麗かな午後




洋画ってどうして、唐突に濃いめのラブシーンが入るんだろう。

さっきまで世界の危機に立ち向かう話をしていたはずなのに、急に始まったラブシーン。軽めの口論をキスで黙らせるのはいいけれど、どうしてヒロインもそれをすんなり受け入れるんだろう。
顔の角度を変えながらどんどん激しくなっていく口付け、服を脱いでいく二人。うわぁ胸おっきい、なんて変なところが目に付いてしまう。

ちらっと横目で幸郎くんを見ると、さっきと変わらず、ソファーに深くもたれるように座って映画を見ていた。自分だけが気まずく思っていることに気がついて、少し恥ずかしくなる。だってなんか変に意識してるみたいなんだもん。お互い大学が春休みに入ったからと決まった昼神家でのおうちデート。2人でゆっくりアマプラを見ていただけなのに、なんでこんな気分にならなきゃいけないんだろう。

画面の中の二人は相変わらず、さっきまで口論していたデスクで絡み合っている。
見てられなくて、視線を床に落とすと、コタロウちゃんが気持ちよさそうに眠っていた。音声もなんか、その、真っ最中の感じになってきて、そわそわしてしまう。
早く終わってくれないかなぁ、とまた横目に幸郎くんを見ると、ばっちり目が合った。

「どうかした?」
「えっ」
「なんかそわそわしてるから」

どうしたのかなーって、と幸郎くんは微笑む。私はワタワタしながら「な、なんでもないよ」と首を左右に振った。

「こういうシーンになるといつも照れてるよね」
「そ、れは…」

わかってるならわざわざ聞かないでよ!と内心思う。幸郎くんって本当にいい性格してる。

「照れる必要ある?」

名前ちゃんだってしてることじゃん。と軽い調子で言われてカッと頬が熱くなった。

「やめてよぉ…」

思わず両手で顔を覆って俯く。そんなの私だってわかってるけど、照れるものは照れるのだから仕方ないと思う。それに自分が行為に及ぶのと、人の行為を見るのとは全然違うと思うのだ。
幸郎くんの手が私の肩を抱く。
そして、彼の方に引き寄せられた。ポスン、幸郎くんにもたれかかるようになる。

「…俺たちもスる?」
「ひっ」

耳元でささやかれた言葉に飛び上がりそうになった私に、幸郎くんは可笑しそうに笑い声をあげる。からかわれた、と頬を膨らませる私に、幸郎くんは相変わらず可笑しそうに笑いながら、「ごめんごめん」と私の頭を撫で、指を絡めるように手を繋いだ。

そんなので誤魔化されないぞ!と思いながら視線を映画に戻せば、既にラブシーンは終わっていて、また世界の危機に立ち向かうための作戦会議になっていた。
私は幸郎くんにもたれかかったまま、主人公が世界を救ったヒーローになるのを最後まで見守ることにした。

その間ずっと手は繋がれたまま。
そんな麗かな午後もたまには良いと思うのだ。




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