▼微睡の逢瀬




カリカリとシャーペンがノートを走っていく。
テスト期間中ということもあっていつもより遅い時間までおなまえは勉強をしていた。
普段なら就寝している時間を二時間も過ぎて、瞼が重たい。


「…んー」


今日はもう、このくらいにしてテストに備えようかな。

両掌を天井に向けて伸びをすると、デスクスタンドを消してベッドに腰掛ける。
何故かそわりと胸騒ぎがした。


「…?」


しかしそれはすぐに収まって、おなまえは目覚まし時計をセットすると布団に潜り込み目を閉じた。


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翌日。
思ったよりも振るわなかった手応えにおなまえは溜息を吐いた。


「どうしたん?調子悪いの?」
「うーん…昨日寝る前に勉強してたはずなのに、そんなに解けなくて…」
「珍しいね」
「眠りが浅かったのかなぁ?何だか体がだるいような」
「えー?それ夜更かしして風邪引き始めてるんじゃない?」


風邪の引き始め。
そう言われて初めて重だるい自分の体に納得した。
「ウチら模試も控えてるんだから、気を付けなよ」という友人の言葉に頷く。
今日は早く寝て、勉強は朝にしようとおなまえは家路に着いた。

自室に帰るとおなまえは重たいスクールバッグを机に置く。
制服のネクタイを解いて、脱いだブレザーとスカートをハンガーに掛けてからベッドに上体を横たえた。
するとまた胸騒ぎがおなまえの胸を掠める。
水面に石を投じられたようにそれは次第に薄まっていくせいで、おなまえはその原因がわからずに胸を抑えた。


「…何なんだろう…これ…」


呟きは虚しく部屋に散っていって、その静けさが耳に張り付く。
その内におなまえは布団に埋まり心地よい微睡みに沈んで行った。


『こんにちは。今日は随分早いんだね』


ふと聞こえた声に意識が傾く。

男の人だ。
誰だろう…。
でも、聞き覚えがある。

瞼を上げて布団から起きあがろうとすると、『そのままでいい』と柔く肩を押されておなまえの頭は再び枕に落ちた。
深緑のジャケットを羽織った男がいつの間にかベッドの縁に腰掛けていて、「此処は私の部屋のはずなのに」と思う反面何故だかこの人を知っているような気がしておなまえは戸惑う。


「だ…誰…?」
『名乗るのは初めてだったね』


『昼の方が意識が鮮明なのかな』と穏やかな口調で男は自分を最上と名乗った。
その名前を復唱すると、最上は目を細めて肯定する。


「前…にも…会ったこと、ありますか?」
『そうだね。こうして会うのは、幾度目だったかな』


もう既に複数回出会っているらしい。
何となく聞き覚えがある、と感じるのはそのせいだろうか。
しかしどうしてだろう。
ハッキリとこの人のことを記憶していない自分におなまえは疑問を抱いた。
そんなおなまえの胸中を察してか、最上は横たわったまま不思議そうに見つめる彼女の頬に触れる。


『はっきり覚えていないのは仕方がない。此処は君の夢の中だからね』
「…夢…?」


優しく撫でられる頬の心地好さにおなまえが目を細めると、最上はクスリと笑みを浮かべた。


『そう、夢だ。だから今は何も考えなくていい』


進路も、人間関係も、家族や、自分という個の存在まで。
此処では現実で縛り付けられるしがらみが一切ないのだから、と囁かれる。
その声はひどくおなまえの耳に馴染んで、胸の内に溶け込んでいく。

頬を撫でていた手がおなまえの髪を掻き上げて、その顔に影を落とす。
自然な事のようにそれを受け入れながら、そわりと震える胸にようやくおなまえは思い当たった。


--私はこの感覚を知っている。


唇を触れ合わせながら抱き締められる。
意識では初めてだと認識しているのに、おなまえの舌は慣れたことのように最上の舌に応えて絡み合う。
ジリ、と体の奥で何かが熱を持つ。
唇の隙間から吐息を漏らすと、スルリと布擦れの音がしておなまえのシャツが肌蹴ていった。


「ん…ぁ…っ」


露わになった肌を隠すように腕を体の前にやれば、最上はその腕を取り手首に唇を寄せる。
赤い舌が手首の内側から血管に沿うように肘、肩に向かって舐め上げておなまえの背筋にゾクリと痺れが走った。

体を舐められるなんて気持ち悪いことのはずなのに、どうしてこんなにビリビリするんだろう。

最上の舌に気取られている内に脇腹から体を撫で上げられて、掌で胸を包まれるとそのまま緩く揉まれる。
それだけなのに繰り返されるとフワフワと浮き足立つような感覚がやって来て、おなまえの息があがってきた。


「ふ…、ぅ…あっ!」


もう片方の胸の先を舐られて、嬌声が口をつく。
羞恥が勝って声を堪えようとすると『他に聞く人はいないよ』と最上が笑った。


『此処には私とおなまえしかいないからね』
「で、でも…恥ずかしいです…ぅ、」
『そうかい?』
「んっ、あぁ!」


胸の先を指で摘まみ擦られておなまえが声を上げてしまうと、最上は『私は気に入っているがね』と胸元に吸い痕を残す。
じくり。
また体の奥の熱が上がる。

刺激に反射的に背を反らせるのがまるで自らせがんでいる様で、おなまえは首を左右に振って涙を滲ませた。
それを宥めるように最上は頬や目元に唇を落とす。


『泣くことはない。慣れてきた証拠だ、良いことだよ』
「は…んぅ…、な…慣れ…?」
『毎夜の様に繰り返した成果かな』


『今日はそんなに時間が空いてないからかもしれないね』と事も無げに言われて、おなまえは頬を染めた。

毎夜のように、私はこんな夢を…?

自分が信じられなくて、しかし確実に反応を返してしまうことは事実で。
最上の指がおなまえの内腿を摩る。
いけない、と頭では思うのに期待している自分がいて、眉を寄せた。


「ぁ…っ、ダ…ダメです、もが…み、さぁ…っ!」


下着の上から指先で濡れた秘部を擦られる。
強い痺れが巡って声が震えた。
『…もう少しかな』と呟くと、最上はおなまえの足を持ち上げておなまえの胸に膝をつけさせる。
体勢が変わったことに目を見開くと、最上が顔を下ろしたことで更におなまえは焦った。


「や…っ、何…ひ、あぁっ!?」


唇を寄せられ、秘芯を吸われると甘い刺激が広がっていく。
その最中にも隙間から中に指を挿れられて、溢れた愛液が粘着質な音を立てた。
中の指は的確におなまえの快感を引き出していって、次第に秘芯も固さを増していく。


「んあぁっ、…はぁ、…あう…っ!」


足の先が自然と伸びて、中がざわついていく。
最上が唇をやっと離したことにホッとしたのも束の間、下着越しに秘芯を爪先で弱く掻かれ、同時に中も一点を擦られた。
ビクッとおなまえの体が跳ねて膝が震える。


「ひっ、ぃ…あぁっ、あ、やぁ!…んんぅ、あっ!」


強い快感におなまえが悶えると、水分を増した秘所に指が更に増やされた。
ヒクつくそこを繰り返し撫でられ続けて、おなまえの瞳から生理的な涙が零れる。
息をするのも苦しいのに、頭がぼんやりする程快感が蓄積されていく。
涙に縁取られた視界がチカチカと明滅する。
声を堪えることを忘れたおなまえを最上が満足気に見つめていた。
その視線に気が付くとまた体の内が波立つ。


「んあ、あっぁ!」
『…頃合かな…』


おなまえがシーツを掴んで腰を反らせると、中の余韻を味わいながらゆっくり指が引き抜かれていく。
荒い呼吸を続けるおなまえの足から下着を抜いて、秘所に最上の自身が宛てがわれた。
それが徐々に中へと埋まっていく様子におなまえは固唾を飲む。
入る訳ない、と思った直後、前にも同じ事を思った気がした。
下腹部が苦しい。


『息を吐いて』
「はぁ…ぁ、は…」
『私を見るんだ、怖くない』
「こわく…ない…」


おなまえの汗で張り付いた前髪を最上が指で避ける。
慎重に腰を進められているのがわかって、おなまえは最上の言う通りに従った。
僅かに最上も眉を寄せながら、おなまえの様子を見て『それでいい』と口端を上げる。
その表情が色香を感じさせて、鼓動が早まった。

時間を掛けて根元まで全て埋まり切ると、最上は愛おしそうにおなまえの下腹部を撫でる。
まるでようやく繋がれたことを喜んでいるようで、それだけでもピクリと反応してしまいおなまえは小さく呻いた。
最上はそんなおなまえに目を細めると、ふぅ、と溜息を吐き『続きはまた今夜だな』と零した。
直後誰かに体を揺さぶられる感覚でおなまえは目を覚ます。


「おなまえ?ちゃんと部屋着に着替えなさい風邪ひくわよ」


ハンガーに掛かった洗濯済みのシャツを片手に、母親に揺り起こされたのだと気が付くとおなまえは返事をして身を起こした。
タンスから部屋着を取り出していると「もうちょっとでご飯だからね」と言って母親は部屋を出ていく。

何だかやっぱり怠いな、と思いながらシャツのボタンを外していくと自分の胸元に赤い痕があるのに気が付いた。


「……え…」


瞬間薄れていた記憶が蘇る。

しかし、あれは夢の中のはずで。
シャツだってボタン、留まってたし。

夢の出来事が現実の自分の体に現れるなんてこと、ないはずだ。
テーブルの上に出していた折り畳みの鏡を見れば、服で隠れるような場所に転々と同じような痕がある。


「嘘…」


複数残っているそれは思い込みや思い違いではないとおなまえに示しているようで、思わず臍の下に手を当てた。

彼は私の夢の中だけの存在なのでは?
何で……。


「…最上さん…?」


ポツリと呟くと、カタリとテーブルの上の鏡が倒れて伏せられた。




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04.09/清楚系JKが最上と夢で初交



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