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「おい、俺だけ除外か? 寂しいだろうが」
わざとむっとした様子で言うので、俺は住田が離れるとすぐに会長の前に行ってその手を取った。お? と目を瞬いた会長が繋いだ手を見下ろす。

「会長は味噌汁の具は、何が好きですか」
「さっきから何なんだ、その質問? 俺は油揚げが好きだけど……」
「俺も好き」
「あ、俺も好きだよ」
「俺も好きでーす!」

俺に続いて、副会長と住田も同意をした。とても下らないことなのだが、嬉しいし楽しいなと思う。

「ジャガイモの味噌汁は?」
「好きだよ」
「会長も仲良し」

見上げて、手をゆらゆら揺らすと会長は合点がいったというように破顔した。

「仲良し生徒会じゃん。つーかみんな、味噌汁好きだな」
「味噌汁、美味しいもんね。さ、話してたら味噌汁が食べたくて仕方なくなってきたよ。行こう行こう」
「いえーい、仲良し生徒会ー」

歩き出すと、また住田がぴょいぴょい跳ねた。元気だ。会長は俺をわしゃわしゃ撫でてから腕を回して俺の肩を抱いた。
仲良し、仲良しと愉快げに繰り返す。会長は、俺と同じくらい生徒会のメンバーが好きだと思う。


◇◆◇

「そういえば、白峰。入学式でお前が言ってた、新入生な」

入学式から二週間ほど経った、ある日。放課後、いつものように生徒会室での仕事を終えた俺は、住田が淹れてくれたカフェオレを飲みながらソファーで漫画を読んでいた。会長に借りたスポーツ系の少年漫画で、俺が読み終えたら副会長に流すことになっている。
会長は漫画好きで、みんなで部屋に遊びに行ったとき、本棚にはたくさん漫画があった。参考書も普通の本もほとんどない彼の本棚と学年首席の成績のよさについて少し考えていると、ふいに会長が口を開いた。

低すぎないのに男らしく、声まで格好いいのだから凄いものだ。白峰というのは副会長の苗字だ。会長は、神永という。

「ん? あー、あのイケメン?」
「そう、それ。そいつ、入試トップだったらしい」
「あれ、首席入学だったら新入生代表挨拶をするんじゃなかったっけ? 別の子がやってたでしょう」
「外部生だからじゃないか。春休み中の打ち合わせとかもあっただろうし、内部生の方が、そういうのはやりやすいだろ」
「ああ、それもそうだね。それで、あの子がどうかしたの。ただ思い出したってだけ?」
「庶務の席が、空いてんなあと思って」

二人の会話を聞くともなしに聞いていた俺は、会長のその言葉に、はたりと顔を上げた。もぞもぞと動いて、背凭れ越しに会長の顔を見る。
会長の席は、ドアを開けたとき真っ先に目にはいる窓に面した真正面なので、振り返るとすぐに目が合ってん? と首を傾げられた。

「あっ、イケメンくんを役員にするってことー?」

住田が目を輝かせて話に加わった。住田はいつも、話に入るのが上手だ。するんと入って、受け入れられる。





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