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「え、うっわー。マジで? ちょー……似てないね!」

「……えぇ、まぁ」


自覚はしているし、言われることにも慣れてはいる。
だが、なんというか……そりゃ少しは傷つくと言いますか。

そんな心情が顔に出ていたのだろう。イケメンは苦笑を浮かべて紙コップに入ったお茶を差し出した。


「ごめんごめん。玲央に弟がいるってのは知ってたけどさぁ、誰も見たことないって言うから、本当ごめん。これ、タダだから飲んでいいよ。あとここにある弁当とかも」

「え……あ、はい。ありがとうございます」

「……わー、お礼言われた。玲央の弟にお礼言われたわぁー」


ちょっとムッとしながらお茶を飲む。
寝起きで髪も整えていないし、洗顔と歯磨きを終えただけで、息をつくまもなく連れ出されたのだ。喉だって乾いているし、腹だって減っている。
あとでなにか言われたら玲央のせいにしよう。そう思って弁当に手を伸ばした。


「小虎くーん。それは君のじゃないぞー」

「え!? わっ、すみませんっ!」


なのに、弁当に触れた瞬間、いつのまにかやってきた泉ちゃんのお母さんに注意をされた。
素早く引っ込めた手がイスの背もたれに当たる。ゴンッ、鈍い音が響いた。

それに対して泉ちゃんのお母さんとイケメンが笑っている。ぶすっとしながら体を丸めれば、俺の前にはコンビニ袋が置かれた。


「ごめんねぇ、急に連れ出してきちゃって。これ朝ごはん、よかったら食べて?」

「……ありがとうございます」

「んーん。いいのいいの。玲央のあんな姿見れたんだもの。これくらい安い安い」

「……はぁ」


あんな姿。とはどんな姿なのだろうか、まぁ、いいや。
コンビニ袋からサンドイッチを取り出す。紙パックのコーヒー牛乳にストローをさして飲み込めば、乾いていた喉が少し潤った。


「しっかし驚いたねー。まさかあの玲央にさぁ、こんな弟くんがいるとわねー。つーかよく玲央が許可したね、匡子(きょうこ)さん」

「えー? 許してないわよー。無理やりに決まってるじゃない。ね、小虎くーん?」

「ん? んぐ、はい」

「えー……それ、玲央怒るでしょー……」


苦笑したイケメンに対して、泉ちゃんのお母さん――匡子さんはニシシ、と歯を見せて笑っていた。




 


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