朝もやが、私を包む。
夜明けは近いみたいだけど。
辺りはまだ、薄暗い。
海の様子すら見えず。
ただ冷たい風を楽しむだけ。
でも、早すぎる目覚めに。
まだついてこない躰には、丁度いい。
ホントは眠りなおしたいけど。
頭が完全に覚醒しているから、多分ムリ。
「ふわぁ…」
大きな欠伸が一つ、出た。
《彼は誰[かわたれ]》
キィ、バタン。
ドアが開いて、閉じて。
足音が聞こえた。
船縁に腕をもたれてさせていた私は、躰を反転させ、甲板を振り返る。
薄闇と朝もやに浮かび上がる影。
あ、ルフィだ。
ルフィも私に気付いたらしく、立ち止まった。
「誰かいんのか?」
問いかけに片手をひらひら振って、アピール。
「サンジか?」
身長とか、全然違うでしょ。
シルエットがぼやけてるから、わかんないのかな?
ルフィに向かって、首を大きく横に振ってみせる。
ルフィはこっちを指差し(ちゃんと見えないけど、そこは影の感じで)、
「わかった!ウソップだろ?」
鼻、鼻が違うから。
顔の前あたりで、ぶんぶん手を振って見せる。
否定のジェスチャー。
ルフィは、首を傾げ、
「ゾロかー?」
こんな時間にゾロが起きてたら、奇跡だよね!
両手で大きなバッテン。
ルフィは腕組みし。
そして首、というか、腰から躰を60度ほど傾けた。
「…フランキー?」
うーん、スーパー!
て、そんなわけが!!
リーゼントもなければ、あんなにガタイも良くないし。
私は、がっくりとうなだれて見せた。
ルフィは頬の辺りをぽりぽりかきながら、
「チョッパーか?でも、ツノがねェな」
「あるわけないでしょ!」
我慢できず、私は突っ込んだ。
ルフィがぽん、と得心したように手を叩いて、近付いてくる。
「なんだ、真鶸か」
「さっきからなによ!暗いし、間違うのはしょうがないけど、男ばっかり!!」
ルフィの影がだんだんはっきりしてくる。
笑顔だ、というのが判るくらい、ルフィが近付いて
「ナミとロビンじゃねェってのは、すぐわかったんだ」
そのルフィの視線は。
私の胸元に。
静かなかわたれ時に。
私の平手うちの音が、高らかに響いた。
'07.07.14
Written by Moco
(宮叉 乃子)