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俺は、気心がしれた人たちが相手でも、どんなタイミングで言葉を発していいのか分からない。まごついてしまって、そんな自分に呆れて情けなくなる。住田はすごい。
「するっつーか、首席なら、なってくれたらいろいろ役立つんじゃねえかと思って」
「あの顔だから、神永が1年の時みたいになってそうだしねえ。じろじろ見られない空間ほしくて、入ってくれるかも」
あはは、と軽やかな笑い声。俺は楽しそうにする副会長を見ながら、入学したばかりの会長はどんな風だったのだろうと思いを巡らせた。
俺は入学して暫く経った頃に、まだ会長ではなく、書記の神永先輩だった会長に誘われて生徒会に入った。
初めは話しかけてくれた人はいたのだが、まともに言葉を返せなくて、そのうち誰にも話しかけられなくなって、友達なんているわけもなかった俺は、「生徒会楽しいぞ」と笑って手を引っ張ってくれた神永先輩のおかげで、この学校のなかに会話をする人たちが出来たのだ。
もしかして、会長もそんなだったのかなと思う。いや、もしそうだとしても、もちろん俺とは理由が違って、格好よすぎて普通の友達が出来なかったとかだろうけれど。
「―で、俺は京にそれを頼みたいわけよ」
背凭れにあごを乗っけたまま、ぼーと意識を飛ばしていた俺は、名前を呼ばれてびくっとなった。いつの間にか、話はずっと先に進んでいたらしい。会長が俺に何かを頼みたい、ようだが、話を聞いていなかったので当然なんのことか分からない。
忙しく瞬きをしながら彼を見るとまっすぐにこちらを見て笑いかけられた。嫌な予感がして、ひえ、となった。
会長は、俺に入学式の司会やれと言ったときもこういう顔をしたのだ。
「や、嫌です」
「お前、内容聞いてなかったのに嫌ですとか言うなって」
聞いていなかったのがばれている。しかし、初めから会話に加わっていたわけではなかったからか、特段叱るような口調でもない。
「京ちゃん、会長ねぇ、京ちゃんにイケメンくんの勧誘いってほしいんだって!」
ぎょっとして息を呑む。呑気な住田を見て、会長を見る。嘘ですよね、と俺の目が訴えていることには気付いているだろうに、彼はそうそう、と軽い調子で住田の言葉を肯定した。
「むりです、まじで……」
「だーいじょうぶだって。ちょっと様子見て、生徒会入らねえ? って声かけるだけ。俺が京を誘ったときみたいにさ」
言われ、先程も思い出していた出来事を反芻する。
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