番外編2

ツンとした独特のにおいが鼻をつく。
窓を開けてるからだいぶマシだけど、このにおいだけはいつまでたっても好きにはなれない。刷毛を爪の上に滑らせると、トロリとした液体が爪の表面を彩る。
服装の邪魔にならないようにしたいので今回は指先が締麗に見えるという触れ込みのベージュネイルにした。

「うわ、なんやこのにおい」

ガチャッとリビングの扉が開いたと同時に文句の声が飛んでくる。

「ごめんネイル塗ってる」

風呂上がりの修吾はタオルで頭をガシガシ拭きながらソファーに座る。そして興味深そうに私の手元を覗いた。

「名前いっつも爪綺麗にしとんなぁ」

好きなんやな、と感心したように言われる。

「んー…好きって言うか」
「ん?」
「修吾に会う時、綺麗に塗りなおすようにしてたの。少しでも、綺麗な私を見て欲しかったから」

そしたら習慣になっちゃった。と塗り終わった刷毛を戻して修吾の方を向く。
すると、彼は何故か両手で顔を覆って俯いていた。ほぼ2メートルの男がそうしている姿はかなり不気味だ。

「え、なに。どうしたの」
「あかん」
「なにが」
「めっちゃ過去の俺を殴りたい」
「え?」
「こんないじらしい名前を見落としとるとかホンマあほや」
「…そう?」

別に落ち込まなくてもいいと思うんだけどな。何を思ったのか修吾はスッと両手を開いてじりじりと近づいてくる。

「え、なに、待って」
「抱きしめさせてくれ」
「爪乾いてないからやだ!だめだって、わっ」
「名前ー!」

ネイルのせいで強く抵抗できないのをいいことにぎゅうぎゅうに締め付けられる。正直苦しい。でも、あんなに触れたかった相手にこうして触れることができるのは悪くないと、そう思ってしまうのだ。

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