器械体操
なんで真冬に体育をしなきゃならないんだ、それも器械体操なんかを…とついつい教育委員会への怒りが湧く。室内とはいえ体操服の上にジャージを着たって寒くて仕方ない。自分の順番を待っている内に準備運動で温まった体も冷えてガタガタと震えだす。
こんな状態でもともと苦手な側転なんてできっこないとイラつき始めていた時、横からスッと手が出てきた。
「使うか?」
「え、カイロ?」
「すげぇ寒そうにしてるから」
マグマと印字された最高に温かいカイロを受け取る。冷え切った指先がすぐにじんわりと温まっていった。
「これ借りちゃうと白馬くん寒いでしょ?」
「俺より苗字の方が必要だろ」
「…ありがとう」
お礼を言うと「おう!」と彼はにっこり笑った。隣のクラスの白馬くんとちゃんと話すのは初めてだ。こうして体育が合同じゃなければきっと関わりもなかっただろう。
学年で1番じゃないかっていうくらいに体が大きいから少し威圧感を感じていたけれど、優しくされて好感度が爆上がりした。だって、おっきな体を曲げて目線を合わせてくれて、自分のカイロを譲ってくれるなんて胸キュン不可避だ。
今度何かお礼しよう、と心に決めて苦手なマットに立ち向かうことにした。
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