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▼中三の2人と冬のとある日

「まっしろ」

岩見の唇から、声と共にふわりと白い息が漏れた。頬を真っ赤にして空を見上げるその仕草につられて俺も視線を上げた。
どこかも分からない高いところから降ってくる白い牡丹雪。頬に当たったと思ったら、すぐに冷たい滴となって伝っていく。顔を拭って岩見を見た。

「おい、汚いから口に入れんなよ」

子供がよくそうするようにあー、と大きく開けた口に雪を招き入れようとしている。呆れて声をかけると、口を閉じた岩見はこちらを見て随分とあどけなく笑った。
鼻の頭も赤くなっている。学ランにマフラーを巻いただけの格好に見ているこっちが寒気を感じる。俺はコートとマフラー、手袋に加えて制服の下にも厚手の服を着こんでいるというのに。

吹き抜けた風は身を切るような、という表現がぴったりの冷たさだ。俺はコートのポケットに両手を突っ込んで肩を縮めた。


「……早く帰るぞ、寒い―」
「エスは寒がりだなあ。子供は風の子だぞー」
「俺はこたつの子だ」
「なにそれ」

笑う岩見を無視して温かなこたつに寝そべって昼寝をする想像をした。今すぐ帰りたくなった。よし、帰ろう。
二人とも傘を持ってきていなかったから余計に寒いのだ。ひらひらと絶え間なく舞う雪で視界が悪い。

細めた視界のすみに黒い制服が映る。岩見が隣に並んだのだと分かつているのでわざわざ顔を巡らせてそちらを見ることはしない。
顔を動かすと寒い。


「こたつは好きなのに、ストーブとか暖房は嫌いなんでしょ?」
「あったかい空気って吸い込んだら不快じゃね?」
「よくわかんねえ」

吸い込む空気に限っては冷たい方がいい。それが肌に触れるとなると話は別なのだけれど。

「エス、見てよ。超赤い」
「霜焼けになるぞ」

前方に突きだしてよく見えるようにした岩見の両手は、指先が赤に染まっていた。見ているだけで寒いし痛々しい。
なんで手袋をしないんだと顔をしかめて片手を掴む。それから自分の右手の手袋を外した。


「エス?」
「片方貸してやる。手袋くらいしてこい」

外気に触れて一気に肌が鋭敏になった手をポケットの中で握りこみながら言う。
岩見は受け取った手袋を見つめ暫しきょとんとした間抜けな顔をさらしてからへらりと笑った。

ありがとうと言う弾んだ声には頷きで答える。


「エス、今日俺んちおいでよ。鍋だよー」
「行く。泊まっていい?」
「いいに決まってる」

岩見の家は居心地がよくて好きだ。弟の高志も懐いていて可愛し、母親はまるで自分の息子のように遠慮なく俺を扱ってくれる。
何より2人とも笑った顔が岩見に似ていて、あの家にいると俺の表情筋も釣られて普段よりずっと柔らかくなるのだ。


「何鍋ですか」
「キムチ鍋ですね」
「げ」
「げって何だい、失礼な」

「辛いのやだ」
「へはは、タカもいるんだしそんな辛くしないよー! 心配するでない」


それなら尚更早く帰ろうと岩見を促して足を速める。
帰ったら電気がついていて温かい部屋と人と囲む食事を思うと少しだけ寒さが和らいだ気がした。





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