▼不健康でふしだらなヤツ

※頭とか股とかゆるめ夢主注意
※しかも下品
※名前変換なし



寒空にフー、とメンソールを吐き出している。
体温と一緒に白い息になってそれは空に混じる。
ベランダに出ているそいつの背中をただ見つめた。
一頻りタバコを燻らすと、腕を擦りながら部屋の中に戻って来る。
ガラリと開かれた窓から冷気が入り込んですぐに収まった。


「…アレ、久し振りじゃん」
『…よお』


そう言って笑顔を浮かべているのは、俺様が体をよく借りてるヤツの女だ。
たまに泊まりに来ていて、今日はたまたまその日とかち合ったらしい。
同じように前にも遭遇していて、霊体の姿も見られている。
恋人の中身が別人になっているというのに、コイツは特に嫌悪感もなく接してくる。


「どうしたの今日は。もう夜だけど借りてく用事何かあるの?」
『別に。何もねぇけど』
「そっか。まぁゆっくりしてよ、私の家じゃないけど」


そう言ってベッドに腰掛けて笑う。


『…お前さん恋人の体を勝手に借りられることには何とも思わねぇのか?』
「いやぁ?一緒にいられるつもりで来てるのにそうじゃなくなっちゃうから、嫌だなーとは思うよ」


でも今日はいるんでしょ、そのまま。と言って俺様を見てくる。
外見が同じなら構わない、とでも言いたげだ。


『中身は生憎別人だけどな』
「まぁ、それはそれで新鮮だよ」
『…お前コイツの外見が好きなのか?』
「え?うーん。多分そうなんじゃないかなあ」


「好みじゃない人と付き合おうとそもそも思わないしね〜」とヘラヘラする。
俺様のこの女の印象は始終”薄っぺらな笑顔の女”で定着している。


「だから君が入ってくれたままでもデート行くよ、その時は」
『そうかい』


誰が中身でも構わないと宣うその台詞に俺様の方が嫌悪感を抱くぜ。
それは俺様が霊であって、実体を持たない存在だからなのかもしれないが。


---


「あ、君。ちょっと、君!」


聞き覚えのある声に振り返れば、あの女だった。
少し大きめのショルダーバッグを見るに仕事帰りだろうか。


『なんだお前か』
「なんだって…冷たいなあ。見掛けたから声掛けたのに」
『言っとくけど今お前独り言のデカい不審人物だからな』
「ハハハ。確かに〜」


今の俺様は霊体だ。
不可視モードだから俺様が見えるのは霊力のある人間だけだし、端から見ればコイツは虚空に向かって話しかけてる危険人物だ。
しかしそんなこと構わずに話しかけて来る。
頭のネジ何本か外れてるんじゃねぇのか。


「ねぇねぇ思ったんだけどさ」
『何だよ』
「今度またさ、私が泊まりに来てる夜にアイツの体入ってよ」
『理由は?』
「抱き方違うのかなって興味」


緩いのはネジじゃなくて股だな。


『生憎霊には性欲ってのがないやつがほとんどでなぁ』
「えぇ…そうなんだ……あ、じゃあさ君がアイツに入ってる時に私が口でシてみるのは?肉体の好みと精神の好みが合致するのか興味ある」
『やめろよホント。節操ねぇのかよお前さん』
「アハ」


身持ちかたーいとか言って笑う。
本当にこの間夜に憑依した時こんなこと思い付かれなくて良かったと思う。
まぁヤル気はサラサラないからもしそうなったら抜け出るだろうし、抵抗だってするだろうが。
あの体の主が不憫に思えてくるぜ。


「あ、私電車だから。またね」


そんなことを思ってたらパッと離れて駅の人混みに消えていく背中。
さっきまでベタベタ隣でニヤニヤ煩わしかったのに、変わり身が早くて脱帽するわ。


『出来たら二度と会いたくねぇな』


何の仕事だか知らねぇけど、メンソールの残り香を残す女なんてのは好みじゃねえ。






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