律の脳裏に少しばかりの悪戯心が沸いた。
そっとおなまえのワンピースの裾を上げると、その下の滑らかな太腿に触れる。
ビクッと膝が跳ねて閉じられそうになった足を両手で抑えた。


「り…律…っ!?」
「気を逸らしてあげるよ」
「気って…ぅ、」


スリ、と鼻先をおなまえの首筋に埋めて、足を抑えていた手を差し込む。
首筋から耳朶までを舐め上げて「ちゃんと僕に集中して」と律が囁いた。
緊張で白くなっていたおなまえの顔に血の気が差して、桃色に変わっていく。


「は…ぁっ、ダ…メだよ…!」
「ダメかな…嫌だった?」


器用に口でワンピースの胸元のボタンを外しながら尋ねると、「イヤって、いうか…」と言葉を探しているおなまえの鼓動が唇越しに伝わった。
バクバクと早く脈打って、それが自分に依るものだと思うと胸が充足感に満ちる。


「明るい、し…他の人に、見られちゃったら…」
「…恥ずかしい?」
「……うん…」
「だけ?」


首を縦に振るおなまえに質問を重ねると、それにもおなまえは頷いた。
恥ずかしさに俯いているおなまえを呼んで顔を上げさせる。
羞恥で薄く潤んだ瞳が瞬くのを合図に顔を寄せて唇を合わせた。


「ぁ…、ふぅ…っ」
「…ん……、おなまえ」
「はぁ…り…つ」


間近で見つめ合うと、服の中の手がまたおなまえの体をまさぐっていく。
微かに声を弾ませる様を眺めながら、律は目を細めた。


「じゃあ…こっそりするから。おなまえも平気そうにしてなきゃダメだよ」
「え…っ?、ん…あぁっ」


スリと下着をずらされて胸の先を摘まれる。
「互いの体で何をしてるかなんて見えやしない」と言う律の声に言い返すよりも、声を堪える方に気が取られて録な反応ができない。


「っあ、ぁ…律ぅ…」
「…濡れてきたね…気持ちいい?」
「ひ…っ、んん…」


胸の先を弄られたまま秘所を下着越しに擦られる。
主張し始めている陰核を圧されるようにされると強い刺激にビクリと体が跳ねて、ゴンドラが揺れた。
慌てて律に抱き着いて恨めしげに見上げれば、クスリと笑われて「やりすぎたね、ゴメン」とワンピースの中から律が腕を引く。
胸元のボタンを戻してやりながら、近付く地上に「もうすぐ終わっちゃうね」と言うとおなまえは前髪を直しながら「天辺でキス出来てたかな…」と熱の冷めやらぬ頬で尋ねた。


「もう怖くならないコツは掴んだし、もう一周する?」


そうニヤリと言う律におなまえは思いっ切り首を横に振る。
こんなスリリングな場所でさっきの続きなんて御免だ。
そんなおなまえの思惑に気付いてかそうでないのか、残念そうに律が「そう…」と声を漏らした。





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04.02/水族館デート後観覧車で微裏



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