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ある日の江藤家 - 1



朝、覚醒しきれない頭で恋人の寝顔を見るたび噛みしめる。あぁ、幸せだ――と。


「……ひょーが……?」

「おはよ、司」


目覚めたばかりの兄、司の額に唇を落とすと、司は挑発的な視線を俺に寄こしながら喉仏を舐めてきた。
くすぐったさに司の髪を撫で、ゆっくりと身を起こす。


「今日の朝食はなににする?」

「んー、ガーリックトースト」

「はいはい」


まだ眠たそうに枕に顔を埋める司の頭をもう一度撫でて、上半身裸のままベットから抜け出した。

司が購入した高級マンションの一室は、デスリカへも徒歩五分、駅へは徒歩三分という悪くはない立地条件だが、ネオン街が近いせいか治安は少し悪い。
とはいえ喧嘩慣れしている俺には脅威でもなく、デスリカオーナーとして顔の知れている司を襲う馬鹿などこの街にはいなかった。
いや……過去にいたが、いつのまにか消えてたっけ?

斜めスライスして焼いたバケットの上に、スモークサーモンとアボカドを乗せる。
焼く前に塗ったガーリックのいい香りが食欲をそそるが、そろそろ部屋から出てくるだろう司のためにコーヒーをカップに注いだ。
昨夜は珍しくデスリカで酔いつぶれた客が騒いでたっけ? じゃあミルクだけ入れておくか。
なんて思惑して司を待つと、あくびをしながら眼鏡をかける司がリビングに現れた。

司はなんの迷いもなくソファーに腰を下ろすと、テーブルに置いておいた新聞に目を通す。
そんな司のうしろに回り、ゆっくりとコーヒーを差し出した。


「ん、ありがと」

「いーえ、どういたしまして」


新聞から目を離さず、器用にカップを受け取る司に微笑みながら、デザートのヨーグルトも準備して朝食作りを終える。
恐らく今日はあっちのテーブルで食べるだろうから、二人分の朝食を持っていくか。




 


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