▼金縛り未遂

翌日のスケジュールと目覚ましのアラームを確認して、ほとんど制服となりかけているジャケットをクローゼットの外に掛ける。
いつもスカートだけど、たまにはパンツにしよう。
それならブラウスも少しシャープな印象のにしよう。
ジャケットに合わせてみて納得いく組み合わせに頷き、すぐ着られるようにジャケットの隣に掛けた。


「よし、こんなもんかなぁ」


時間の掛かりそうなもので前以て用意出来る準備を一通り終えて、部屋の電気を消しベッドに横たわる。
そのまま目を閉じて私は眠りについた。


---


…重い。
体の上に何か乗っているみたいな負荷に段々と眠りに落ちていた意識が覚醒してくる。
息苦しいような気もする。
もしかして…金縛り…!?

目を開けてみても明ける前と変わらず闇が見えるだけだ。
身じろいでみると僅かに体も動く。
しかし体の上の重量は増して、私は悪霊だどうしようと焦る。
心臓が早鐘を打つ。

私は除霊できない。
塩だって振りまかないただの一般人。
まさか自分の家で悪霊の被害に遭うとは思わなかった。
こんなことなら霊幻さんから塩を貰っておくんだったと恐怖で涙が滲む。
涙は頬を伝わないで目元にじんわり広がって行った。
…何で?と疑問が頭を掠めた時


『…ん?起きたか?』
「……え、くぼ…?」


聞き慣れた声に涙が引っ込んでいく。
未だ視界は黒く涙で濡れた目元は熱を失って冷たくなっていた。


「何…え?金縛ってるの、エクボ?」
『あ?金縛ってなんかねぇぞ』


本当にエクボだ。
安堵すると同時にでは何故自由が利かないのだとまた身じろいでみた。
手首から先は動く。肘が動かない。
首も動くが視界は晴れない。
足を動かそうと上げてみると膝の上に何かあって上がらない。


「……もしかして、乗ってる…?」
『ハハ。何だしっかり起きちまったか』
「み、見えないんだけど何?説明してよ…」


動かない肘は、多分エクボが押さえている。
左手の指先が右手の掌に触れた。
手首、縛り上げられてる。本当何で、こんなこと。
喉を鳴らしてエクボは笑っているみたいだ。


『遊びに来たら寝てたからよ、ちょっと縛ってみようと思ってな』
「は…犯罪…!鍵、閉めてたでしょ…?」
『俺様に鍵なんて意味ないの、わかるだろ?』


霊体で壁や扉をすり抜けて内側から鍵を開けたということだろうか。
本当に犯罪じゃないか。
ぬめりとした感触が首筋を這って背筋が粟立つ。
次いでリップ音が鳴って、エクボが首筋を舐めているんだと気がついた。
本気でこのままする気…なの…!?


「エクボ、離して…顔も見えないしっ」
『ん?たまにはいいだろ』
「や、やだって…!ひっ…」


寝着が捲られて熱い指が胸の先を摘む。
人差し指と親指で挟まれて、そのまま親指の腹で擦られると痺れがすぐに体を走る。
性急な愛撫にも反応してしまって羞恥が頬に熱を巡らせた。
唇を噛み締めて声を押し殺そうとすると唇に生温い舌が捩じ込まれて塞がれる。
息苦しさが頭にもやを掛けて、与えられる刺激の輪郭がシャープになる。
普段は舌が合わさる音なんか気にすることないのに、くちゅり、くちゃりと舌同士が触れ合ったり吸い合う度に立つ粘着質な水音が耳に残ってしようがない。
その間もしつこく胸は弄られたままで、どんどん下腹部が疼き出してしまう。

エクボが寝着を脱がせて布が肌を滑ることすら快感になってしまいそうで体が震える。
するとまたクツクツと笑う声が聞こえて、見られていると思うと余計体が熱くなってくる。


『そんなに足を擦り合わせてよぉ…もどかしいなぁ?おなまえ』
「はぁ…はぁ…っ、も…手、離してよぉ」


抱き締めることもできずに一方的に触られるだけだ。
願いは聞き入れられずにエクボの指は私の胸から臍を伝って内腿を撫でる。
足の付け根の際どい所までくるが、肝心のソコには触れずにその周りをぐるりと何度も往復する。
耐え切れずに足を擦り合わせようとするとその足を開かされて固定された。


「う…やだ…っ!エクボぉ…触って…」
『ハハ、物欲しそうだなぁ?』


僅かに動く腰を浮かせてエクボの手に擦り付けると愉快そうな声がした。
恥ずかしい。けど、このまま触られないでいるともっとはしたないことをしでかしてしまいそうで、それよりは幾分マシなはずだ。
ようやく熱を持った中心に触れてくれたエクボは難なく指を飲み込むソコに根元まで埋め込んで中を探る。
グニグニとまさぐられる感覚に嬌声を上げると、すぐによりイイ所を見つけて責めて来る。
さっきまでもどかしさに震えていた体には刺激が強くて声が止まらない。
それなのにイキそうになるのを察すると指先はポイントをズラして、じわりじわりと足の裏に熱が溜っていく。


「ぁあっ、は…!んん…っえ、くぼぉ」
『すげぇなぁ…こんなにドロドロになっちまって…』
「も…目だけでも取ってよぉ…」


とっても情けない声だと自分でも思った。
顔が見たいと懇願すると、ようやくエクボに届いたのか『しょうがねぇな』と溜息混じりに目元が緩まり、ベッドサイドのライトに照らされたエクボの姿が見えた。
本当エクボだ、と安堵するとすぐさま中の指が再び動き出す。


『折角顔見せてくれるってんだから、盛大にイッてくれよ』
「ゃ…っ!はぁ、ん…、あぁあっ!」


そう言うとわざとポイントをズラしていた指先が一点を集中的に擦る。
さんざん焦らされた私は顔を背ける余裕もなくあっという間に登り詰めてしまう。
そのまま指先はソコを擦り続けるものだから、いよいよ耐えられなくて顔を背くと顎を掴まれて無理矢理前を向かされる。


『ホラ、イキたかったんだろ?遠慮しないでどんどんイっていいぞ』
「ひっん、…く、…はぁ、ああ!…はっ」


中だけでなく溢れた愛液を陰核にも擦り付けられて、もう喘ぐことしかできない。
達しても休みなく嬲られ続け、苦しさで息もままならない記憶を最後に、私の意識は途切れてしまった。


---


アラームが鳴り、それを止めてムクリと起き上がる。
気だるくてやけに重たい体をベッドから降ろすと、寝ぼけ眼のまま服が掛けてあるはずのクローゼットの取っ手を私の手は空を掻いた。


「?」


…あれ。パンツスーツスタイルのつもりで用意を…あれ??
確かに準備していたはずなのに不思議だ。
この後髪や顔も作らないといけないので、仕方なくいつものブラウスとスカートに袖を通した。
スカートのファスナーを上げようと立ち上がると、すぐに腰が抜けたようにぺたりと床に座り込んでしまい頭の中に??がいっぱいになる。
と、ベッドの下に乱雑に放り投げられていたパンツスーツとスカーフを見つけた。


「……コレ…」


ぐっしょりと汗や涙やらで濡れ切ってしまっている。
そこでようやく昨晩の出来事を思い出して、私は頭を抱えた。

全く腰が立たない。
濡れたまま放置されてしまったブラウスとスーツの後始末といい、このままでは遅刻が揺るぎないものになってしまう。


「……エクボぉぉぉ!!」


私の悲痛な声に、返事は帰ってこなかった。


---


「…遅いなぁみょうじのやつ。いつもならもうとっくについてるんだが」
『おなまえなら体調わるいとか言ってたから遅れるんじゃねぇかなぁ』
「ん?そうなのか?」
『ひょっとすると休むかも』
「…そんなに悪いのか?無理すんなってメール送っとこ……で?その分勿論お前が働くんだよな?」
『………』



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