▼それってプロポーズですか



「…はぁ、カッコよかったですねぇ!あの役者さん」
「どいつ?」
「あの主人公たちと別行動してた役です。いやーただのやっかみキャラと思ったらまさかのあそこで!登場時の小物感とのギャップで鷲掴みにされました」
「ああ!アイツな。味方とは全く思って無かったわ。騙されたな」


前から見たかった映画をようやく観れて、時間を作ってくれた新隆さんにお礼を言った。
年甲斐もなくはしゃいでる私を見て、新隆さんも笑いかけてくれた。
同じ物を見て同じ気持ちに寄り添ってくれる。
そんな優しい所が大好きで。


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あれから何年か経ったけど、その"好き"は変わらず。
寧ろ大きくなっていった。
新隆さんの声が好き。
私の名前を呼ぶ時。ちょっと強めに制してくる時でさえ顔が赤くなる程好き。
新隆さんの指も、ちょっと香水と混ざった匂いも。
何ていうか、やっぱり全部が好き。

少しでもそれが伝わりますようにとアピールを欠かさないのだけど、新隆さんは柳みたいに流す。
今だって、後ろから抱き着いて「今日も大好き」だと囁いてキスをしても「知ってる」で済まされてしまった。
……もしかして、私だけが好きなのかもって 最近、思う。


「新隆さぁん」
「どうした?」


甘えてみれば読んでた雑誌から顔を上げてこっちを見てくれた。
んんー……優しい。好き。

でも頭の裏の方で、「それって他の人にも向けてる優しさと同じじゃないの」ってもう1人の私が言う。
偏屈で意地っ張りで嫌な私の声はすごく大きい。
そんなことないってもう1人の私に頭の中で言い返して、その違いを証明してみせるわよ、と新隆さんの首の後ろに腕を回してキスをした。


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新隆さんの手はすっかり私の弱点を知り尽くしてて、すぐに私は余裕を失くしてしまう。
でも、今日は。堪えるんだ。
私たちはお互いに愛し合ってるって、納得したい。
もうすぐそこまで来てる大きい波から、身を捩って抜け出そうとすると新隆さんがじっとその様子を見てくる。


「あは、っはぁ…!ん…ぅ…」
「…おなまえ…」
「っ!!」


逃げる腰を空いてる片手で掴まれて、また指先がソコに触れる。
咎めるような声音で名前を呼ばれただけで体が震えて新隆さんの指を締め付けてしまった。
まって。ちがうの。こんなつもりじゃなかったの。
恥ずかしくて顔を両手で覆うと、喉を鳴らして笑ってるみたいな声が聞こえる。
このままではいつもと同じだ。
流されないんだ、今日は…!

ゴムを着けようとしているその手を抑えて、新隆さんのに触れる。
驚いた様子で新隆さんは私の肩を押して距離を取ろうとしてきた。


「えっ何」
「何って…しようと思って」
「…手で…?」
「口で」
「くっ……ちではしなくて良いから」


一瞬顔を伏せて新隆さんは肩を掴んでいる手に力を入れてくる。
ここで折れる気はないので私も負けじと前に向かって対抗した。


「したいです」
「何でまた急に」
「私ばっかり気持ち良いのズルいから」
「んなことねぇって」


結構体重を掛けてるのに中々寄らせてくれない。
掴まれてる左肩は指が添えられてるだけで、実際には当てられてる左掌で押し返してきてて痛くはないけど肘でもガードされて面が塞がれてる。
くう。私も武道の心得があれば。空手でも習おうかな。
とか思ってたらそのまま力負けして後ろに押し倒された。
油断した!


「ちょっ…待って!したいってば」
「はいはい」
「聞いてって!」
「口でするとその後キスしづらいだろ」
「え…っ、ず…るいよ、今話し中…ぅ!」


人が聞き返そうとしてるのにいつの間にかしっかりゴムを着けてて挿入してくる。
不運にも声に後押しされて達したばかりだから、圧迫感はあっても痛みはない。
でも多少強引に入れられてちょっと不満だ。
文句を言ってやるつもりで口を開けばキスで塞いできて、本当にズルい。


「ん、んう…っは…」


体は正直っていうもので、心とは裏腹に与えられる快感に素直に従ってしまう。
だって新隆さんとするのは気持ちいいから。しょうがない。
体が動かないように私の髪に指を通して頭の位置が固定される。
これをされるとこれから奥まで来るって理解して、期待でまた中が反応しちゃう。
身に染み付いた癖のようになっていて、また恥ずかしくなってきた。


「…っく……今度は何が、そんなに気に入ったんだよ…っ」
「うう…、…」


言いたくない。
でも私の中にいるから隠せない。
聞かれながらも新隆さんは動きをやめないから、ずっと気持ちいいし。
恥ずかしいのと気持ちいいのと、新隆さんが好きなのと好かれたいのと、色んな気持ちが混ざりあってドロドロに溶けていく。


「これ?」
「んああっ!」


そう言って腰をピッタリくっつけて奥を揺さぶってくる。
声が止まらない。


「こ、れ…好きぃ…っ」
「フッ…そうだなぁ」
「…だ、けど……はぁっ、あら、たかさん…これするっ…前に」
「うん?」
「いつも…頭に、手…っ! 掛ける…ぅ、から…ぁあっ、」
「……期待した?」


喘ぎながら訳を話せば、新隆さんは目を丸くして私の顔を見つめる。
思考能力が低下してる私は、もう恥ずかしいなんて思えないくらい気持ちいいので頭がいっぱいになってて、新隆さんの声に頷いた。
新隆さんは私が口でしようとしてた時みたいに顔を伏せて、私の胸元に額を押し付けてくる。
微かに「ぁー…」って声が聞こえて、何言ってるのかなってちょっと声を我慢して聞き耳を立てる。


「ホント…もう、………どんだけ好きにさせるつもりなんだよ…」
「んぇ…っ」
「あ゛っ、…おなまえ…っ!」


いまのは。
今のはさすがに、聞き捨てならない。
すっごく小さい声だったけど確かに聞いた。
反射的にまた締めちゃって、新隆さんの動きが止まる。


「新隆、さん…いまの…」
「……や。その。…何でもない」
「好きって」
「……」
「私のこと、で…いいですか?」
「……他に、誰がいるんだよ…」
「!!」
「ぅ、」


新隆さんが汗を拭う振りをして私から顔を隠す。
額に当ててからその手が下がり、鼻と口元を隠すように右手で覆った。
頬は見えないけど、耳とか首とか、目元まで真っ赤だ。
嬉しすぎて私まで顔を手で覆って胸がいっぱいになってくると、新隆さんが息を詰めるのが聞こえた。


「…ホント、反応しすぎだから。少しは抑えろって」
「……むりです…」


胸がいっぱいすぎて掠れた声しか出なかった。
泣きそう。死にそう。抑えるなんて、だいぶむり。
だってこんなに好き。


「いましんだっていいです…」
「……」
「ひぁっ!は、…ぁあっ!」


突然新隆さんが動き始めて、心構えができてなくて大きく喘いでしまった。
急いで口元に手をやって抑えると


「死ぬくらいなら俺と生きろよ」


なんて抑えた手を無理やり引き剥がして笑うから。
もう、「はい」しか言えないです。



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02.28/表には出さないが夢主を溺愛してる裏



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