▼霊気は大切にね

微※



「…今日も暇だねえモブくん」


ローテーブルに体を伏せるおなまえちゃん。
シャツの隙間から胸の谷間が見えてしまって僕はサッと棚に目をやった。


「困ってる人がいないってことだよ」
「それもそっか」


今師匠は買い物に出ている。
…んだけど、戻りが遅いからエクボに様子を見に行かせていて、今事務所には僕とおなまえちゃんだけだ。
夏の照り付ける日差しはこの部屋にも燦々と降り注いで、お客さんが来ないと常に弱のエアコンでは涼みようもない。
おなまえちゃんはテーブルがひんやりしていて気持ちいい、と体をすっかり伸ばしている。


「モブくんも触って涼もうよ、冷たいよ?」
「そ…んなに暑くないから大丈夫だよ」
「でも顔赤いし…麦茶おかわり持ってこようか?」


そう言っておなまえちゃんの両手が僕の頬に触れる。
テーブルに前のめりになっているから、やっぱり胸元…どころか下着まで見えた。
僕は口を引き結んで必死に棚に視線を縫い付ける。

机で冷やされてたおなまえちゃんの手は僕の頬の熱を吸い取っていくみたいで、心地が良い。
思わず少しだけその手に擦り寄るようにすると、冷蔵庫に向かおうとしていたおなまえちゃんが離し掛けていた手を止めた。


「…平気?」
「あっ、ごめん」


離したいだろうにこれでは動けないよなと姿勢を正して手を下ろさせると、おなまえちゃんは僕たちの間にあったテーブルを回り込んで僕の前に腰掛ける。


「…お行儀、悪いよ」
「モブくんなんかいつもと違うなと思って。…お行儀悪いのはホラ、モブくんしか今いないし許してよ」


それなんだよ。
僕しかいないんだ。
留守番してちょっとの時までは何ともなかった。
でもエクボを送らせてから「二人きりだ」って気づいちゃったら、急に落ち着かなくなって。
さっきからおなまえちゃんのことを意識しすぎちゃう。


「元気ない?」
「…ううん。体調は本当に悪くないよ」
「そっか……元気ならぁ…」
「えっ、ちょ…!」


突然おなまえちゃんがのしかかってきて、僕は慌てておなまえちゃんの体を支えた。
ニヤニヤと良からぬことを考えている顔をしている。


「心配させた罰だあ〜!」
「は、アハハハ!おなまえちゃ…やっハハ、」


急に脇腹を擽られて笑ってしまう。
おなまえちゃんはとっても楽しそうにしてその手を止める気配はない。


「や、めてって、」
「ん〜?笑うモブくんレアだし可愛いし…もうちょっとさせてよ」
「〜〜っ!」


止めたいけど、手を放してよろけちゃったら怪我しちゃうかも。
でも擽ったいのも苦手だ…普段こんな風に笑うことがないから、もう頬が痛くなってきたし。
笑うのをグッと堪えて何とか腕に力をいれ、おなまえちゃんの体を持ち上げると机に倒して起き上がれないように僕も机に片膝を乗せる。
自分の体が浮き上がってビックリしてる内に左手で彼女の両手首を掴んだ。


「あ、あれ?」
「やめてって言ったよ」
「…アハハハ…」
「お返しだから」
「ご、ごめ!ひゃっあはは!ホントだめな…んっふふふふ」


おなまえちゃんは身を捩って僕の擽りに耐える。
…うん、ちょっと楽しい。
もうちょっとくらいやってたいって確かに思う。少しだけ。
でもずっと笑うのって苦しいし、そろそろ良いかなと指を休ませるとおなまえちゃんが大きく呼吸を繰り返す。


「はぁ…はぁ…お腹捩れちゃうかと思った…」
「……」


暑い部屋で余計に頬が染まって、笑い泣きし掛けて涙目のおなまえちゃんを見下ろしてると、胸がザワつく。
今まで感じてたソワソワする感じとは比べ物にならないくらい、大きい感覚だ。
大きな目が瞬きをすると、瞳に堪った涙が一滴溢れた。
おなまえちゃんの手首を掴んでいる手に力を込めて、その涙を舐めとる。


「!?も、モブくん…?」
「……」
「…っん、…」


そのまま首筋に埋めれば、すぐ耳元で戸惑ってるおなまえちゃんの声。
顔を寄せたことで彼女の匂いが香る。
僕、おなまえちゃんの甘い匂い好きだな。
シャンプーなのか何なのかわかんないけど、今は余計に胸に来る。
また脇腹に手を滑らせて撫で続けると、今度は今までと違って鼻に掛かった声が弱く漏れて。
数回そのまま繰り返してから、裾から服の内側に手を差し込むとピクリとおなまえちゃんの体が震えた。
流石に抵抗しようと声が上がる。


「モブくんス、ストップ!こ、ここ事務所だし…!」
「うん…そうだね」


そう言って上体を起こすと、僕が離れて止めると思ったのかおなまえちゃんがホッとしたような表情を浮かべた。
けれど手首を抑えている手はそのままで、すぐにその顔に冷や汗が浮かぶ。


「……あ、あの…ゴメン本当さっきの、謝、るぅ!?ちょっと…!」
「でも…もうちょっとさせてよ」


服の中の手を少しずつ上に滑らせていって、おなまえちゃんの胸の谷間側から下着の中に入り込む。
胸の先を指で摘まむと、直ぐにおなまえちゃんは反応した。


「あっ…ふ、ぅ…だ、ダメだってぇえ…」


声を我慢しようと必死に口を閉じようとしてる。
でも何度も指で挟んで擦れば徐々に力が弱くなってまた口が開いていく。
少し下がって、鼻で裾を捲り上げた。
指で弄ってない方の胸に舌を這わせると、おなまえちゃんは弱々しい声で僕の名前を呼ぶ。
顎で下着をズラして、胸の先を舌で転がせば、とうとう嬌声が吐息と一緒に吐き出される。
しばらくそうしているとおなまえちゃんは足を擦り合わせながら真っ赤になった顔で見つめてきた。
熱の籠った視線に、僕も生唾を飲み込む。
おなまえちゃんの唇に自分のそれを合わせて、手で彼女の胸からゆっくり下に撫でていく。
スカートの裾に触れると、少しだけおなまえちゃんが足を開いてその隙間から差し込む手に内腿が触れた。
舌を合わせている間も口の隙間から切なそうな声が零れて、離れるととろんとしたおなまえちゃんの顔。

可愛い。

そう思いながら内腿を撫でていた指を進めようとした所でハッと我に返った。
僕の手が止まっておなまえちゃんは首を傾げる。


「…モブくん…?」
「エクボが来る」
「!!」


急いでおなまえちゃんの手を解放して身なりを整えてあげる。
机から起き上がりソファーに座り直すとおなまえちゃんが目配せする。
それを見て僕は部屋の奥に入っていった。
その数秒後、ドアが開く音がする。


「ただいま〜。あーあっちぃ」
「おかえりなさい。霊幻さん、エクボさん」
『おう』


おなまえは数秒前の出来事などなかったかのように足を組んでソファーに腰掛けたまま霊幻たちを迎える。


「ったく。ヤベエ悪霊の気配がするだのなんだで遠回りしまくったからすっかり帰るの遅くなっちまった…お客さんは来てなかったか〜?」
「誰も来てないです」
「はぁ〜…そうか。…ん?モブはどうした?」


割安を大きくアピールしている携帯電話のうちわを仰ぎながら、霊幻は自分の席に着く。
するとおなまえと一緒に留守番をしていたはずのモブがいないことに気づいて部屋を見回した。


「モブくんはお茶の飲みすぎで、今トイレです」
「あー…今度冷感タオルでも買うかな…」


洗って繰り返し使えるやつな。と言いながらうちわを小刻みに揺らすのを見るに、エアコンの温度を下げるつもりも風量を強めるつもりもないようだ。
ハハハとおなまえが乾いた笑みで返していると、エクボが寄ってくる。


『…オイまさか、何にもなかったとかねぇよな?』
「何の話です?」
『マジかよ…』


素知らぬ顔で答えればエクボは緑色の顔を青くさせる。


『俺様を追い出したからてっきりイイコトしてんだろーなと気を遣った俺様の苦労は何だったんだよ!』
「へえ。暑い中ご苦労様でした」
「ん?エクボなんか言ったか?」
『…こっちの話だ』


舌打ちをしてブツブツと文句を言いながらエクボが離れて行く。
『わざと霊気だして無駄遣いするんじゃなかったぜ』と離れ際に聞こえた声に、おなまえとトイレの中のモブは内心額を床に擦り付けるほど感謝した。



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02.28/くすぐりあって微裏



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