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悪魔は甘美な罠を張る - 6



それから俺は高校を辞め、通信制の高校に通うことになった。週に一度は学校へ足を運ぶが、それ以外は在宅学習。余った時間でバイトも始めた。
結局、俺は一体なにがしたかったんだろうな。と、余裕が生まれてからたまに思う。
恋をして、告白して、苛められて、守られて。そのすべてから逃げるようにして訪れた今は、限りなく平和だ。


「よー、堀田ぁ」


再び、瀧本が現れるまでは。


「お前辞めたんだってな。今はなんだっけ、つーしんせい? 通ってんだろ。ははは、しかもバイトまでしてちょー満喫してんじゃん」

「……」

「ん? なにその顔、おもれーな」


バイト先の居酒屋、ゴミ出し中の俺の前に現れた瀧本は、その両隣にいる女性の腰を淫らに撫でつけながら、また悪魔のような笑みを浮かべて小首を傾げる。


「あいつら、入院させちゃった」

「え?」

「殴ったら頭から血ぃ出てさぁ、本当弱いのに吠える口だけは達者だよなー」

「なんで、殴ったの」

「なんで? それこそなんで?」


カラカラ。もう聞くこともないと思った、独特な笑い声。


「自業自得じゃん」


だろ? 今度は逆方向に小首を傾げた瀧本の手がこちらに伸びる。それだけじゃない。瀧本の両隣にいた女性たちも俺に手を伸ばした。
赤い口紅で染まった唇が張りつく。キラキラと光る爪が俺の服の中へ滑り込む。シルバーアクセで飾った筋張った大きな手が、俺のそれを握った。
ゾッと、した。拭いきれない嫌悪感に思わず吐くと、嘔吐物をかけられた女性はくすくすと笑いながら、俺の口周りに舌を這わせる。逃げるように一歩引いてつまずいて、その場に尻もちをついても伸びる手の数は減らず、ついには服が破かれた。
まるで別の生き物のような動きで俺に触れ、すべてを暴こうとする白い手と、最早凶器としか思えない怒張が口の中を襲う。

戻らない俺を心配して来た店長がその場に訪れたとき、俺はもうそこから消えていた。




 


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