▼その声は媚薬




「もー、自分で歩けるんなら一人で帰ってよ」
「ん〜」


甘えた声を出して首に腕を絡みつけてくる霊幻をおなまえは抱え直す。

下戸の癖に連日で飲みに誘ってきて、そんなに仕事が辛いのかと心配して付き合ってあげるんじゃなかった。
でも努力の甲斐あって新隆の家はすぐ目の前だ。よく頑張ったわ、私。

覚束無い足取りの霊幻に「重いし!」と言うと、おなまえの気持ちも知らずににへらと霊幻が笑う。


「そう言うなっておなまえちゃ〜ん」
「しっかり歩いてってば……ホラ鍵出して」
「? かぎ?」
「あーも。ポケット?漁るよ」
「何なに積極的ぃー」


スラックスやスーツのポケットを探られて、それが擽ったいのかケラケラと笑う霊幻からは然程酒の香りはしない。
「薄い酒で酔えて幸せね」と嫌味を零し、見つけたキーケースから鍵をいくつか試して三本目の鍵が扉を開錠した。
再び霊幻の肩を抱いて中まで連れて入る。
ソファーとベッド、どちらに座らせようかと足を止めれば、霊幻が「眠ぃ」と言うのでベッドに座らせ、水を注いだグラスを持たせた。


「頭は痛くない?吐き気は?」
「へーき」
「じゃあ自分で着替えて。ちゃんと布団掛けて寝るんだよ。お風呂は入っちゃダメ。朝に入りな、ね?」
「……?」
「もーっ!」


おなまえの言葉を聞いてなかったのか、霊幻は手に持ったグラスを飲みもしないでぼんやりとおなまえを見つめている。
今までも何度か飲み(という名のほぼ食事)に行ったことはあるが、こんなに酩酊することなんてなかったのに。
世話役が回ってきたお陰でおなまえの方が酔いもそこそこになってしまった。
仕方なく霊幻が着替えるのを手伝いながら、どうせ酔いどれ相手だとおなまえは愚痴り始める。


「新隆がそうだと私が飲めないでしょー。飲み足りないんだよこっちは」
「昨日も飲んだろぉ?」
「昨日は昨日。今日は今日なの」
「おなまえは飲むの好きだな〜」
「いつもは新隆が介抱してくれるから思う存分飲めるのに」


飲まないなら、と零す危険を考えてその手からグラスを奪い、テーブルの離れた所に置く。
床に落ちていたスウェットを膝に置いて、霊幻のネクタイを解きボタンを外していく。
ハンガーが掛かっている壁までちょっと距離があるのを見て、一先ずスーツはテーブルに置くことにした。
一向に自分で服を脱ごうとしない霊幻におなまえは協力しろと言うつもりで口を開くと、鼻にかかった霊幻の声がそれを上書きしていく。


「世話焼いて貰うのってなんかいいなぁ…もっと焼いてくれよおなまえ」
「…たまにならね」
「え〜、じゃあ今日帰ったらもうしばらく世話してくれねぇの?」
「……」
「おなまえ〜」


ボタンが全て外れたシャツから腕を抜くでもなく、次はスラックスを脱がしてくれとでも言うかのように霊幻が足を交互に揺らした。


「わかった。わかったから。新隆の声って無駄に良くて腹立つわ。それに免じてちゃんとお世話してあげるから、新隆もちゃんと手伝って」
「それ、前も言ってたなぁ…あれ、いつだっけ?」
「私が?」
「面白いくれぇおなまえがベロベロになってた時。ハハ、あん時すごくってな」
「え…覚えて、な…い…」


どれくらい前のことだろう、と思案しながら霊幻のベルトを外してスラックスを寛げてやると、その手に固いものが触れておなまえは脱がせる手を止めた。


「あ、新隆ちょっと…もう自分で脱いで」
「やってくれよぉ、俺もうクラクラしてきた」
「…じゃあ何で勃ってるの…酔ってないでしょ…」
「酔ってる酔ってる〜」
「酔ってたら酔ってるって言わなくない?ちょっと」
「お世話してくれるんだろぉ〜?」


霊幻はニヤニヤしながら、身を引こうとするおなまえの腕と腰の背を掴んだ。
直後ぐるりと引き寄せられてベッドのスプリングが軋む。
霊幻の頭がおなまえの顔に影を落とした。
おなまえが口を閉じないように顎が掴まれて舌が絡んでくる。


「ん…っ、は…」
「……なあ、コレもお世話してくれよ…」


足の間にその身を差し込んで、霊幻は腰を擦り付けてくる。
熱を持った塊を押し付けられておなまえは身を捩ろうとするが、霊幻の腕はしっかりおなまえの体を捉えて身じろぐくらいしかできなかった。


--いやいや全然酔ってないじゃん…!何この力…

「アンタAVの見過ぎじゃないの…!」
「バカ見てねぇよ。ここ数年は。俺のオカズお前だから」
「…は…?え、…冗談…」
「それとも…見せ合う?俺の声が好きなんだよなぁ、おなまえ」


さっきまでヘラヘラと笑っていた顔が一転、興奮を宿した眼差しがおなまえを射止める。
互いの唾液で濡れた唇が近付いて、すぐ耳元に吐息が触れた。


「ぅ…ちょっと…」
「どっちがいい?」
「や…やめてよ…」
「おなまえがどうシてるのか、見てぇなあ…」
「自分でなんて、し…ない…し……」
「…本当に?」


ゾクリと首の後ろが震えた。
足を擦り合わせたいのに霊幻の体に阻まれている。
クスリと笑われて、羞恥におなまえの頬が染まった。
絶えず擦られている中心がじわりと体温を上げていく。
繰り返す内に霊幻の物も布越しに主張を強めて、霊幻の息遣いがおなまえの耳から内を犯していくようで。

それから逃れるように顔を背けると、腕が回って髪に霊幻が指を絡めて頭を掴むようにされてしまった。
視界は霊幻の腕で塞がって、右耳が無防備になっている。
おなまえの鼓動が早鐘を打つ。


「待って待ってホン…」
「逃がさねぇよ」
「ーーっ!…は…、はぁ…っ」


塞ぎようのない鼓膜が低音に震えると、おなまえも息を詰めて身を震わせる。
声が出ないように霊幻の胸に顔を押し付けると、荒く息を吐き出した。
すぐ側でクツクツと喉が鳴る。


「へぇ…俺の声だけでイケるくらい好き?」
「ふ…っ、も…勘弁して…」
「見せろよ、顔」
「っ、」


霊幻の肘が緩んで顔を晒される。
逸物を押し当てるだけで碌に触れてすらいないのに、おなまえの目は潤み、口で呼吸するのがやっとな程力は抜けて、すっかり出来上がっていた。


「…いい顔」
「見、ないで…」
「次はイキ顔見せてくれよ」


そう言うとおなまえの背に回ってスカートに手を差し込み、下着の隙間から指を這わせて既に濡れそぼっている秘部から愛液を指に絡める。
おなまえが脱力感の中にあって満足に抵抗出来ないのをいい事に、携帯を取り出しておなまえの顔を動画で撮影までし始めた。


「や、やだ…新隆っ、録らないで…ぇっ」
「ダメぇ〜。俺のオカズにするから」
「さいてい…っ! あっ!…ひ、」
「すげぇ濡れてきてる。クリこんな固くなって、摘めるぞ」
「あぁあ、…ダ、ダメっ…ん、」
「コリコリするの、気持ちいいか?」
「と…とめてぇ…、はぁっ…あうぅ!」
「擦る方が好き?」
「んぅう、…ぁ、あっ」
「…言わないならどっちもな」
「ひっ、…っ、ああぁ!」


霊幻はおなまえの勃起した肉芯を親指と中指で摘みながら、人差し指の腹でその先を撫でるように擦った。
強い快感に足を閉じようとするのを霊幻が膝の内側に足を掛けて邪魔をする。
その足をどかそうとおなまえが手を掛けるが、体を巡る刺激は指先まで痺れさせてただ添えるだけになった。


「ぁ…ら、たかぁ…っ」
「…、おなまえ…」
「あぁダメ、イっ……あ、あぁっ!」


熱の篭った声で名前を呼ばれておなまえの視界が明滅する。
ビクビクと腰が跳ねて達すると、余韻に身を震わせる所までを収めてから霊幻が携帯を閉じた。


「はぁっ…、はぁっ…、信じらんない…消して…」
「消す訳ないだろ、勿体ねぇ」
「変態…っ!」
「ほぼ声だけでイケるおなまえちゃんも大概だがなぁ?」
「……明日から覚えてなさいよ…」


腕で顔と耳を隠すと、霊幻はおなまえのスカートを捲りあげて下着を足から抜く。
ここまで来たら抵抗する気も失せて、どうにでもなってしまえとおなまえは息を吐いた。
クチュリと水音がして霊幻自身が宛てがわれると、おなまえが息を吐くのに合わせてゆっくり侵入してくる。
全て埋まり切ると霊幻は顔を伝う汗を拭い、苦しそうな表情のまま口端を引き上げて携帯を揺らして見せる。


「お前こそ。忘れさせねぇからな」



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03.31/声フェチ夢主がいじめられる
03.31/言葉責めされる



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