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「#甘々」のBL小説を読む
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朝、目覚ましが鳴る5分前に、さっぱりと目が覚めた。こんなことは滅多にない。俺は寝つきも寝起きも悪いから。カーテンを開けたら、外はすっきりとした晴れ空で、目覚めの良さにやや高揚していた気分がもっとよくなった。
顔を洗って、歯磨きをして、寝癖を直すために鏡にちらりと視線をやる。俺は、鏡が嫌いだ。自分の姿など見たくない。だが、人の目に映る自分がおかしくて笑われるのが嫌で、結局は鏡を気にしてしまう。

その鏡に映された今朝の自分は、ついさっきまで眠っていたとは思えないほどすっきりした顔をして、髪も乾かしたばかりのようにすんなり大人しくしていた。腰のない、妙に柔らかな俺の髪は寝癖がつきやすく、いつも必ずどこかが跳ねていたりするのに。ならば後ろは、と首を捻って確かめるが、やはりすんなりと流れに沿っているように見えた。
なんだ、すごいぞ、と鏡の中の俺が目を瞬く。陰気だなあといつも思う瞳が、高揚のせいかきらきらしている。そうすると、俺の顔も幾分かはマシなのではないかと思えてくる。

俺が自分にプラスの評価を与えられる日など、滅多にない。それだけでも、今日はいい日だと感じた。うきうきする。ぺたっとする髪を、ワックスで少しだけ整え、いつもの朝には似つかわしくない軽い足取りで部屋に戻る。
寝間着を脱ぎ、ワイシャツの釦を止め、スラックスを履いてベルトを締める。それから青色のネクタイを結ぶ。きっちり綺麗に結べたので、また嬉しくなる。ブレザーを羽織って、時計を見ると、いつもより少し早い時間だった。

眠気に負けてしまうので、俺が食堂に行くのはだいたい混み始めてしまっている時間帯になるだが、今出れば空いた食堂でゆっくりとリラックスして朝食を食べられる。よし、と玄関に向かって、春休み中に買い換えた、まだ綺麗な靴を履く。どの部屋にもある、ドア前の壁に設置された姿見でおかしなところがないかチェックしてから、俺は気分よく部屋を出た。
暗い赤のカーペットの敷かれた埃一つない廊下を歩き出す。エレベーターのボタンを押して待っていると、京、と呼び掛けられた。ぱっと振り返った俺の顔に思わず笑みが広がる。


「会長、おはようございます」
「おー、おはよ。今日、早いな」

笑った俺に、少し驚いた会長は、俺の隣に並ぶと、機嫌いいな? と言いながらぽんぽんと頭を撫でた。会長の慧眼には、俺の些細な機嫌もお見通しらしい。よく分かるなあと感心した。頷くと、会長は優しい顔をした。

「何かいいことあったか?」
そのタイミングで到着したエレベーターがぽん、と可愛い音を立てて扉を開く。一緒に乗り込んで、俺が押すより早く会長が階数ボタンを押した。

誰が見てもとても格好いいと言うであろう端麗な顔が、話を促すように俺を見下ろす。どこをじっくりと見詰めても会長は格好よくて、美人は三日で慣れるだとか飽きるだとか言われているが、俺は未だに会長のこの格好良さに慣れない。
いつまでも見つめていられる。それは、他の生徒会のメンバーについても同じなのだけれど。なぜあんなに顔面偏差値が高い人たちが集まったのか不思議である。








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