2人の距離(星海視点)


星海光来の目

星海が苗字名前を知ったのは、中学校生活も半ばを過ぎた頃だった。
一緒にいた部活仲間の昼神幸郎が、突然そばを通った彼女を呼び止め星海に紹介したのだ。なんでも小学校からの知り合いだと言う。
もちろん以前から名前くらいは知っていたが、彼女個人をはっきり意識したのはこの時が初めてだった。彼女は星海と幸郎に挟まれて居心地が悪そうな様子で言葉を交わす。どこか警戒しているようにも思えた。それ以来、星海と名前は時折言葉を交わすようになった。一度存在を意識すると目にとまるようになるもので、幸郎と名前が一緒にいると星海はつい様子を伺ってしまう。

紹介するような間柄のはずの2人の様子は、どうにも仲良しだとは思えなかった。幸郎が言うには、小学生の頃にお互いの家を行き来していたくらいの関係性らしいが、それにしては名前の態度には距離があるように思える。しかし星海はそれを深く追求することなく、「まぁ、あいつ暗かったしな!」と1人結論づけて、友人が増えたことをすんなりと受け入れたのだった。
そういう割り切りの良さが星海の持ち味だった。

そんな懐かしい記憶を思い出したのは、現在の二人の様子を目の当たりにしたからに他ならない。

高校生になって急に距離が縮まったというか、幸郎によって縮められたというべきか、名前は幸郎の隣にいても、おどおどすることは無くなった。

今なんかは、幸郎に後ろから抱え込まれるようにして二人で名前のスマホを覗き込んでいる。

「それでね、この後にコタロウちゃんがコロンってお腹見せてくれるの」
「はは、ホントだ。名前ちゃんに甘いよねコタロウ」

それはお前もだろ、と言わないのは武士の情けのようなものだった。
最近の様子を見るに、2人の間のわだかまりのようなものは解消されたんだと察することができた。問題があるとすれば、二人が何故だか星海の前ではベタベタするということだ。

その他の人間の前であからさまに距離が近いことはそれほどないように思う、2人の中で無意識の線引きがあるのかもしれないが、星海がそれを許容したり許可した覚えは無かった。

「おい…俺の前でいちゃつくなっつってんだろ!!」
「わ!ほ、星海くんごめんね」
「気にしなくていいよ名前ちゃん」
「気にしろ!お前は特に気にしろ!」

おそらく一時的な効果しかない言葉を叫びながら、星海はマジでやめくれと願うのだった。




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