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「小虎」

「……れお、」


恭しく俺を呼ぶ声に、つい目を伏せてしまいそうになった。自分は一体どこの純情乙女かと意固地になって、こちらを見る瞳を見つめ返す。とろとろに溶けだしそうな甘い瞳の奥に、どこか色が孕んでいることを認めてしまった瞬間、体の奥の奥が堪らずに疼いた。


「れ、お……」


頼りのない、弱々しい声はいつものことだ。なのに耳に届いた自分の声は、まるで……。
じりじりと近づいた距離が、ふいに縮んだ。消えた。唇が、触れた。触れてしまった。
早く突き放さなきゃ、冗談は止めろって笑わなきゃ、なにすんだって怒んなきゃ、それから、それから。


「……調子のんぞ、馬鹿トラ」


しかし俺が拒む前に軽く触れただけの唇は離れ、そこからはよく分からない言葉が飛び出してきた。ぽかんとする俺を至近距離で見つめていた玲央は少しだけ顔を歪め、ため息をつく。


「寂しかった、よ?」


そんな姿に思わず呟くと、上目がちにこちらを見る獣と目が合った。


「正直、俺一人だったら玲央に寂しいって言ってたと思う。けど、豹牙先輩たちがいたし、志狼も帰って来てくれたし、それに司さんにムカついたりして、それどころじゃなかったかも」

「……色々と聞き捨てなんねぇな?」

「あはは、でも、うん……やっぱり、玲央とこうしてんのが一番安心する。俺も充電、できたかも」

「は? 俺はまだ足んねー」


そもそも充電ってなんだ。どこのバカップルだ。つーか俺らは兄弟だろうが。
なんて冷静な突っ込みは飲み込み、正面から俺を抱きしめる玲央に身を委ねる。これまで溜めこんでいた負の感情が消えていくような気がして、このままでいたくなる。
でも、それはまだ早いのだ。


「……とりあえず、事情は分かった。でも玲央が俺の前に現れたってことも、MV撮り終えたってことも、さっき終わりにするって言ってたことも、それはつまり、一先ず安心してもいいってことだよね?」

「あぁ、もう終わらせる」

「そっか……うん、分かった。とりあえず、納得しとく」


納得だけは、しておく。念を込めて二度言う俺に、玲央がくすりと微笑み首筋を軽く噛む。




 


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