×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
▼2

「今日は、目覚ましが鳴る前に目が覚めて、寝癖がついてなくて、ネクタイが綺麗に結べたんです」

うきうきした気持ちで言ったが、途中で、他の人からしたら下らないことかもしれないということに、はたと気がついた。でも、俺にとっては嬉しいことだったのだ。

「そりゃ、いい日だ。機嫌もよくなるな」
会長はそんなことで? とは言わなかったし、思ってもいないように見えた。同意してくれたことが嬉しくて、会長を見上げる。くしゃっと笑った会長は俺の顔を両手で挟んだ。もにもにと頬をもまれる。

「かーわいいなあ、京は! このやろー!」
「うぅ」

手首を掴んで抵抗したところで、また可愛い音が鳴って一階に到着した。手を離した会長は、代わりに俺の背中をぽんと押し、エレベーターから降りるのを促した。
並んで降りて、見渡したロビーには、全然人がいない。早い時間は、この静けさがいい。

「そういえば、福井の件な」
「? はい」
「顧問に報告して、必要な書類とか揃えてもらってっから。月曜には出来上がるし、福井には、週明けたら、生徒会室来てもらいてえんだけど、京、福井と連絡とれるか?」
「、はい。福井くんに、言われて、連絡先交換したから」
「んじゃ、京からそれ、伝えといてもらえるか? で、生徒会室の場所、わかんねえだろうから、月曜は迎えに行ってやって」
「―は、はい。迎えに行きます」

福井くんとは、いつから加入するのかという話などを前以てしていたから、連絡をとるのは初めてではない。返事ではなく、自分からするのは緊張するが、知らない人に直接会って話すより何倍もましだ。そう思ってから、はっとする。
やはり会長が、勧誘に行くことを渋った俺に言ってくれたことは、正しかったのだ。勧誘をこなしたことによって、まださほど親しくない相手に能動的に連絡をとることの難易度が以前より格段に下がっている。会長はすごい。

いつもなら「やです」と答えるような要求だったのに、俺が頷いたから、会長はちょっとだけ驚いたようだった。偉いなあ京、と心底そう思っている口調で褒められて、頭を撫でられる。会長のお陰であって、偉いのは俺ではないのだが、会長に褒められるのはとても嬉しい。更に、今日がいい日になった。



◇◆◇

「あっ、京ちゃん! 生徒会室、一緒にいこー?」

時は流れ、放課後。終礼が終わって、教室を出ると住田がにこにこしながら廊下で俺を待っていた。頷くと、嬉しげな顔をするから、住田には愛嬌というものがたっぷり備わっているといつも思う。
住田は、時々こうやって、気紛れに俺を待つ。生徒会の誰かと一緒に生徒の目がある場所を歩くときはいつも、普段俺が被害妄想的に向けられていると錯覚している視線が、錯覚ではなくなるから、少し怖い。
けれど、3人は役員だけで居るときと変わらない様子で話しかけてくれるので気が紛れて、結局は一人で居るときよりも周りを気にせずにいられる。そういう意味も含め、俺は住田がこうして一緒に行こうと笑いかけてくれるのが嬉しい。

「ね、京ちゃん。福井くんがメンバーになんの、楽しみだね。いい子かな?」
「俺は、いい子だと思った」
「おっ、まじで? 京ちゃんがそう言うなら、期待できるな」

俺が言うなら、といわれると、途端に自信がなくなるが、福井くんはいい子だ。そのことに代わりはないから、期待してていいよと請け合う。住田と福井くんなら、すぐに仲良くなれるのではないだろうか。








back