×
「#切ない」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
▼腐男子恩田君はいつでもハッピー


仲のいい姉からの影響で俺が腐男子という属性を有するようになったのは中等部1年の頃だ。
同時に小学生だった俺が私立の男子校などというものの受験をすることになったのも彼女の画策であったことが判明したが、それはいい。むしろ良い。

俺は着々と腐道を突き進み、高校2年の今、地雷ゼロマイナー万歳逆CPだろうがリバだろうがおっさん受けだろうがなんでも来い、歓迎しよう。という超雑食腐男子になっていた。
そんな俺の最近の楽しみは入学してきた1年生の有望株をひっそり物色することである。もちろん、俺の目を癒し妄想を荒ぶらせてくれるBL的意味での有望株だ。

一押しは数が少ないせいで同じ1年生の中でも目立ちがちな外部生の内の2名! 名前は江角晴貴くんと岩見明志くん。どちらも外部生ということを抜きにしても顔の良さで目立つ。江角くんに至っては、俺に言わせれば1年の中でトップレベルの格好良さだと思う。
しかも、この二人元々仲良しで一緒に受験したらしい。もう、そんなの滾るしかないだろう。妄想するしかないだろう。
江角くんは冷たい感じで綺麗系の超イケメン、岩見くんは少し女顔でちゃらそうなところがそそるイケメン。


俺の中で江角くん×岩見くんの図式が成り立ったのは、ある日の食堂でのことだ。
俺は偶然近くの席に座った二人に興奮をおさえ平然とした表情で食事をしていた。

彼らはずいぶん仲良しらしく俺は漏れ聞こえた(盗み聞きだなんてそんな!)会話で二人はいつも自炊で岩見くんが料理を担当しているらしいことを知った。

そうか! 愛妻料理か! と心の中はガッツポーズと歓声でいっぱい。そして決定的だったのが、それまで見かける度にクールな表情しか見たことのなかった江角くんが、岩見くんの言葉で笑ったことだ。
ふわっと、ふわっと! 可愛い笑顔を! 岩見くんの言葉で! ああ! なるほど!
江角くんは岩見くんにしか関心がなくて周りには冷たいけれど岩見くんにはとても優しいんですね!? そうでしょ! と荒ぶりながら持ち上げたグラスの水は興奮でぐらぐら揺れていた。

そんなわけで俺は最近ずっと彼らがらぶらぶだという妄想で潤っているのだ。しかし現実と妄想の境を見失うようなばかな真似はしない。
もちろん、彼らの間にあるのは恋愛感情でないだろうということはわかっている。付き合っていると勘違いしている奴らが多いようだが、俺としてはそんな勘違いをするなんてまだまだね、と言いたいところだ。修行が足りていない。

あの二人がお互いを見る目にあるのは紛れもなく優しく柔らかい友愛だ。しかし妄想をする際にはそんなことには目を瞑る。

俺の頭の中で二人はらぶらぶなのだ。とても可愛いカップルなのだ。


勝手に主食してごめんな、と彼らがいそうな方向に向かって懺悔しておく。



「恩田、なに拝んでんの?」
「いや、懺悔」
「え?」
「気にするな」


カレーを食べながら不思議そうな顔をする友人に手のひらを突きだして言う。俺は隠れ腐男子なので、懺悔の中身は友人にでも話せないのだ。
普段の俺はちょいモテ男子である。隠れ腐男子としての擬態は完璧だと思っている。



「そういえばこの間、風紀委員長が1年の江角だっけ? その子と飯食ってたんだってさ」

「おいこら待てこら詳しく話せこら」
「えっ、めっちゃ食いつくね」
「よいではないか! 話したまえよ!」


擬態が完璧だと言ったな。あれは嘘だ。こういう事態があると腐臭が漏れ出るのも致し方あるめえよ。


「恩田、もしかしてどっちか好きなん?」
「いや、別に。でも江角くん可愛いよね」
「可愛いか!? イケメンなのは認めるけど、俺、ちょっと怖えよ。めっちゃキツそうじゃん」


怖いだと!? 江角くんは笑顔の可愛いクールイケメンぞ!


「まあまあそれは置いといてさっきの話を詳しく」
「いや、俺もよくは知らないんだけどさぁー」


そう前置きして友人は話す。曰く、ゴールデンウィークの最中のとある日に、風紀委員長の鷹野先輩がふらりと江角くんを伴って現れ、一緒に食事をしていたのだとか。
公正で冷静、生徒たちからの信頼も厚い委員長が楽しそうに話していたとひそかに噂になっていたらしい。

もっと早く俺に教えろよ!!! ああ! どこに接点があったんだこの二人? ノーマークだった!
江角くんは少しやんちゃそうな、というかヤンキーかな? という雰囲気があるし、もしかして風紀のお世話になったことでもあるのだろうか。いや、それならば鷹野先輩と親しいというのは不思議な感じだ。


ああ、どういうことだ。

今まで江角くんの近くにいるのは岩見くんだけだったから考えたこともなかったが、ちょっといいんじゃないか?
鷹野先輩と江角くんが並び立つ姿を想像してみる。うぅ、絵になる! 二人とも身長が高いが、どちらの方が大きいのだろう。

いや、待て、その前にこの二人の組み合わせだとどっちが右でどっちが左だ!

「恩田? おーい、どうした」

思わずゲンドウポーズで目を閉じた俺に友人が声をかけているが反応はしない。俺は忙しいのだ。

鷹野先輩はまさしく美形だ。男前ともとれるが美人でもある。江角くんは鋭利なイケメン。ど、どっちでもイケる……!
カッと目を見開いた俺に顔を覗きこんでいたらしい友人が「うわっ」と声を上げた。

「俺も……! 見たかった……!!!」

二人はどんな会話をしたのだろう。江角くんは鷹野先輩にも笑いかけたのだろうか。鷹野先輩はどんな風に彼と言葉を交わすのだろう。
二人はどこで知り合って、今どれほどの親密さなのだろう。

溢れに溢れる知りたい欲求に押し出されるように、思わず漏れてしまった本音は魂を絞るような本気度でもって響いたのだった。



back