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ある王様の話 - 10



『ついに不登校ですかい? ……助けてやれずにごめんな』

「……ははっ、お人好しだなぁ、あいつ」


スマホが知らせていたのは受信メールだったらしい。それを開くと友人からのなんとも言えないメールの内容に、俺は思わず笑ってしまう。

王様に目をつけられてから、周りの行動は早かった。まず、俺の友人らは一斉に距離を取り、教師陣は俺を無き者として扱った。それは正しい。以前までの俺も同じように被害者を無視していた。だから、今さら誰かを責めることはしないし、言うつもりもない。
さすがに取り巻きたちからはミサキに見えないように蹴られてはいたが、意外なことに王様自身が俺に暴力を奮うことはなかった。うら若き思春期真っ盛りの男子高生に首輪をつけ、俺では永遠に手の届かない美女との性行為を見せつけることをなんというかは一先ず置いといて、ミサキが俺にすることと言えば、なぜか飴を寄こせの一点張りである。


「朝飯どーしよ……」


父さんが用意してくれた胃腸薬の隣にスマホを置き、冷蔵庫の中を漁ってみる。普段ならば真っ先に手を伸ばすだろうハムやウィンナーは正直お断りだ。もっと軽くてお腹に優しい食べ物がいいんだが……姉ちゃんのヨーグルト、食ったら怒られるよな?

――ピンポーン。

と、そんなとき、インターホンの音がリビンクに響く。なんとなく嫌な予感がして時計を見ると、時刻は九時四十五分。結構篭ってたな、俺。
どうせなにかのセールスだろうと、居留守をしてやる気満々で冷蔵庫を閉める。さすがに姉ちゃんのヨーグルトは怖かったので、結局パンにした。

ピリリ、とスマホが鳴く。袋から取り出した食パンを咥えた直後だった故か、驚く俺の振動で食パンの耳が千切れて落ちてしまった。最悪。だけど大丈夫、三秒ルール、三秒ルール。




 


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