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はーい! なんて元気な返事をする内山に続いてカウンターチェアに腰を下ろす。
目立たないように視線だけで店内を見回すが、青と紫のライトだけが光となった静かなバーでしかなかった。


「で、お前は?」

「トラちゃんって言うんだよ。朝日向小虎」

「朝日向……? おいおい、まさか玲央の弟とか?」

「すごーい! 仁さん大正解!」


思わずブッと吹き出しそうになる。
俺がことごとく面接に落ちる理由を真っ先に明かしやがった内山を睨むが、彼は気にするでもない笑みを仁とやら男に向けていた。
そっと男に視線を移せば、彼は品定めでもしているようなじっとりとしたそれを俺に向ける。


「ふーん……案外似てないもんだなぁ、兄弟ってのは」

「そうなんだよねー。トラちゃんって玲央さんと全然似てないの。あははっ! おっかしー!」


内山、とりあえずお前のテンションが高いことは分かった。分かったからとりあえずデコピンさせてくれ。一発でいいから。


「ま、そんなんどうでもいいけどさ、バイトしたことあんの? えーと、小虎くん?」

「えっ!? あ、いやっ、ない……です」

「そうなんだ? まー、あの兄がバックとなりゃそりゃバイトすんのも難しいよな。ははっ」

「……すみません」

「ん? なんで君が謝んの? 悪いのは玲央のほうだろ」


男……仁さんはきょとんとした目を俺に向け、すぐに微笑む。
俺はといえば初めて受ける対応にただ目を丸くして、信じられないような瞳を仁さんに向けていた。
隣に座る内山が「見つめあってるぅー」とかほざくと、仁さんは内山にデコピンを繰り出す。

……なんか、兄弟みたいだな。


「じゃ、採用。なんかトラくんって人畜無害そうだし」

「え!?」


信じられない言葉に立ち上がる。しかし仁さんはその強面の姿からは想像できないような柔らかな笑みを浮かべ、


「ま、せいぜいしっかり働いてくれよ?」


なんて言ってくれたのだ。




 


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