今までは別にひとりでも平気だった。
ひとりで行動してきたし、何でもひとりで出来ると思ってた。
なのにいつからだろう。
ワゴンであいつらと一緒にいるようになってからはひとりでいるより楽しくて、今では俺の居場所にもなっていたんだ。

「ドータチン!」
「ドタチンて言うな!」
狩沢はいつも俺のことをドタチンと呼ぶ。
そう呼ぶなといつも言っても変わらずそう呼ぶし、今ではもう良いか、とも思っている。
前は何とも思ってなかったんだ、狩沢は俺のことを純粋に慕ってくれる妹分みたいなもんで…平気で男の中に混ざっているあいつを女とは見ていなかった。

本当に何も気付いていないのだろうか?
俺がお前のことを好きだってこと。
お前が特別で、気付いて欲しいとも、気付かないで欲しいとも思っていることを。

「ドタチンってさ、カッコイイよね!好きな女の子とかいないの?」
「…いきなり何だ」
好きな女にかっこいいと言われて嬉しくないわけがなく…冷静に返したつもりでいてもかなり動揺する。
「んー…ドタチンかっこいいのに何で彼女いないのかなーと思って?」
狩沢は、ちょっと考えるようなしぐさを見せた後こう言った。
…それはお前がいるからだ。
何の考えもなしに聞いているだろうお前にそう言ったら何かが変わるのだろうか?

「そう言うお前はどうして彼氏つくらないんだ?」
確かに普段はおかしな言動ばかりが際立つが、こいつだって見た目は悪くないはずだ。
顔だってスタイルだって他の女に引けをとらないと俺は思っている。
「ホラ、私は二次元移住希望者だからさ!三次元には興味ないかなー、みたいな?」
「本当に興味ないのか?」
「え?」
きょとんとした表情で聞き返してくる狩沢は、俺の思いの外真剣な目を見てちょっとたじろいだ様子を見せる。
「何、急にどうしたの?ドタチン」
「………何でもない。気にするな」
「変なドタチン」

二人で並んで歩きながら、少し離れた所にとまっているワゴンへ向かう。
みんなで一緒にいるようになってから、ひとりでいるよりみんなで一緒にいる方が幸せだってわかって…今更ひとりになるのは絶対ムリだから、ずっと一緒にいたいって思ったの。
でも、いつからかドタチンひとりが特別になってしまったことに自分でも驚いたし、今も悩んでる。
前まではゆまっちといるのが一番楽しかったのに、今はずっとドタチンのそばにいられたら良いのにって思うんだ。
…ねぇ、気付いてる?
私がドタチンのことを好きだってこと。

(これからも、ずっとこのまま一緒の時間を過ごせたらいいのに)






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