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明らかに男の声が出ていた俺を横目で一度見たかと思うと、カメラマンはすぐ前を向きながら、いつのまにか購入していたコーヒーをあおった。


「恋、したことねぇだろ?」

「……はい」


返事をしないわけにもいかず、心持ち声を上げて答えると、カメラマンがブハッと噴き出した。な、なにごと!?


「あははっ……ふっ、くはっ、はははっ! ごほっ、あー、さっき言っただろ。今回の事情は知ってるよ。無理すんな」


肩を震わせて笑うカメラマンの言葉に、顔に熱が集まっていく。
恥ずかしさから顔を逸らして購入していたお茶を握りしめると、そんな俺のウィッグに彼が触れてきた。


「な、なんです、か……」

「お前は今、女だ」


不審に思いながら距離を取ろうとする俺のウィッグを軽く引っ張りながら、こちらにグンと近づいたカメラマンが一言、そう告げる。
あまりにも突拍子のない台詞に目を丸くしていると、彼は軽く笑いながら俺の頬に指を這わせた。


「胸の奥が高鳴って、普段ならできることもできなくなる。相手の顔を見ただけで心臓が早鐘を打って、触れられるとそこだけ異様に熱を持つ」

「……あ、の」

「相手に名前を呼ばれると、たったそれだけで舞い上がっちまう」


ゆっくりと近づいてくる男が俺の耳元でくすりと笑う。くすぐったさに身をよじった瞬間、背中の中心をそっと撫でられた。
爪先からゾクゾクとなにかが体中を巡ってくる。急に恥ずかしくなって男の胸を手で押すが、体は余計に密着した。


「最後には子宮が男を求めて、うずく」


その言葉に驚いて声を上げようとしたその瞬間、耳元で笑っていた男が俺の耳を軽くかじった。かじってきやがった。
自分の口から変な声が出た気もするが、今はそんなことよりこの変態を退かすことが先決だ!
もう一度、今度はありったけの力で男を押す。なのに、男はビクともしない。それどころか楽しそうに俺の首元に顔を埋めてきた。

へ、変態が……っ!




 


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