月曜日、俺はお粥目当てで来た不良たちにたくさんのおかずを提供した。
みんな美味しい美味しいと喜んでくれたが、その笑顔にちゃんと返せていたか分からない。
おかず、お粥、笑顔、モヤモヤ。嬉しいはずなのに、上手く笑えないもどかしさ。
そんな俺に雄樹は気づいていたようだが、平然とする俺に深く突っ込むことはせず、いつものようにアホ面をさらしてくれる優しさに感謝した。
放課後、いつものようにカシストに訪れると、仁さんが難しい顔をしながら電卓を叩いていた。俺たちに気づくなりテーブルに散らばった書類を片付けていたが、そんな姿を見てますます胸のモヤモヤが増した気がした。
「仁さん、ちょっといいですか」
「あ? どーした?」
店内のモップ掛けを終え、グラスを磨く仁さんに声をかける。
「あの……上手く、まとめられなくて、変なこと言うかもしれないんですけど」
「おう、ゆっくりでいいから言ってみ?」
磨いていたグラスを置き、こちらに体を向ける仁さんを見上げると、彼は穏やかな瞳で俺を見つめていた。
その姿に思わず口を開くが、空気だけ抜けていき、言葉が出ない。一度俯き、強く強く目蓋を閉じ、思いっきり顔を上げて目を開けた。
「俺! モデルの現場にお邪魔したとき、すげー感じたんです! プロってすごいなー、みんな誇り持ってるんだなー、俺、場違いだなぁって……すげー、感じたんです」
「うん」
「でもそれ以上に、俺も頑張ろうって思って、お粥作り頑張ろうって思ったんです」
「うん」
「お、おこがましいとは思うんですけど、俺、ここやデスリカでたくさんの不良たちとか見て、そいつらが美味しい美味しいって食べてくれる姿を見て、少しでも癒せたらなーって思ってて。だからモデルの現場にお邪魔したとき、触発されたっていうか、もっと頑張んなきゃって思って、だからおかずのこと相談したんです、けど」
言いながら焦りを感じて手を握る。そんな俺を、仁さんは優しく微笑んで見つめていた。
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