高校1年生 2月


1年生 2月

「あの、これってどうやって書くんだ…ですか?」
「えっ!…あぁ、影山くん先生が説明してるとき爆睡してたもんね」

隣の席の彼は困り切ったような顔で恐る恐る話しかけてきた。その様子が珍しくて思わず笑みが漏れる。
暦の上では春とはいえ東北の地はまだまだ冬が居座っていた。暖房でぽかぽか暖かい教室の中、隣の席の影山くんに進路調査票の書き方を説明する。

「将来どうしたいのか書けばいいのか」
「うん、平たく言えばそういうこと」
「平たく?」
「あ、いや、えーっと、とにかく将来やりたいこと書いたらいいの」
「なるほどな」

影山くんはボールペンを手に取るとさらさらと記入する。なんだもう進路決まってるんだ。

「バレー…?」
「あぁ。俺はじいさんになってもバレーする」

進路調査票にドーンと記入された“バレー”の文字に目を丸くする。

「そっか、なんか合宿行ってたよね公欠で」
「ユースか?」
「ユース!影山くんってすごいバレー上手なんだね」

ユースってもしかしてすごいんじゃない?と聞けば影山くんはどこか複雑そうな顔で「…もっとうまい人がいる」と言う。

「そうなの?日本中からすごい人が呼ばれるんだもんね」
「でもぜってえ負けねぇ」

言い切ったときの彼の顔は自信に満ち溢れていて、そのにやりとした表情がなかなか不適で良いなと思った。

「うん。影山くんなら出来るよ」

お世辞でもなんでもなく、自然に出た言葉だった。背が高くて、かっこよくて、バレーが上手な影山くん。頑張って夢を叶えてほしいなと思う。
そしていつか、オリンピックにでたりしてる彼を見て「隣の席だったんだよ」って周りに自慢してやるのだ。

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