高校3年生 6月


3年生 6月


「あれ、影山くん久しぶり」
「苗字」

3年生になると影山くんとはクラスが離れてしまった。進学する私とバレーを続ける彼とじゃクラスが一緒にならないのは当然だ。学食で久々に顔を見た影山くんはカレーをもぐもぐ食べていてちょっとリスみたいに見える。

「ここいい?」

他に席空いて無くて、と言えば「おう」と快諾される。その様子に、影山くんとご飯を食べていたバレー部の日向君が「影山が女子と普通に話してる!?」と驚愕していた。

「じょ、女子と普通に話せるんだなカゲヤマクン…!」
「あ?話せるに決まってんだろ苗字だぞ」
「いや、意味わかんねぇよ!?」

賑やかだなぁとAランチのサラダをつついていると「それで足りるのか?」と影山くんに不思議そうに尋ねられた。

「ん?足りるよ。でもカレーもよかったなぁ」

美味しそう、と影山くんのカレーを指差す。

「好きなのか?」
「カレー?うん。好きだよ」

大好きというわけでもないけど、カレーは好きだ。カレーって嫌いな人のほうが少ないと思う。

「食うか?」
「えっ!?」

ズイ、とカレーを乗せたスプーンが顔の前に現れる。

「いや、いいよ大丈夫!!ありがと」
「そうか?」

ぶんぶんと首を振って拒否をしたところ、カレーは影山くんの口に収まった。良かったなにかとんでもないことが起きそうだった。
びっくりした、と視線をちらりと日向くんに向けるとびっくり顔とにやにや顔の混ざった、ハイブリッドな顔をしていた。どういう感情なんだろう。
私もごはん食べよう、とハンバーグを一口大に切って口に運ぶ。デミグラスソースが美味しい。もう一度同じ作業を繰り返していると「ハンバーグ一口くれ」と影山くんの声がした。

「え?わ、」

箸を持った腕を影山くんの手が掴む。そして、影山くんの顔がお箸に近づいた。パクリ。ハンバーグが彼の口に消える。

「うまい」
「そ、そっか…」

驚きすぎて言葉が出ない。同じく日向くんも言葉が出ないようでぱくぱくと金魚のように口を開閉していた。これってもしかしたら、将来影山くんがテレビにでたりした時に「ごはん一緒に食べたことあるんだよ」って周りに言えるのかもしれない。



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