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13 - 7



翌日、俺は駅前にある噴水を背にして、じっとりとした汗を握っていた。
雄樹が俺と志狼の仲を取り持ってくれたあのあと、客が減ったのを見計らった志狼が俺に願い出たのだ。

――明日、一緒に来て欲しいところがある、と。

失礼な話だが、最初はもちろん疑った。
また同じことを繰り返すことはないと分かっていても、一度失った信頼を取り戻すということは難しい。

けれど俺は承諾した。そのとき向けられた志狼の真っ直ぐな視線に身震いすらした。
俺は多分、あの目を知っている。


「小虎」

「おー……志狼」


約束の時間より10分も早く、ラフな格好をした志狼が現れる。キャップをかぶっているせいか、いつもより表情が暗く見えた。


「ごめん、待たせた」

「いや、俺が思ったより早く着いただけ。てか今日、暑いなぁ」

「うん」


キャップのせいじゃない。強張った志狼の表情が揺らぐことはなく、どこか遠くを見る目は恐ろしかった。
……まるで今から、死にに行くような、そんな不吉なことさえ本気で思えるほど、志狼の顔からは覇気というものが感じられない。

行き先を告げぬままバスに揺られても、やはり彼の表情はただ頑なに強張ったままだった。


「……志狼、ここ?」

「……うん」


降りたバス停から徒歩10分、着いた場所は病院だった。しかも、俺がお世話になっている其川さんがいる病院だったのだ。
さすがに驚きが隠せず唖然とするが、ゆっくりと入り口へ向かう志狼の背を慌てて追いかけた。

まさか、怪我の診察に来たとか?
いや、そんな理由で志狼があんな表情をするとは思えない。じゃあ、なぜ――。


「こらっ! 梶原さんっ!」


出入り口である正面玄関の自動ドアが目の前で開いたと同時、以前聞いたことのあるような看護師さんの声がした。




 


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