▼花見注意報



いつもいつもこういう役回りだ、とエクボは独りごちた。
穴場なのだと嬉々としておなまえに教わったその場所は、確かに自分以外の客もなく静かなものだ。


--こんなに咲き誇ってるのに、お前さんも寂しいやつだな。


頭上で沢山の蕾を開かせ春風に揺られる桜を見上げた。
そもそも、こんなほぼ貸切状態なのに何で俺様が場所取り何ぞに駆り出されにゃあならないと憤っていた気持ちも、誰に見られるとなくとも咲く桜を見ていると角が収まる気もする。

どうせろくに飲めるメンツじゃねぇし、と一人で先に花見酒と洒落込んでいれば、ようやく待ちかねていたその人がやって来た。


「エクボさーん!すみません、一人で先にお願いしちゃって」
『遅ぇぞおなまえ。先に始めちまったわ』
「霊幻さん飲めませんし、大丈夫ですよきっと。私もご一緒します」


「お酒のアテも持ってきましたよぉ〜」と持って来たつまみたちを並べて、おなまえはこの日の為に取っておいたのだという酒瓶を抱える。


『偉く気合い入ってんなぁ』
「此処を知ってから今年は絶対お花見しようと思ってたんです!奮発したんですよぉ百桜の純米大吟醸…金箔入り…!」
『おぉー』


ぐい呑みを差し出されてそこに酒が注がれる。
エクボも同じ様に注ぎ返して「お花見いぇーい!」と興奮しているおなまえに、そんなに楽しいものかねぇと思いながら酒を煽った。


「始めてるとこ悪いけど退かせ。テーブル持ってきたぞ」
「あ、霊幻さん。はーい」
『…お前まで随分大荷物じゃねぇの』
「ふふん。これはだな…」


何やら得意気に片付いたシートの上をあれよあれよとセッティングして、あっという間に簡易こたつを作り上げてみせる。
それを見たおなまえは「コタツだぁあ〜!花見しながら温もれるなんて…霊幻さん流石!」と感動で身を震わせていた。


「おなまえ、お前車で来てるだろ。帰り乗せてけ」
「勿論です!てか言ってくれれば迎えに行ったのに」
「サプライズにならねぇだろ」
「!!! 好き!!」
「はいはい。…いつから飲んでんの?もう酔ってんの?」
『霊幻がくる10…15分くれぇ前か』
「どんなペースだよ」


テーブルに並べ直されたおかずやおつまみたちに手をつけながら、ようやく揃ったメンツに改めて乾杯とお茶の入ったプラコップとぐい呑みを合わせた。


---


『ハハハ!マジかよ霊幻!』
「う〜…」
「ろうしたんれすか、れえへんしゃん?」
『お前も呂律回らなさすぎ』
「ほんらことらいれしゅ〜!わるくちいうのはほろくちかぁ?」
『オイオイ…』


酔いが本格化してキス魔になったおなまえがエクボに覆いかぶさり、ふに、と唇を押し付け更に舌まで差し込んでくる。
さっきコレをされて、霊幻はキスによる僅かなアルコール摂取でクラクラと酔いが回ってしまった。
元より二人が煽り続ける酒の匂いだけで顔が赤くなる程だったのに、穏やかな春風は酒の香りを吹き飛ばしてはくれない。
あむあむと唇を食まれて、満足したのかようやくおなまえが離れるとエクボの口元を唾液が伝う。


「…こもれてるよぉ〜えくもしゃん」
『………誰がえくもだ』


エクボの口元をペロリと舐め上げるおなまえ。
酔っ払いの相手なんかしたかないが、こういうのは寧ろ歓迎だ。
とろりと潤けた顔のおなまえに悪戯心が沸くのだって仕方が無いだろうとその腰に手を回し、くびれから柔らかな尻を撫でるとおなまえは「ん〜?」とその手を見る。


「えくもしゃん、おひりサワサワしてなぁに?」
「…何してんだよエクボ……」
「あ。意識あったのかよお前」


おなまえの声に項垂れていた霊幻が身を起こし、尻をまさぐるエクボの手を掴むと据わった目でエクボを睨みつける。


「ウチの従業員が酔ってるのをいい事に襲おうとしてるんじゃねぇよな…」
「おなまえが良さそうにするから、もうちょっと頂かせて貰おうとしてただけだぜ」
「オイ」
「れえへんしゃん、なにおこってるの?」
『霊幻ももっとキスして欲しいんだと』
「しゅる〜!」
「違…っ」


怒気を含んだ霊幻の声音に、おなまえはエクボの腕から抜け出して霊幻に抱き着き再び唇を落とす。
倒れ込まないように後ろに手をついておなまえを受け止めると、おなまえ越しにエクボに視線をやる。
エクボはニヤッと下卑た笑みを浮べて背後からおなまえの服の中に手を差し込み、下着をずらして胸の先を擦った。
霊幻と舌を合わせている唇の隙間から、鼻に掛かった声が漏れる。


「ふぅ…ん〜……は…、あむ…」
「…ぅ……おなまえ、少し…落ち着けって…!」
「…れえげんさん…?」
「お…起きたか…?」
『寝てはねぇんだから起きるは違うだろ…なぁ?おなまえ』
「えくぼ、さ…ぁっ!…ん…?何……」


戸惑いの色が見え始めたおなまえの耳許に口を寄せ、エクボは囁きかける。
片手をおなまえの頭に掛け、もう片方は変わらず胸を弄り続けたままだ。


『気持ちイイよなぁ?キスするのも触って貰うのも』
「は、う…ぁあ…っ」
『もっとして欲しいよな』
「…は、い……」
『じゃあ…』


エクボはおなまえの返事に笑みを深めて顔を離す。


『霊幻に上手におねだりしな』
「!? エクボてめぇ…っ、」
「れい、げん…さん……」
「おなまえ…っ………チッ…」


エクボの言葉を聞いて霊幻が文句をつけようと声をあげるが、それは途中で詰まって最後まで言うことは叶わなかった。
おなまえがズボン越しに霊幻の中心に自ら腰を擦り寄せてきたせいで。
おなまえを制止しようと見るも、目を合わせることを後悔する程熱を孕んだ表情にとうとう霊幻まで劣情が頭を擡げた。
それに耐えようとする霊幻を、更におなまえは追い討ちを掛けるようにまるで挿入しているかのような動きで中心を刺激し、せめて見ないようにと目を逸らす霊幻の頬に両手を添えて緩く阻んでくる。


「私…もっとして欲しい、です…」
「………」
「…お願い…します…」
「…クソ…っ」


こんなに熱情的に息子を擦って昂らせる癖に、懇願する声は弱々しく掠れて霊幻を煽る。
一層硬度を増した逸物に、霊幻は荒々しくバックルを外してファスナーを下ろす。
おなまえの背後で愉快で堪らないという様に喉を鳴らす声が聞こえて、耳障りだと思いながらもすぐ側にある熱に触れた。
そこは既に柔らかく潤って、霊幻の指をすぐに飲み込もうとヒクついている。
物欲しそうに見つめてくるおなまえと目を合わせると、下着をずらして隙間から自身を埋めた。
おなまえの喉が反り、充足感に熱い吐息を零す。


「あ…、はぁ……」
「…っ、く…」
『良かったなぁ、おなまえ』
「んむ…っ…」
「……」
「ぅ、………んぁっ!」


後ろからおなまえに口付けるエクボと、それに応えているおなまえが面白くなくて中が馴染むのを待たずに抽挿を送れば腹を震わせて甘い声が吐き出された。


『おー怖。…口くらい貸してくれよ』
「……邪魔すんなよ…」
『んな野暮しねぇ。霊幻様のお許しが出たぞおなまえ、こっち向けろ』
「ああっ…!は…、はい…っんんぅ、!」
「抜かねぇぞ」
「…っひ、…ぅあ…っ」
『ハハ、容赦ねぇな』


抜くことが許されなかったので、おなまえは律動が浅くなるタイミングに合わせてゆっくりとエクボの方に向く。
そのおなまえに手を付かせて、霊幻は後背位で挿入をより深め奥を抉ってくる。
レジャーシートの上をおなまえの爪が掻いて、快感に喘ぐその口にエクボが自身を宛がった。


『俺様のも頼むぜ』
「は、…あっ!ぁ…くぅ…っん、ん…ちゅ」
『そうそう…、そのまま吸って扱いてくれよ』
「んぐ…っ、ふ…んんっ!」


エクボが頭の後ろを掴んでおなまえが離れないように固定すると、喉の奥までいっぱいになり息苦しさに涙が溢れた。
必死に鼻で酸素を取り込みながら舌を這わせ、唇を窄めてエクボのものを頬の内側に擦り付けるように扱くと、エクボからも気持ち良さそうな溜息が漏れる。
『ぁー…イイわ…っ…』と褒めるように頭を撫でられて、おなまえの腹の底がまた疼く。
それは埋まっている霊幻にも伝わり、霊幻のを締めながら中がうねれば彼も限界が近づいた。


「…はっ…、締まる…」
「ふ…、ぅっん…!は、ぁあ…イ…イキそ…、んっ」
『離すな』
「んんぅっ!〜〜ッ!」


おなまえの腰が震えて絶頂が近いことを知らせると、両手で頭を抱えられてエクボが腰を押し付けた。
一気に入り込んできたそれに喉の奥が空気の抜き場を求めて音を立てる。
その間も霊幻は繰り返し子宮口を穿ってゾワリと背中が反った。
ビクビクとおなまえが体を震わせると、遅れて霊幻もおなまえの腰を掴んでグッと身を寄せる。
腹の奥に熱が注がれる感覚と息苦しさでクラクラしていると、ズルリと口からエクボのものが抜かれた。
まともに呼吸できるようになって、ひゅうひゅうと喉が酸素を求める。


『あ〜あ、グッチャグチャな顔してやがる』
「…はぁ…っ…、中出しちまった…」
『俺様気にしねぇから代われよ』
「マジかお前……引くわぁ…」
『ほらおなまえ、綺麗にしてやれって』
「はぁ、…はぁ……っ、はい…」
「ちょっと待て流石に…!」


愛液と精液に塗れた霊幻のものを躊躇い無く口に収めるおなまえに、霊幻が肩を押して抜くよう促すがおなまえは霊幻の腰に手を回して離さない。
それを見てエクボが『俺様もそれされたかったぜ』と笑いながらおなまえの蜜壷を再び埋めた。
エクボに突かれながらも必死に舌を這わせてくるおなまえを見ていると、吐き出したはずの熱が再燃してきて霊幻は唇を噛む。
『楽しまなきゃ損だぞ霊幻』と余裕の表情のまま腰を振るエクボに、「この鬼畜クソ悪霊め」と精一杯の悪態を吐いた。




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03.28/守衛エクボ&霊幻×お花見でほろ酔い



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