▼へそ曲がりの正し方




影山との一件の後、僕の周囲の環境はガラリと変わった。
取り巻きは遠巻きになっていつも僕を中心にしていたそこにはもう何も無い。
憂さ晴らしに携帯の電話帳をスクロールするが、何かと理由をつけて皆断っていく。
クソ、なんなんだよ。


--…結局、凡人になったらこんなもんだったんだな…僕って


少し俯けばモシャリと頭上のカツラが傾く。
ズレないようにすぐに元のように顔を上げると、道路の向かいの集団に見知った顔がいた。
近くの高校の制服。
いつだったか集団で出掛けた中にいた顔だ。
女なんてすぐに強い者に媚び売ると思っていた中、僕に目をくれるどころか目の前のポテトをひたすら貪り食っていたやつ。


--名前、なんていったっけ…。


少し考えてから、やめる。
どうせ覚えてた所でなんだっていうんだ。
向こうだって覚えてないかもしれないし、今の僕はどちらかというと惨めな方向で注目の的だ。
高校生の集団が僕に気がついて向こう側から携帯のカメラを向けてくる。
それにつられて顔をこちらに向けたアイツも、僕を見て驚いた顔をした。
お前だって、僕の有様を笑うんだろ。
足早に角を曲がって、その場を後にした。


---


「ねぇ、アレやばくない?ウケんだけど!」


その声におなまえは顔を上げた。
皆の視線の先を辿れば、見覚えのある制服と顔。
ちょっと頭頂部が記憶のそれより大分成長しているが、多分知っている人物。
カメラを向けて撮影しようとするクラスメイトを制して、おなまえは向けられた背中を追うように列から外れた。


「ゴメン、あれ知り合いだわ。撮らないで。ちょっと行ってくる、またね」
「えっマジ?ちょっと、おなまえ!」


クラスメイトの声を無視して、点滅した青信号を駆け抜け角を曲がれば、紫のブレザーが近付く。
名前を呼ぶが聞こえているだろうに振り向かない。
おなまえは腕を伸ばして、その肩を掴んだ。


「テル!」
「……何か用?」
「用って…何も無いけど。見掛けたから声掛けたのに無視するから。そっちこそどうしたのその頭」


おなまえはそこで初めてテルが黒酢中の裏番で人気者だったことや、塩中との抗争の末敗北したことを知った。
その際憐れなことになってしまったテルの頭頂部の結果がコレかと見上げる。


「てか積みすぎでしょ、邪魔じゃないのコレ」
「…ないと落ち着かないんだよ」


ソイゼリエでドリアを食べながらおなまえはテルを指さす。
最初からこんなに積み上げた訳じゃない。
日に日に今までの自分との落差が浮き彫りになる。
かといって一朝一夕に環境の改善なんて出来る訳もなく我武者羅になった結果だ。…これからも成長するかもしれない。
おなまえは前に会った時より随分としょぼくれているテルを、メロンソーダをストローで吸い上げながら見る。


--何か、大分印象変わったな…


前に会った時はギラギラしてて自信に満ち溢れてて、自己中人間な臭いがプンプンしていた。
正直皆がどうしてこんなヤツをちやほやするのかわかんないわと思った。
それが今はどうだ。
自分のちっぽけさに気が付いて、周りが掌を返して相手にしないものだからその虚しさを頭頂部に向けている。(違うかもしれないけど)
誰か言ってやる人は他にいなかったのだろうか。


「いっぱい友達もカノジョもいたでしょ、気晴らしに遊び行けば?」
「いないよ、そんな人…」
「は?ホントに1人もいないの?」
「チッ…だからそう言ってるだろ」
「……しょーがないなあ、相手したげるよ」


忌々しげに舌打ちをされるがおなまえは物怖じしない。


「…何?同情かい?」
「ほっとけないから。あと私の気分が向いたから。相手してよ」


サラリとテーブルから伝票を抜き取って「いくよ」と席を立つ。
テルが慌てておなまえから伝票を奪おうとするが、それを躱して「食べてたの私だし」とスムーズに会計していく。


「プリでも撮る?今どんな気分?」
「どんなって…少なくとも撮られる気分ではないかな…」
「そっか。じゃー、カラオケいこ」


半ば強引に手を繋がれて歩き出した。
正直歌う気分でもないがおなまえが見知らぬアーティストの新譜が入ってる機種を上機嫌に調べ始めたので、テルは仕方ないなと肩の力を抜いた。


---


それからと言うもの、ほとんど毎日おなまえはテルと町を遊び歩いた。
学校帰りだけでなく、おなまえのバイトが入っていなければ休日も。
時にはテルの見たい映画を見に行ったりおなまえが食べたいジェラートのお店に行ったり、「遠出したい」と言われて自転車で郊外まで黙々走ったりとにかく色々。
カラオケに連れられた後今更名前を尋ねた時は、失礼だったろうに気を悪くした素振りもなく「おなまえだよ」と答えられた。
今ではもう、呼び慣れたくらい口に馴染んでいる。


「ねぇ、テル。いい加減積むのやめなって、カッコ悪いぞー」
「僕の勝手だろ」


一通り遊び尽くして今は公園でブランコを漕いでいた。
勿論漕いでるのはおなまえだけだ。
もうすぐ日が完全に落ちようという時間に公園にいるのは二人だけだった。


「…だって積んでるから一緒にブランコ漕げないじゃん。どっちが高く漕げるか勝負しよーよ」
「…いいよ。その勝負受けて立つよ」
「ヅラ取るの?」
「取らないよ」


ガチャガチャとブランコの鎖を鳴らしてやかましいおなまえの隣りに足を掛けて、いつでもどうぞと目配せする。
おなまえはテルの頭頂部を一瞬見てから「…落としたら笑っちゃうかもだから落とさないでね」と明後日の心配をした。


---


「なんでだあああーー!!」
「おなまえうるさい」
「男子とはいえヅラ気にしながらの年下に何で負けたのか納得できない」
「流石に押さえながらじゃブランコ漕げないだろ」
「だよね?テルもしかして…今日はアロンアルファで繋ぎ止めてる?」
「違うけど」


一瞬「これぞ正解だろう」と自信満々の顔で聞いてくるおなまえに笑って否定する。
負けたら秘密を暴露するというルールを取り付け必死に負かそうとおなまえも全力を出したのだが、とうとうもう少しでブランコの頂点に届こうかという所で恐怖が勝って勢いを弱めてしまった。


「残念だったね。もうちょっとで1周できそうだったのに」
「流石に1周は無理だよ怖すぎて。飛んでっちゃったらどうすんの」
「その時は止めるから大丈夫だよ…なんだ、怖くなって漕ぐの弱めたの?」
「………高所恐怖症なんだよ」
「よく勝負だなんてそれで言えたな」


テルは苦笑いしながらブランコから降りる。
おなまえは悔し気にまた鎖をガチャガチャ鳴らして項垂れた。


「だからテルがそんな漕げると思ってなかったんだって。勝つつもりで挑んだのにー!」
「…で?勝負に負けたんだから秘密を暴露だろ。おなまえさんはどんな秘密を抱えてるんでしょうかねー」


「え」とおなまえはうつ伏せていた身を起こす。


「今言ったよ、高所恐怖症だって」
「振る前にそれもう知っちゃったから。別の秘密ね」
「…正直がモットーのおなまえさんに他に秘密はないぞー」
「捻り出せば何かあるでしょ。実は友達の好きな人を略奪しましたとか実は受験カンニングしましたとか」


テルの例を聞いてもおなまえは首を捻っている。
言ってるテル自身そんなことしているおなまえが想像出来ない。


「そんなことしたことない……そうだなあ、実は嫌いだった人なら」
「それ僕も知ってる人?じゃないと暴露されてもありがたみないけど」
「知ってる知ってる。私が嫌いだった人はね、テルだよ」
「えっ」


衝撃の暴露に硬直していると、おなまえは手を振って否定を表す。


「だった、ね。過去形。前のテル嫌いだったよ。皆からちやほやされてた時の」
「あ…あぁ、前の僕か…」


てっきり今まで嫌々付き合ってて、その限界を告げられたのかと思った。
こうして一緒にいるのが最近当たり前になっている今、それが壊れると思うとゾッとした。
隣を歩いて向けられていた笑顔や、楽しいと交わした言葉が嘘でなかったことに安心する。


「今のテルは違うからね。話してみたら私でも知らないようなこといっぱい知ってるし、オススメしてくれる映画もばっちり私の好みだったし…そういうのすごいと思うよ」
「そ、そうかな?」
「だって相手の好みに合わせるって、相手のこと考えられなきゃできないじゃん」
「…おなまえだって、僕の趣味にわざわざ付き合ってくれるし、こうして遊び相手になってくれるじゃないか。お互い様だろ」
「私のは………--だから」
「ん?」


おなまえが小声で何か言ったが、小さすぎて聞き取れなかった。
テルが聞き返すもおなまえはブランコから降りて地面に無造作に置いていた鞄を拾い上げている。


「ねえ今の聞こえなかったんだけど」
「私のはすごくないよって言ったんだよ」
「”なんとかだから”の”なんとか”を聞いてるんだけど」
「…私もう秘密暴露したし、言わなくてもよくない?」
「数は決めてないから。暴露するの二個ってことで」
「ええー…意地が悪いなあ、輝気くんは」
「正直がモットーなんだろ、おなまえさんは」
「……」


おなまえは腰に背負うみたいに両腕に鞄の持ち手を引っ掛けて、公園を後にしようとテルが動くのを待っている。
しかしテルがブランコ前の鉄柵に腰掛けたまま立つ気がないのを見ると、しばしそのまま見合ってから諦めたように息をひとつ吐いた。


「私のは、下心だから、すごくないの。それなしで優しくできるテルのがすごい。…これでいい?」
「…え」
「何よ」


聞こえなかったと言われないように声を張って答えるおなまえ。
予想外の下心という言葉にテルは目を見開いた。


「おなまえ……僕の財布が目当てなの?」
「どうしてそうなる?私バイトしてるし、そんな訳ないじゃん」
「じゃあ下心って…そっちの意味の下心?」


ゆっくり尻ポケットの財布を庇うような仕草をすれば、おなまえは顔の前で手を振る。
「あんまり連呼しないでよ」と落ち着かない様子で顔を背けられた。


「いつから?最初からじゃないよね?」
「え、この話掘り下げるの?」
「うん」
「えー…帰ろうよ…」
「じゃあ手短に話してよ」
「ん〜〜…そうきたか…」


空を見上げればもう星空が浮かびそうだ。
時間を掛ければそれだけ恥ずかしくなると判断して、おなまえはそのままテルに背中を向けて鉄柵に腰掛ける。


「いつから、かはよくわかんないよ。最初はただテルが立ち直るまでの間だけのつもりだったし」
「…何でこっち見ないのさ」
「…見てると気が散るから」


テルは立ち上がっておなまえの前に移動すると、しゃがみ込んで下からおなまえを見上げる。
飄々としたいつものおなまえはそこにいなかった。
薄桃色に染まった頬に唇を真一文字に引き締めてテルの視線を受け入れている。


「…おなまえもちゃんと女の子なんだね。安心したよ」
「フッ…どういう意味よ」
「そういう顔見たことなかったから。弟みたいに見られてるんだと思ってた」
「…弟とキスしたいとかは普通思わないよ」
「……したいんだ?」


自嘲気味な笑顔がおなまえの顔から消える。
「好きならしたいの、普通でしょ」と言うから、好きって思ってくれてるんだと思いながら「そうだね」とテルは返す。


「僕もしたい」


腰を上げて、おなまえの前に体を割り入れ首を少し傾ければ、おなまえがその首の後ろに手を回して瞳を伏せた。
控えめに唇同士が触れ合って、離れる。
至近距離に赤みの増したおなまえの顔がある。
後ろに回されていた腕が解かれて、おなまえは自分の頬を抑えた。


「…も…帰ろ」
「…そうだね。暗いし」


身を離せば下を向いたまま片手を差し出してくるおなまえに、テルは笑顔を浮かべてその手を取った。
繋いだ手は互いにいつもより熱くてその内汗ばんできても、おなまえの家の前に至るまで固く結ばれていた。


---


「…なんか最近、テル雰囲気変わってきたよね」
「ん?そうかい?」
「うん。髪も切ったし…」


最近出掛ける用事も増えてるし、と続けたい口をおなまえは固く結んで呑み込んだ。
もう何度目かのテル宅の訪問にも慣れて、ラグに腰を下ろし裏サンデーを捲りながらおなまえはテルの様子を窺う。
元がいいだけにあの頭頂部がなければ尚イケメンだとときめく胸が悔しい。
そんなおなまえの気持ちも知らずに「来週は用事があるから会えないや」と謝ってくるテル。
飲み込みかけた言葉が戻ってきそうで、おなまえはぎゅっと指先に力を込めて寂しさをやり過ごす。


「…わかった」


少し前のことだ。
いつも通り学校帰りに会えばあの頭頂部はサッパリして、顔は傷だらけ。
心配するに決まってるのに理由ははぐらかして教えてくれない。
その日からちょこちょこ会えない日ができて、おなまえは自分もバイトしてるしと最初こそ何とも思っていなかったけどその頻度が次第に増してきた。

もしかしてと思う自分がいる。
テルに限ってと思う自分もいる。

まさか、髪型を変えたのも会えない日が増えたのも、他に好きな人が出来たからじゃ…。
そう思うと、そういえば最近キスもハグもテルからはしてない気がしてきた。
その先なんて勿論してない。
もしかしてもう、私だけがテルを好きなんじゃないか。
…私、テルに嫌われることを知らない間にしてたんだろうか。

一度考えてしまうと蓋をしたところでその内側でぐるぐると悪い想像は渦を強めていく。


「…ねえテル」
「何だい?」
「ん」


隣に座ってとラグを軽く叩けば、首を傾げながら素直に腰を落とすテル。
その体にピッタリ肩をくっつけて、そのまま見つめる。


「…どうかした?」
「……」
「おなまえ…?」
「私たち、付き合ってちょっと経ちましたね」
「…なんで敬語?」
「……それなのに、あんまりイチャイチャしないのはさ…もう……」


好きじゃなくなったから?
とは言えなかった。
胸に冷たい血が巡るみたいに痛い。
泣きそうになって顔を伏せた。
泣き落としは良くない。テルが本心を言えなくなってしまう。
優しいから、絶対気を遣わせてしまう。
息を吸って涙を引っ込めさせる。


「……おなまえ?どうしたの…?」
「…正直なおなまえさんは、輝気くんにも正直でいてほしいです」
「え、うん」
「だからね…わ、別れたくなったら、そう、言って欲しい」
「わ…かれないけど……なんで?」


勇気を振り絞って言えば、驚いた顔で困惑するテル。
その様子におなまえも「え?」と目を丸くする。


「おなまえ僕と別れたいの?」
「別れたくない。テルこそ別れたくないの…?」
「どうしてさ」
「…カッコ悪いって私が言い続けても変えなかったのに、髪切ってるし…」
「これは……不可抗力で…」


やっぱり理由は言わないのかよとおなまえの胸にわだかまりがひとつ増える。


「……最近どっか出掛けてて会えない日多くなってきたし…」
「うーん…それはまぁ……ごめん」


謝って欲しいんじゃなくて誰と何処にいってるのかを知りたいのに、とまたひとつ。


「…………テルからキスとか、してくれなくなったし…」
「え、そんなことなくないか?」
「私からばっかりだよ」
「…ああ…、言われれば、そうだったかも」


気にしてたのは自分だけかと意識の違いが悲しくなって、またひとつ。
とうとう我慢できなさそうだとおなまえは体育座りをして泣きそうな顔を隠した。


「テル……全然キスより先もしたくなさそうだし」
「っ…先…って……そんなこと…」


言い淀むテルにやっぱり、と涙が零れた。
…ダメだ。このままでは嫌な女になり下がる。
泣き喚いてヒステリーを起こす前に…。


「…帰る」
「……おなまえ」


脇のバッグを掴むと、その腕を隣から押さえられた。
泣いてる顔を見られないように背けていたのに、テルの上体がおなまえに覆いかぶさっているせいで隠し様がない。


「不安にさせてごめん」
「……私が勝手に思っただけだよ。テルが謝ることじゃない」
「謝ることだよ。僕はおなまえの恋人だ。別れない」
「……じゃあ…何で隠し事するのよぉ…」


情けない顔を晒すのも仕方ない。
次から次へと不安な気持ちが流れ出ていく。
年上なのに、子供っぽいと思われてしまうかも。
そう思っても止められなかった。


「……おなまえ、驚かないでね」
「…? わっ…」


テルが少し悩んでからおなまえの上から退くと、不意におなまえの体が宙に浮いた。
フワリと浮いたことで驚きで涙が引っ込めば、すぐ隣のベッドに降ろされる。


「い…今私浮いてた…?」
「うん。…僕、超能力が使えるんだ。黙っててごめん」
「え…いつから?」
「物心ついた時から」


髪を切ったのは悪い組織に知人が攫われて、それを助け出すために戦闘した結果だと。
怪我もその時のもので、またいつ組織に襲われるとも知れない為他の超能力者が力を高められるよう指導に出掛けているのだと。


「…だから別におなまえのこと、好きじゃなくなった訳じゃないんだ。寧ろ前より大切だと思ってる…し……だから、さ…」
「…だから…?」
「……ガッカリさせたくなくて。僕こういうの初めてだし…」


そう言いながらも、おなまえの上に覆い被さってくる。
久し振りに見た緊張した様子のテルを下から見上げて、鼓動が早まっていくのを感じた。


「…したいと思う?」


ゆっくり首の後ろに腕を回せば「好きならしたいの、普通だろ」と言われる。
いつかも交わした言葉にクスリと笑って「そうだね」と答えてから「私もだよ」と熱い唇に口付けた。


---


テルが脱がせやすいように少し背中を浮かせると、プツとホックが外されて締め付けから開放された胸が緩く広がる。
脇から手が自由になった胸を覆って、その指が先を弄ると鼻にかかった声が出て恥ずかしかった。
口元を手の甲で塞いで声を抑えると「聞きたい」とギラついたテルの目に見つめられる。


「っ…と、なりに聞こえる、よ…」
「…それはちょっと嫌だな」


外そうと掴まれかけた手が離れてホッとする。
「じゃあ気持ちいいかちゃんと教えてね」とニヤリと笑われて、どっちに転んでも恥ずかしいことに代わりはないなとおなまえは諦めてコクリと頷いた。

丁寧な手付きでどんどん服が脱がされて、ショーツが爪先から抜かれる。
その先を期待するだけで蜜を溢れさせるそこにおなまえはまた頬を染めた。


「…おなまえは自分ですることある?」


秘部に指を這わせ、溝に滑り込ませながらテルが尋ねる。
それにおなまえが頷くと、「どうするの?」と入口を指でなぞりながら聞いてくる。
その手に自分の手を重ねて、おなまえは秘芯に誘う。


「ん…、ココ…こう、回す感じ…っぁ!」
「こう?」
「ぅん…、!っ…はぁ…、気持ちいいっ」


重なったおなまえの手の通りに指を動かせば、ひくりと入口がヒクついて水音が増した。
本当に感じているんだと安堵する気持ちが少しと、気持ちよさそうに蕩けた顔に変化するのと荒くなる息に興奮が増す。
もっと快感を与えたくて指先に力を少し込めると、擦りつけられる強さが変わっておなまえが高く声を上げた。
すぐに唇を噛んで抑えようとするので、それをキスで塞ぐ。


「…ん、傷できるかもだから、噛まないで」
「は…っ、ぅ……もっと…してっ」


おなまえからも唇を寄せられてそれに答える。
舌を合わせながら指先の動きを早めれば、唇の隙間からおなまえのくぐもった声が洩れて背が反らされる。
内腿が震えると両足が閉じられて手の動きを阻まれた。


「ぁ…っ、テル…」
「なに…?」
「私の、バッグとって…」


言われてラグの上のバッグを浮かせると、おなまえがその中からゴムを取り出した。
包装を破ってテルのに被せると、根元までしっかり抑えながら着けていく。
待ち切れないと言いたげにその間も舌を絡め合って、着け終わるとおなまえが腰をすり寄せる。


「この溝のとこ…テルの先で、こう…擦る感じに、すると…少し、窪んでる感じ…あるのわかる…?」
「ん……ここ?」


おなまえが足を大きく開いてテルを導くと、テルの先が入口に触れて頷いた。
力を抜くようおなまえは息を吐いて言う。


「そのまま、押し込む感じで…、腰…掴んでいいから…っ!」


ぐっと腰に力を込めれば、その分おなまえの中に自身が埋まっていく。
熱に包まれていく感覚に、テルは眉を寄せた。
おなまえの腰を引き寄せ根元まで沈めれば、充足感に溜息を吐く。


「…なか、熱い…」
「…テルのも、熱いよ」


額同士を合わせれば、おなまえが顎を上げてキスをせがむ。
それに答えると、おなまえの中が緩くうねる。
耐え切れずに動き出せば、甘い声が吐息に混じった。
最初はおなまえが辛くないように気をつけながら控えめに揺らしていた腰も、抽挿を繰り返す内に本能が勝って激しくなっていく。
互いに声を殺しながら荒く息を吐きあって、獣みたいだとおなまえは強まる快感の中思った。


「ひ、う…っ、ん……」


テルのモノが奥を抉るとじわりと痺れが走る。
声が出そうになって、噛み付くようにテルの唇に吸い付くと抱き込まれて一層律動が深くなる。
突かれる度に頭がぼんやりしてきて、もう限界だと肩に回していた手に力を込めるがテルは休めることなくおなまえを追い詰める。
そのまま何度か腰を打ち付ければ、泣き声に近い声が唇から洩れ膝が震えた。
同時に締まる膣にテルも息を詰めて吐精する。
中の痙攣に合わせて絞り出される感覚に、テルは長く息を吐くとおなまえの額に張り付いた前髪を横に流す。


「ごめん、無理させて…」
「…ううん…私、今幸せだし」


汗でひんやりしているテルの背中に腕を回す。
「こうしてるの気持ちいい」と首筋に額を埋めれば、テルもおなまえを抱き返した。



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02.22/年上彼女との初体験



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