▼やめないで




あんまりにもモブ君が霊幻さんのお手伝いで私と会える時間を作ってくれないものだから、とうとう押し掛けてきちゃった。

そう言っておなまえが押し掛け女房よろしく霊とか事務所にやってきたのは半年程前。
もうすっかりこの事務所にも馴染んでお客さんへのお茶出しのタイミングも完璧になった。

しかし当初の目的だったモブ君とのスキンシップは未だ不足しているぞ、とおなまえは一人(正確にはエクボもいるけれど見えていない)留守番をしながら思っていた。


「あ〜…充電したい…」


最後に二人っきりでゆっくり出来たのはいつだったろう。
霊幻さんはモブ君をこき使いすぎでは?
でも実際にこの事務所にやってきて、助けを必要としている人が少なくないことは理解出来た。
私は元々0より2でも1でもいいからモブ君と会いたいと思ってやって来た身。
下心ありきの理由で此処に通うことになったけれど、それを許してくれているのだから霊幻さんを責めるのは筋違いかも…。
寧ろ0でないことに慣れてしまった故のワガママなんじゃないか。

そんなことを考えたり、たまに独り言を言ったりして机に突っ伏す。

暇すぎる。
会いたい。
二人になりたい。
触りたい。

ちょっと前まではしょっちゅう撫で回させて貰ったり、手を繋いで一緒に帰ったり、お休みの日に一緒に出掛けたり出来ていたのにな。


「…枯れる…」


枯れちゃう。私。
華の女子高生なんて肩書きだけでは潤えない。

寂しすぎて涙が出そうになったから、目を閉じて溢れないように蓋をした。
一度悲しいと思うと鼓動が早くなって、何とかしなきゃと勝手に体が慌てていく。

慌てたってどうにもできないよ。
どうにかできるのはモブ君だけだ。
それがわかってるから、こんなに寂しいんだけど。

モブ君が帰って来たらちょっと激しめにハグくらいさせて貰おう、とか思いながら私はそのまま"モブ君にああしたい""こうしたい"と思考の渦に飲まれて行った。


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気が付いたら寝てしまってたみたいだ。
数回瞬きをして、夕陽が差しているのが目に入る。
ハッとすれば自分が処置室で寝かされていることに気が付いて、身を起こした。

今何時なんだろう。

結構日が傾いてる。
もしかして大分寝ちゃったのかもしれない、と事務所に続くドアを開けた。


「お。起きたか」
「おはよう、おなまえさん。具合悪かったの?」
「すみません寝ちゃって…元気、じゃ…ない」


モブ君だ。
寝る寸前までモブ君のことを考えていたからか、モブ君の顔を見たら胸がぎゅうと詰まって思わず駆け寄りそうになる。
それを堪えて何とかモブ君の腰掛けているソファーの前で立ち止まると、急に近寄ってきた私に首を傾げながら見上げてくる彼の目。
まだ少しだけ猶予のあるモブ君の隣に腰を下ろすと、席を譲られてしまわないようにモブ君の右腕に自分の腕を絡めた。


「おなまえ、さ…!?」
「……」
「…あー…今日はもう、帰っていいぞ。お前ら」
「お疲れ様です」
「えっ?お、お疲れ様です…?」


モブ君の腕を引いて鞄を掴み上げると、モブ君は慌てて私の分の鞄まで空いてる左手で持って戸惑ってはいるもののそのまま一緒に事務所を後にしていく。
歩きながらも手を離そうとしない私の様子をモブ君は心配そうに窺っている。


「おなまえさん、辛い…?」
「つらい…」
「い、いつからそんなに…今日一人で留守番させちゃってごめん」


私がよっぽど体調不良に見えるんだろう、モブ君は「歩くの平気?」と既に私の荷物を持ってるのに私の体まで支えようと身を寄せてきた。
ぐっと近寄った体に、腕を回して肩に頭を乗せる。

鞄持ってくれてるのに、寄り掛かっちゃって重いだろうな…。
でも、モブ君だ。
久し振りだ。
ごめん、と思いながらスリスリと顔を埋めると、モブ君の匂いがした。
…うん。好き。ちょっと元気、出てきたかも。

背中を摩ってくれているモブ君に小さく「ごめん」と謝る。


「…?何で謝るの?」
「本当は具合、悪くない」


でも、と言葉を続けてモブ君の背中に回している手に力を込めた。


「モブ君ともっと一緒にいたい」
「…っ」
「二人になりたい」
「…おなまえさ…」
「もっと触りたい」


人通りが少ないとは言え誰が通るとも知らない道端で私はモブ君の口に自分の唇を重ねる。
一言、一言、モブ君の中に入っていくようにキスの合間に伝えると、モブ君は顔を真っ赤にして私を見つめた。
困ってるみたいな、でも期待してるみたいな、複雑な表情。

定期的にイチャつかないと、往来でこういうことするんだぞってわかって貰えたら、もうこんなに寂しくなること ないのかな。

私が性懲りもなくもう一度キスしようとすると、流石にモブ君が私の肩を掴んで止めてきた。


「…もっとしたい」
「わ、わかったから…此処は、ダメだよ」
「……」


すぐに手を引かれて、モブ君が歩き出していく。
私もそれについていくと、モブ君のおうちに着いた。

…ご家族いるんじゃあ…

そう思いながらも上がってみると、案の定モブ君のお母さんが顔を出して「あら、おなまえちゃん」と笑顔を向けてくる。


「ご無沙汰してます」
「本当、久し振りねぇ!どうぞ上がってゆっくりしていってね」
「お母さん、僕数学の小テストで悪い点数取ったから、おなまえさんに教えて貰うんだけど」
「あらそうなの?悪いわねえおなまえちゃん。じゃあ飲み物とお菓子、持って行って」
「あ、どうも。ありがとうございます」


モブ君のお母さんと会ったのはモブ君と付き合ってすぐに一緒に帰ってる所に遭遇して以来で、家に上がるのなんて小学生の時が最後だから…お邪魔することになってちょっと緊張してくる。
私の荷物を持ってくれているモブ君の代わりに飲み物とお菓子の乗ったトレーを受け取ると、二人で部屋に上がっていく。

モブ君の部屋に入れば、簡易的にではあるが二人きりだ。
荷物を適当に置いて、私の手からトレーを持ち上げると机に置かれる。
部屋の隅で立ちっぱなしの私をモブ君が手を引いて、床に座った自分の方に引き寄せた。
そのままモブ君の膝の上に座るみたいに収まると抱き締められる。
下にお母さんがいるって緊張も、モブ君の腕の中だと段々薄まっていくみたいで、抱き返しながら首筋に鼻を擦り付けてまたキスをせがんだ。
一瞬躊躇うように小さく声を漏らしたけど、モブ君は私に応えて唇を合わせてくれる。
背中に回していた手を首に移動させて、もっと体が密着するように胸を寄せて顔を離すとモブ君が赤い顔で少しうっとりしたように私を見つめた。


「…したい」
「うん…」


私のブレザーのボタンが外されていくのに合わせて、私もモブ君の学ランのボタンに手を掛ける。
その間もキスをしたり体を擦り合わせたりして、どんどんいい気分になってくる。
モブ君に触ってもらうと、満たされてるって思える。
あぁ…やっぱり好き。


「モブ君…好き…」
「ぅ…」
「大好き」
「…ん…」
「はぁ…、す…」
「わかったから…」
「…っ、ぁ」


胸の先を甘噛みされて、口を開けていたら喘ぎ声が出そうになったからそこでようやく私は口を結んだ。
それに気をよくしたのか、モブ君は私の腰を支えながら胸を吸ったり舌で転がしたりして段々頭に靄が掛かっていく。
多少性急な手つきでも久し振りに触れられていることがどんどん興奮を煽ってくる。
開けたシャツの隙間に私も手を差し込んで、直接モブ君の肌に触れた。
あったかくて、飢餓状態だった私には触ってるだけでも気持ちいい。


「…ん、…っふ、ぁ…あ!」


スカートの下でモブ君の指が私の中心に触れる。
ピリッとした鋭い刺激につい声が弾んで、慌てて手の甲で口を押えた。
クロッチをずらした下着の上から敏感な先を擦られるとくぐもった声が漏れる。
鼻に掛かった私の声を聞いてモブ君が僅かに口元を綻ばせると、胸がきゅうと締め付けられた。


「んん…っ!ん、ぅ…ふ…」
「…おなまえさん…、可愛い…」
「う…っん…、ひ…ぁ…!」


すぐ耳元にモブ君の吐息交じりの声。
ぞわりと胸が浮くような感覚の後強い波がやってきて私はモブ君にしがみついて体を震わせた。
びくびく腰が動くと、太腿にモブ君の熱が当たる。
荒い呼吸を繰り返したままモブ君を見つめる。
ちょっと苦しそうにしている彼の半身をズボン越しに撫でると、モブ君も熱のこもった息を吐いた。


「おなまえ、さん…まだ…」
「やだ…もう欲しい」


モブ君のベルトを解いてファスナーを降ろす。
ずり下げたトランクスから露わになったモブ君のにポケットから出したゴムを被せると、私も下着から片足だけ抜いてモブ君のに秘部を擦り付けた。


「ほら…、こんなだから、もう…平気だよ」


私が腰を上下させる度にクチクチと粘着質な音が立って、モブ君が唾を飲み込んだ。
これからひとつになれると思うとまた滑りがよくなる。
ずっと待ち侘びてた逢瀬に期待で胸が高鳴った。

モブ君の根本を支えて少しずつ腰を下ろすと、圧迫感に息を吐き出す。
制服が汚れないようにモブ君がスカートの裾を持ち上げたまま私の腰を支えてくれて、入ってる所が互いによく見えた。
肉に埋まっていく様がグロテスクだと思う反面、少しずつモブ君のが私ので濡れてテラテラ光を反射するのがいやらしい、と思う。

久し振りの挿入はやっぱり少しだけ痛みを伴ったけど、そんなことより繋がれた一体感の方が勝る。
モブ君にも腰を押して貰って根本まで飲み込みきるとジンと中が疼いた。


「はぁ…ぁ…」
「…く…、」


抱き締め合って感覚に浸っていると、モブ君が辛そうに呻く。
私がゆっくり腰を引くと、私を抱いているモブ君の手がピクリと反応した。
片膝を立てて上げたり落としたりを繰り返すとモブ君もそれに合わせて腰を動かす。
中が擦られて、ヒリついた痛みが段々和らいでいくと私の声も少しずつ高くなってくる。


「は、あっ…ん…、んっ!」
「…声…我慢、できそう…?」
「う…ぅ、っ!」


きゅっと口を引き結んで、掠れたモブ君の声に頷く。
切なそうに眉を寄せているモブ君に胸がざわりと波打つと、頷いた端から声が上がりそうになって下唇を噛んだ。
するとモブ君が唇を寄せてきて、私の口をこじ開ける。
私がそれに応えて動けない合間にも、モブ君の両手が腰を掴んで中を突いてくる。
苦しいけど、気持ちいい。
必死に舌を差し出して絡め合いながら奥を擦られるとくぐもった声が漏れた。

あ…これ、すごいかも。

ジワジワ足先が痺れてくる。
口の端から唾液が溢れても構わず貪っていると、中がモブ君を締め付けた。
モブ君のが奥まで届く。
クラクラする。
目を閉じているのに、光が点滅しているみたいに瞼の裏でチカチカ繰り返す。
私の背が反りそうになると、モブ君が片手を私の頭の後ろにやってキスが深くなった。
ダメ、と思った時にはもう喉が詰まって腰が震えていた。
膝がガクガク揺れると、お腹の奥がジンジン熱を持ってざわつく。
モブ君も腰を突き出して深くまで埋まると長く息を吐いて、中が波打った。

ようやく口を離すと、私はすっかり力が入らなくて。
倒れこみそうになるのをモブ君が支えてくれた。
酸欠かもしれない。クラクラが止まらない。


「はぁ…はぁ…」
「…だ、大丈夫…?」
「へ…ぃ、き…」


肩で息をしながら答えると、ずるりと中からモブ君が出て行った。
まだ硬度のあるそれをぼんやり見ていると、ゴムの口を縛りながらモブ君が恥ずかしそうに口を開く。


「もう…やめとく?」
「……」
「ぁ…、嫌なら」


「お母さん、いるし」と言いながらモブ君が横を向いた。
モブ君から続きを強請られるなんて初めてで、私の意識が少し覚醒する。
ゴミ箱に使用済みのとティッシュを捨てている横顔に、力がろくに入らない腕で抱き着いた。


「嫌な訳ない」
「…、体…平気…?」
「うん」


「だから、やめないで」。
そう耳元で囁くと、耳まで赤くしたモブ君が身じろいで私たちはまたキスをした。




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04.02/普段モブを可愛がっているJKと裏夢



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