「それが謝罪する人間のセリフか?」
「言い訳になるけど、この街に来てアンタのことには興味があったから喧嘩を売りたいとは思った。けど俺は、先にブラックマリアに喧嘩を売られたから買っただけ」
「……へぇ」
不機嫌そうに歪んでいた兄貴の顔から感情が消え去る。
すぐに隆二さんがなにかを耳打ちすれば、兄貴は冷たい眼差しを志狼に向けた。
かと思えば、俺を見て、
「おい、これはてめぇのなんだ」
とか聞いてくるもんだから、思わずたじろぐ。
「友達、だけど……」
「いつ知り合った」
「昨日……」
「どこで」
「すぐそこの、路地」
「喧嘩は」
「してた……けど、相手は知らない」
まるで尋問だな。俺の返事を聞き終えた兄貴が思惑する様を見ながら息をつく。
フッと微笑んだ兄貴が、その場に立ち上がった。身長差のある二人が並べば金と銀の髪がライトに照らされて光っている。
「お前、ちょっと付き合え」
「は? はぁ、いいけど」
楽しそうに微笑む兄貴が、志狼を引き連れて階下を見る。
かと思えばなにやら話をしているが、それが聞こえてくることはなかった。
そっと隆二さんに近づけば、彼は俺をソファーに座らせる。
「小虎、巻き込んで悪いな」
「え? いや、俺が勝手に首突っ込んだだけですから」
「あー……さっきは少し、ビビッた。あの玲央に抱き着いて止めるとか、小虎じゃないとできねぇよ」
「……そんなこと、ないでしょ。つーか俺も勝手に動いてたっていうか……守ってくれてたのに、すみません」
「いいよ。怪我しなくて良かった」
ふわりと微笑む隆二さんの顔は、雄樹とは違った癒しを俺に与えてくれる。
あぁ、本当にお兄ちゃんオーラが出てるよなぁ、この人。
「あの……兄貴たちはなにを」
「ん? あー……」
まだ階下を覗いて話し込む二人の背中を見ながら問えば、隆二さんは困ったように笑った。
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