ヒミツの時間







パチッと目を開けると目の前に幸郎くんの顔があった。幸郎くんの部屋で寝落ちしてしまったから当然なんだけど、少しだけ驚いてしまう。

静かに眠っている幸郎くんは穏やかにみえて、こうしてまじまじと顔を眺める機会なんてないからついジッと見入ってしまった。

髪と同じ柔らかな色のまつ毛は、窓から差し込む光に照らされより柔らかな色に見える。ずっと室内競技をしていたからか、日に焼けていない肌は白く、荒れたところも特に見当たらなくって羨ましい。私よりも顔のパーツひとつひとつが大きい気がした。
血管の色が透けている唇はほんのりとピンク色をしていて、眠りに落ちる前までそれが私に触れていたのだと思うと急にドキドキしてしまう。

顎に触れると、指先にひっかかりを覚えて、タ方だしヒゲが伸びてきたんだなぁ、と少し不思議だった。それはきっと、ヒゲが伸びた幸郎くんを見たことが無いからかもしれない。

試験期間が終わって大学は冬休みに入った。
だからこうして、平日にそういうコトが出来てしまうわけなんだけど、やっぱりちょっとだけ悪いことをしている気分になる。親の目を盗んでいる意識が残っているからだろうか。
社会人になったらそんなことも無くなるのかな。
ぎゅっと幸郎くんに抱き着くと、彼の体で私の胸が押しつぶされるように形を変える。
裸で密着するという恥ずかしい状況だけど、幸郎くんはまだ寝ていて一切気がついてないから平気だ。
幸郎くんが寝ている間にこっそりくっついたりキスをするのが最近の楽しみだった。
意識のある時だと、やり返されたり何かしらからかってくるから、この状況は絶好のチャンスだ。

しっかりとした首筋に頬ずりすると、幸郎くんの匂いを濃く感じる気がする。顎の下にキスをして、ちょっと体を動かして唇にもキスをした。様子を伺うけれど、目を覚ますような兆候は感じられない。疲れてたのかな、と調子に乗ってほっぺや額にもキスをする。それでも、幸郎くんは眉ひとつ動かさなかった。
いっそ不自然なほどに。

まさか寝たふり?!とハラハラしながら観察するけれど、穏やかな寝息は眠っているように思えた。きっと眠っている。希望的観測も入ってるけど、そう思った。そろそろ起こそうかな、と思いながらもう一度幸郎くんにキスをする。幸郎くんは相変わらず身動ぎひとつしない。
起こしたいけどもう少しこのままでもいたいなぁ、一人どうするか悩みながら私は幸郎くんのほっぺをつつくのだった。

(え?は?名前ちゃん何してんの。うわーど
のタイミングで起きよう)





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