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「ごめんなさいね、西さん……あ、カメラマンの名前なんだけど、あの人、この業界でも厳しいことで有名だから」

「……いえ」


とある一室に連れられた俺は、違う衣装に着替えたあと、ミキちゃんさんに化粧を直してもらいながら匡子さんに返事をした。
鏡に映る俺の顔は、疲労でひどいことになっている。


「でも今日の撮影はコトちゃんだけ悪いってことではないですよ? モデルの子たち、とくに女の子。みーんな最初から不機嫌なんですもん。そりゃ西さんだって怒りますよ」

「……そうね、まさかここまでとは思わなかったわ……」


どういうことかと鏡越しに二人を見つめれば、二人とも苦笑しながら口を開いた。


「コトちゃんにも説明したけど、今回のパートナーの件はね、本当にプロ同士とは思えない争いがあったのよ」

「そのうえ陰険でエグーいことの連続です。一時期パートナー候補だった子は大怪我で当分お仕事お休みなんですから」

「……え?」


そんな、それほどまでに手に入れようと、みんながみんな躍起になっていたというのか?
たかが玲央と隆二さんの、写真でのパートナーの為だけに?

俺の考えていることが分かっているのか、匡子さんは少しだけ真剣な面持ちでこちらを見つめてくる。


「……ここにいる人間はみんなプロよ。それでご飯を食べてるの。でもね、そのプロ意識を簡単に壊しちゃうのが玲央なのよ」

「……玲央?」

「そう。カリスマ……という言葉でも足りないわ。玲央にはそれだけ人を惹きつける魅力がある」


腕を組み、どこか悪い顔をして口角を上げる匡子さんはゾッとするくらい綺麗だ。
そんな俺の頬を化粧筆で撫でるミキちゃんさんが苦笑した。


「性格は難ありですけどね」

「あらミキちゃん、玲央が聞いたら怒るわよ〜」


あはは。二人の明るい声に思わず笑みを浮かべたが、気持ちが晴れることはなかった。




 


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