Q1.出会いを教えてください。
A1.会社の同僚です。仕事上のやり取りでお話したのが最初だと思います。

Q2.旦那さんのどういうところに惹かれましたか。
A2.何だかんだ優しいところと安心感だと思います。

Q3.旦那さんは理想の相手ですか?
A3.いいえ。本来の好みのタイプではありません。

Q4.旦那さんと旅行に行くなら?
A4.温泉に行きたいです。

Q5.最後に旦那さんに一言お願いします。
(クイズ終了後紹介させていただきます)
A5.体が資本なので無理をせずにいて欲しいと思います。大好きです。

そこまで書いて最後の5文字を消した。
こっぱずかしいことこの上ない。こんなのアドラーズのアンケートに書くことじゃないとすぐ我に返った。
急に私の部署までやって来たアドラーズの広報担当者から渡されたこのアンケートは、今度のファン感謝祭で使うものらしい。
福郎には内密に、といわれたそれをデスクでこそこそと埋めていく。家だとバレる予感しかしない。
どうやら他の妻帯者数名にも白羽の矢が立っているようで、決して口外しないようにと言い含められた。
無難なことを書いておけばいいだろうと、その辺で切り上げて広報担当者まで持っていく。

「わ、早かったですね」
「家だとバレちゃいそうで」

驚く担当者に苦笑いで答えると、「あぁ、確かにキャプテン勘が良さそう。ご協力感謝します」と無事受理された。
渡された筆記具に付属していた消しゴムが綺麗に消えないやつで、ちょっと跡が残っているけれど、まぁいいかと流した。
なんでもファン感謝祭で「全問正解当たり前!奥さまクイズ!!」なるものをやるらしい。
全問正解されそうでなんだか怖い。
まぁファン感行かないしいっか、と広報担当者に挨拶をしてその場を離れた。

私がアンケートの存在を忘れた頃にファン感謝祭は無事終了した。
私は現地に行ってないけれど、足を運んだ同僚曰く盛り上がっていたらしい。そして福郎が全問正解をキメたことも聞かされた。
嬉しくない予想的中だ。と言うかなんでわかるの?

「ただいま」
「おかえりなさい」

太陽がすっかりその姿を消した頃に帰宅した福郎を玄関先で迎える。
ギュッとおかえりのハグをしていると「いつの間にアンケートなんて答えたんだ?」と聞かれた。

「んー結構前かな。家だとバレそうだったから会社で書いたの」
「なるほどな〜」
「全問正解したって聞いた」
「耳が早いな」
「怖いんだけど」
「なんでだよ」

喜ぶところだろ、と福郎は苦笑いする。

「なぁ、アンケート用紙見せてもらったんだけど、最後の質問の答え、なに消したんだ?」
「…忘れた」

彼の腕から逃げ出しリビングへと歩き出すと福郎が後を追ってくる。

「嘘っぽいな〜」
「忘れたったら忘れた」
「へぇ〜?」
「わ、」

リビングへ入ったところで後ろからハグをするように捕まえられた。

「"大好き"って見えたけど?」

綺麗に消えてなかった、と楽し気に囁かれる。

「…性格悪い!」
「だって直接聞きたいだろ〜?」

ぎゅうっと後ろから抱きしめられて苦しい。なにより逃げられない。

「やだもう放して」
「やだ」

“大好き”と書いたことを知られるだなんてとんだ不覚だ。
後ろにいるから見えないけど、大体どんな顔をしているかわかる。

「名前が俺のこと大好きって思ってくれて嬉しいよ」
「ほんとやだぁ」
「はは、照れてる」
「うるさい」
「残念だけど、俺は大好きじゃないんだよな〜」
「え、」

その言葉に心臓が嫌な音を立てた。
どういう意味だろうかと、悪い方向に思考が傾いていく。
思わず、首を捻って後ろの福郎の顔を見た。
すると、さっき想像していた通りの笑顔で「俺は愛してる」と告げた。

「…なにそれ」

安心した私の口から出たのは可愛くない言葉で、それでも彼は面白そうに笑っていた。

「嬉しいって顔してる」
「も〜…うるさい」

緩んだ拘束に体を後ろに向けて抱き着く。腕が背中に回り切らない。
この広い背中が好きだっていつか言った気がする。確か福郎はにこにこしていたっけ。

「…私も愛してる」
「よっしゃ〜」

軽い調子で喜んだ福郎は私をぎゅうっと抱きしめる。
まったくもう。愛してるから結婚したに決まってるでしょ。


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