▼躾られる




酒が進むと人は簡単に理性の箍が外れる。
時に立場なんてのはアルコールの力に掛かれば薄っぺらな紙切れのようなもので、旺盛になった勢いの前では簡単に自分の身の振りさえも紙の上の線に任せてしまう。


「ハッハッハッ!アー、おっかし…フフフ、っんふ」
「日頃の行いの結果かな。良かった、マトモな方で」
「俺が何したってんだよ!?」
「よ…よくサイズあったな柴田…プッ、フフ」
「セーラーのお前に言われたくない!」


ピッチピチのバニーガールならぬバニーボーイに扮した柴田を、セーラー服の羽鳥と軍服の峯岸が憐れむ。


「格好良い衣装もあったんですね…に、似合ってて羨ましいな…ハハ」
「芹沢しゃんエル○スっに、似合ってる…よ、んふふふ」
「ビヴァー!」
「「ロッ!ベガァ〜〜ス!!」」


レトロなロックスター衣装の芹沢に羽鳥とおなまえは声を合わせて歌いながらキャハキャハと笑いたてた。
「あ、あんまり騒ぐとショウ君が起きちゃうよ」と寝転がっているショウの耳を芹沢が塞ぐ。


「はーごめんごめん…でも…ぷっ、ふふふ!」
「…あみだくじなんて分が悪くありませんか?差別ですよ」


「私目が見えないのに」と文句を言いながらもキッチリとメイド服を着込んでいる(着させられた)島崎を見ておなまえはニヤニヤと笑みを浮かべた。


「先を読む力はどうしちゃったのかなぁ?島崎ぃ〜」
「くっ…!」
「丁度いいからお酌して女中さん」
「まだ飲む気ですか……」


ハ○カラさんよろしく女学生の格好をしたおなまえが島崎にグラスを傾ける。


「零しますよ」
「ヤダヤダぁ〜メイドさんに注いでほしーいー」
「これメイドなんですか私…」
「もうこの辺にしとこうぜ、子供もいるんだし…もう気は済んだろ?」


道理で下半身が心許ないはずだと島崎は自分が履いているスカートを撫で付けた。
うさ耳のカチューシャを外しながら柴田がショウを指差す。
健やかに眠っているショウを見て、ようやくおなまえは「…わかったぁ」とグラスをテーブルに置いた。


「じゃあ島崎ぃ、ショウ君の後でいいから私も送って〜」
「ハイハイ、わかりましたよ」


ショウを担いで島崎が転移した後、部屋に残っている面々は解散しようと服を着替え始める。


「みょうじ着替えねぇの?」
「んー、結構着るの手間だったからもうちょっと堪能しとく〜」
「ああそう」
「みょうじ俺の服返してくれよ」
「柴田のはこっちー」


着替え終わった順に部屋を出て行く。
最後に芹沢がおなまえを振り返って「じ、じゃあ…また」と会釈をしておなまえ一人が残された。
クイッとグラスの底に少しだけ残っていた温いビールを飲み下して「…マズ」と零す。


「…もう一本だけ頼んじゃおうかな〜」
「やめておいた方がいいですよ。明日辛くなるの、おなまえですからね」
「あ…おかえりぃ〜島崎ぃ」


テレポートして戻った島崎がオーダーしようとするおなまえの手首を掴んで制止した。
「美味しい口で終わりたいんだよぉ、お願い!コレで最後にするからぁ〜」と懇願する。
それを「ダメ」と許さないまま、島崎はおなまえの体を引き寄せた。


「チェックしましたよね、確か」
「うん。もう帰れる…あ。待って荷物」


隅に寄せていた着替えの入った鞄を抱えると、直後嗅ぎ慣れた自室の香りに切り替わった。


「島崎タクシーべぇんり〜」
「お代払って下さいよ」
「んー…いくら?」
「コレ、着替えるの手伝って下さい」


そう言ってスカートの裾を持ち上げてみせる島崎。
するとおなまえは「もうちょっと着ててくれてもいいじゃあん、お世話全然して貰ってないもん〜」と駄々を捏ねる。
まずは靴を脱がしてくれと座り込んで足を少し上げて見せた。


「もんって……しょうがない人ですねぇ」
「わぁい」
「次は如何致しましょうか?お嬢様」
「リビングつれてって。ロゼがあるんだぁ〜」
「ダメですよ、もう」
「一杯だけ!…ね?」


自力で立ち上がる気は毛頭ないようで、島崎に抱き上げて貰うのを待ちながらおなまえは甘えた声で首を傾げて見上げる。
二人きりの時に甘えられるとどうにも弱くて、島崎は溜息を吐いて「…あと一杯だけですからね」と念を押した。


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「はぁ〜!やっぱり最後は美味しい口にならなきゃ一日終えられないよねぇ」
「…確かに、美味しいですねコレ」
「でっしょー」


得意気におなまえがワイングラスを傾ける。
飲み干してほう、と息を抜くとおなまえはテーブルに腕を下敷きにして伏せた。


「これで思い残すことはないわ…」
「コラ。着替えますよ」
「ううー」
「手伝ってくれる約束でしょう」
「…はぁーい…」


気持ち良く眠りに落ちそうだったのに、と不満気に起き上がっておなまえは島崎の背にあるファスナーとボタンを外してやる。
覚束無い指取りはボタンに苦戦を強いられ、既にエプロンを解いた島崎はその遅さに「…寝てませんよね?」と肩越しにおなまえを振り返った。


「…ぉ、きてる」
「……おなまえ〜」
「起きてる!…もう…ちょっと、……ホラ」
「ありがとう」


島崎がシュルリと中途半端に肩に掛かっていたエプロンを抜いて、おなまえがそれを受け取り畳んで行く。
カフスを緩めてワンピースを脱ぎながら「おなまえは何の服なんですか?まだ着てますよね」と尋ねた。


「袴だよ。着付けに手こずったから脱ぐの勿体なくてまだ着てるだけ」


「でももう寝るし流石に着替えるかな」とおなまえがフラフラと部屋を移動する。
時折家具にぶつかりながらクローゼットに到着し、中に仕舞っているキャビネットから部屋着を引っ張り出した。
ポス、と床に座り込んで袴の結び目をモタモタ解いていると「手伝いましょうか」と背後で声がする。


「…えー…島崎出来るのぉ?」
「袴を着せるのは無理ですけど」


振り返りながら見上げれば、下着一枚の島崎が見下ろしていて「アレ。私、服持ってきたよね?」とおなまえは疑問を口にした。


「店を出る時持ってたのならあるはずですけど。玄関じゃないですか?」
「そっか。…寒いよね?今持ってくるね」


手を伸ばせばその手を引いて島崎がおなまえを立たせる。
そのまま玄関へ歩こうとするおなまえの足がふわりと浮いてベッドに背が着いた。
「別に寒くないですよ」という声に瞬きを返すと「すぐ暑くなりますから」と島崎が笑った。


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嗚呼、折角の着物が皺になる。
パサリと脱がされた衣服が床に落ちる音を聞きながらおなまえはぼんやりとそう思った。
口内の逸物を深くまで迎え入れれば、酒の回った頭がクラリと痛む。
おなまえが眉を寄せて苦しそうな声を漏らすと島崎は頬からおなまえの髪を掻き上げた。


「んぐ…ぅ、」
「…ね?飲み過ぎたら辛くなるって言ったでしょう」
「う……、んっ…」
「…っ、…」


悔しさにジュプッと音を立てて雁首に舌を這わせながら島崎の自身を吸う。
すると島崎が息を詰めておなまえの髪を掴む指に力を込めた。
それに気を良くして喉を締めて繰り返し舌先で血管をなぞると島崎がおなまえの頭を抱えるように押さえる。
ぶるりと腰が震えた直後自身の先端から熱が放たれ口内を満たした。
「はぁ」とおなまえの頭を押さえたまま島崎が火照った息を吐き出して、口から自身を抜こうとしない。
息を止めていられなくて一度コクリと飲み込むと鼻に青臭さが広がっておなまえは顔を顰めた。


「ん…、んーん」


抗議の声を上げれば島崎はニヤリと笑っておなまえの項を支える。


「そのまま飲んで」
「……っ、んく」
「そうそう…上手です」


飲むまで抜くつもりのない様子の島崎に折れ、仕方なく残っている白濁を飲み下した。
喉に絡む不快感に涙目になりながらも全て飲むと、ようやくズルリと自身が引き抜かれて新鮮な空気を吸い込む。


「よくできましたねおなまえ。偉い偉い」
「…子供扱い、しないでよね」
「そんなことしてませんよ」


宥めるようにおなまえを抱き締めて膝の上に座らせると、「子供相手にこんなことしませんし」と彼女の体に痕をひとつふたつと増やしていく。
胸の先に吸い付くとピクリとおなまえが反応して、片腕で背を支えながらもう片方の手で蜜壷をなぞった。
入口の浅い部分を擽ると急かすように媚肉がヒクつき中から愛液が溢れてくる。


「はぅ…っ、あ……やだ…っ」
「…何が?」
「ん、あっ!もっと…奥…ぅ、…はぁ、あ!…して…っ」
「ココです?」


わざとズレたポイントを探るとおなまえは首を振って島崎の胸に擦り寄った。


「やっ、あ!ち…ちがうぅ…あん…、亮ぉ…お願…っ」


おなまえの熱を持った肌と声が震えてせがむと、島崎の胸がゾクリと刺激される。
素直に望まれた通りの場所を擦ってやれば甘い嬌声が島崎の耳を侵していく。


「あぁっ、あ…気持ち…いぃ…っん、あっ!ぁ、は…う、……っ!」
「…まだダメです」
「ぁ…っ」
「次は…一緒にイキましょう、ね?」
「うぅ…そ…っ、あ!」


高まりつつあるおなまえの中から指を抜くと、物欲しそうにおなまえが身を寄せた。
そんな様子に笑みを深めつつ再び硬度を持った自身をおなまえに宛てがう。
簡単に飲み込んでいこうとする入口に腰を押し込むと、耐えるようにおなまえが島崎の肩に爪を立てた。
奥まで一気に沈められた隙間に短く呼吸を繰り返している内に律動が始まり、声を堪える隙もないまま揺さぶられる。


「ひ、っああ!んん…ふ、ぁっ!あぁあ」
「…は…っ、ちゃんと…我慢して下さいよ…っ」
「ん…ぅ、うあ…っや、ぁん…ソコ…だめぇ!」


グリ、と奥を突かれておなまえが背を反らす。
快感を逃がそうと腰を浮かせれば島崎の腕が回って作った距離が埋められて、悲鳴に似た掠れた声が上がった。


「や、だぁ亮…!んん、ひぅ…っあ、あ」
「どうしてです?好きでしょう?」
「は、…っ!イ…ちゃう…ぅう、ん…っ」
「我慢して」
「ふぅ、う…っ!」


中はざわついて島崎をキュウと締め付ける。
限界が近いと訴えるおなまえに激しく腰を打ち付ければ、必死におなまえが藻掻いた。


「〜〜〜っ!…はぁ、あぁあっ!」
「…あーあ…」


ビクリとおなまえの体が跳ねる。
強く収縮を続ける中をやり過ごすと島崎は「悪い子だ」と低く笑いながらおなまえの胸元から臍の下まで指を滑らせた。


「ご…ごめ…っ、ぁ」
「本当にしょうがない人ですねぇ…そんな人には…」


ズン、と抽挿が再開されておなまえが強い快感の波に肩を震わせる。
「我慢の仕方を躾てあげないとですね」と愉快そうな声が聞こえた。


「出来るまでやめませんよ、ずっと」





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04.11/夢主優位の状態から逆転するメイド服の島崎裏



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