▼どちらが年上か

※ちょい下ネタ注意



「…すごい顔してるね、おなまえちゃん」
「……律ぅ〜…」


"無理。もう全部無理"。
そんな一方的な訴えを電話で寄越してきたおなまえを見舞いにやって来た律は、青白い顔色のおなまえを見て心配気に眉を寄せた。

今朝あまりの痛さに学校を休むと言ったおなまえを他所に、母親は「ハイハイ」と軽く受け流して仕事に行った。
食欲もなくひたすら眠い。
しかし痛みで眠れない。
時たま襲ってくる不快感に顔を顰め、トイレに籠城しようかとも思った。
しかしそれは流石に女子高生としてどうなのだろうかと理性が働いておなまえは何とか今日一日をやり過ごそうとしている最中だ。

全く効果のない市販の痛み止めに苛立ちが募って影山家に電話をしたのは半ば八つ当たりのようなものだったが、こうしてやって来てくれた律を前にすると張り詰めていた糸が緩む思いにおなまえは彼に抱き着き擦り寄る。


「具合悪そうだね、何か食べた?薬とか飲んだ?」
「…お腹痛い……何も食べたくない…薬効かない…血が止まらないぃ〜〜…」
「血……ああ、辛いね」


一瞬ギョッとしておなまえの肩を抱く手に力が入ったが、すぐに意味を理解して律は腰を温めるように撫で摩る。


「今日学校休んだんだね。そんなに痛いなんて、大変なんだね女の子って」
「人に寄りけりと思うけど…私は年に一、二回めっちゃ痛いのが来るし、中には全然軽い人もいるよ…」


「羨ましいよぉお〜」と泣きそうな顔で縋るおなまえに律は「どっちが年上かわからないな」と苦笑した。
しかし毎回でないからこそやり逃し様もないのだろうと、少しでも彼女が楽になればと臍の周囲を服の上から撫でる。


「…こうしてる間だけでも、楽になったらいいんだけど……ごめんねおなまえちゃん、あんまり力になれなくて」
「律……その気持ちだけで十分だよおぉ…ありがとうぅ〜好きぃ!」
「…大袈裟だよ」


反射的に照れそうになる気持ちを抑えようと、誤魔化すように律はフイと視線だけを横に逸らした。
そんな体力もないのに無理をしてオーバーに反応するおなまえを窘めると、「無理しないで休んで」と部屋まで導く。
素直に手を引かれるまま律の後をついていくが、ベッドに腰掛けると「横になるの嫌だ…」とおなまえはぼやいた。


「タンポンにしようかな…でも痛そうだし怖いんだよね」
「…なにそれ?」
「んとね…中にいれる生理用品。これくらいでこれくらいの。…ちゃんと着いてたらモレなくて楽なんだって」
「……へえ…」


首を傾げる律に指で大きさを示してみせると、律はそれをしげしげと眺めて黙った。
思ったことがあるが言わないでおこう、とでも言いたげな態度におなまえは気付く。


「…言いたいことあるなら言いなよ…」
「おなまえちゃんが怖いんなら別に無理してそれにしなくてもいいんじゃないかなって思っただけだよ」
「……本当にそれだけ?」


淀みない調子で一息に言われて、それがまた怪しいとおなまえの勘が告げた。
律は表情を変えないまま数回瞬きをして、少し間を置く。


「……もっと大きいのだって入ったんだから大丈夫だよ」
「何が大丈夫?」
「だから怖くないんじゃない?って話」
「ん?…………バ…ッ、人が真面目に話してるのに!」
「痛っ!僕だってふざけて言ったんじゃない!ただの事実なのに!」


律の言葉の意味を理解した途端、今まで血の気が失せていたのが嘘のように真っ赤な顔をしておなまえが叩いてきた。
それを律は腕で庇いながら言い返す。


「セクハラですー!」
「それなら僕だってセクハラ受けましたー」
「男の子でしょ!?少しくらい多めに見なさいよ!」
「ハイ。それもだから」
「むがぁーーっ!」


棒読みで言い返し続けているととうとうおなまえが対抗できずに奇声を上げた後項垂れた。


「私…病人なのに……優しくしてよ…労わってよぉ」
「……」

--労わってたつもりだったんだけど…

「もお…律なんてきらぁい〜…」
「ちょっと」


弱々しい声で言うおなまえに反して、律の凛とした声が部屋に通った。


「それはダメ。撤回して」
「……優しくしてくれなきゃ撤回しない」
「…優しくって…」


むすくれるおなまえに困惑していると、おなまえが「ん!」と両手を広げてみせる。


「いっぱい甘やかして!」


「そしたら私、撤回どころか愛しちゃうかも」と真面目な表情で言う彼女に、律はクスリと笑った。




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04.05/生理痛が重いJK彼女を看病する



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