鈍感


「モテたい」
「まーた言ってる」

いつまでそれ言うの、と半ば呆れ混じりに問え
ば、野沢は「いつだってモテてぇもんずっと言うに決まってんだろ」とさも当然といった表情で言った。なんでそんなに胸を張って話すのかわからない。

「子孫を残すという本能から言えば、モテたいという欲求はごく自然だ」
「壮大な話になってきちゃった」
「俺どうやったらモテると思う?」
「私に聞くの?」
「一般女子の忌揮のない意見をお聞きしたい」
「一般って…」

苦笑いしながら椅子ごと体を後ろの席の野沢と
向き合うように動かした。

「野沢はさぁ、 ルックス悪くないと思うの。髪型かっこ良いし優しそうな顔だし」
「ふんふん、それで?」

スタートダッシュで褒められて嬉しそうな野沢
が続きを促す。

「でもモテよう!ってガツガツしたオーラが出てて怖い」
「う、」
「そのガツガツした感じを抑えて、面倒見の良さとか、優しさを前面に押し出したら行けるんじゃない?」
「マジ! 俺って結構高評価じゃん」
「クラスメイト特典で甘めの評価にしてます」
「おい!」

私の言葉に野沢はガクッと肩を落とした。

「…野沢の良さってもう少し後にみんなわかるん
じゃないかな。それこそ20代になってからとか」
「今すぐ分かって欲しいんだよ俺は!」

私に食って掛かる野沢はちょっと必死な感じで
面白い。

「諏訪くん意外とモテてるし、諏訪くん見習ったら?」
「あの落ち着きと頼りがいのある感じは一朝一夕じゃだせねーよ」
「わかってるじゃん」
「おい」

はぁーっと深いため息を吐きながら、野沢は机
に突っ伏す。

「幸郎とかもモテんだけど、あれも俺にはマネできねーや」
「幸郎?」
「昼神」
「あー!昼神くん!!彼女いるのにモテるよね」

あれは見た目と雰囲気が大きく作用している気
がする。

「昼神くんも落ち着いてて優しい感じだね」
「なぁ落ち着きってどこで売ってる?」
「ばーか」

なんともばかばかしいことを言う後頭部にシン
プルな悪口をぶつける。
ホントにばかだよ野沢。
目の前に野沢のこと好きな人間がいるのに全然
気がつかないんだから。
それがちょっとだけ切なくて、私は鈍感野郎の
つむじを人差し指でぐりぐりと押してやった。


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