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「具合、悪いんですか?」

「……まぁ、……はい」

「もしかして、吐きそう?」

「……」


失礼ではあるが、死んだ魚のような目をした彼女に問うと、ゆっくり首が縦に動く。
女子トイレとか連れていけない! つーかエチケット袋!? あるわけないだろ!
なんて一騒動が脳内で起こったのだが、俺は自分でも信じられないことに、気づいた時には彼女の手を引いてエレベーターへと向かっていた。

突然のことに驚いていた彼女だが、あまりにも気持ち悪いのか抵抗もせずゆっくりとした足取りで俺につづく。
できるだけ支えてあげながら、ここよりは比較的静かであろうカシストへと向かった。


「あ? 客?」


デスリカとは打って変わってガランとした店内を見回すでもなく、俺は彼女をソファに座らせる。
ずっと黙ってついてきた内山が仁さんに説明らしきものをしていたが、俺はカウンターへと押し入った。


「すみません、米あります?」

「米? あぁ、あるけど」

「ちょっと悪いんですけど、ここ借ります」


そう言って、事態についていけない仁さんをよそにキッチンらしきものを借りる。
メニューに軽食もあるカシストではご飯も炊かれており、卵なども小さな冷蔵庫に置かれていた。

シャツを腕までたくしあげ、俺はすぐさま調理に移る。
その横で仁さんと内山が驚いたように俺を見ていたらしいが、そんなことに気をとめるでもなく俺は調理に集中していた。


「これ、食べれそう?」

「……え?」


数十分後、作り終えたお粥を持って彼女の元へ向かうと、それまで静かに目を瞑っていたそれが開かれ、俺ではなくその手にあるお粥へと視線が集まる。


「少し水分多めにしたから、多分食べやすいと思うけど。あと、これ卵味噌。梅干しとかのほうがいい?」

「……」


ぼんやりとした目を向ける彼女は首を横に振り、目の前のテーブルに置いてあげたお粥を眺める。
小皿にすくって渡すと、意外にも彼女は大人しく受け取ってくれた。




 


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