廊下に生徒が溢れている昼休みでも、幸郎くんはすぐに見つけることができる。
人込みから頭一つは優に飛び出しているから、意識しなくたって目に入ってしまう。今日は特に白馬くんが隣にいるせいで余計に見つけやすかった。
二人は何やら真剣な様子で話をしていて、私は邪魔する気になれず無言ですれ違うことにした。
「だから、速攻を活かして―――」
二人の会話の断片を捉えるに、部活の話をしているようだ。私は幸郎くんってバレーに真摯だよなぁ、と思いつつ、その横を通り過ぎようとした。
ポン、その瞬間、頭に何かが乗る。
乗ったと同時に頭をわしゃわしゃと撫でた大きな手は、すぐに離れていった。私はどぎまぎしてしまった心臓を片手で押さえながら、ぐちゃぐちゃにされた頭に触れる。
やはりそこはぼさぼさになっていて、無遠慮に触れられたことは明白だった。
今日は髪を結んでいないから、私だって気づかれないと思っていたのに。
思わず振り返った幸郎くんは先ほどと変わらず白馬くんと話しをしていて、周りを気にしている様子は無い。
そんな中私に気がついてくれたことが嬉しくて、ぼさぼさの頭を押さえながらにやけそうなのを必死にこらえたのだった。
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