静臨+津サイでハロウィンネタ
ナチュラルに同棲している四人





「ハッピーハロウィン!」


言葉とともにサイケが投げつけたお菓子は、帰宅した静雄の顔面に見事命中した。





「これはどういうことかなぁあ?サーイーケーよぉ」

ビキリと青筋が浮かんでいる静雄を横目に、サイケはポケットに手を突っ込んで取り出した飴を頬張る。

「どうって、ハロウィンだよ」
「人の顔に菓子投げつけんのが手前のハロウィンか随分楽しそうだなよし叩かせろ」
「ああ、静雄帰ってきたのか」

ガチャリとドアを開けて入ってきた津軽は静雄から庇うようにサイケの前に立つと、牽制するように真っ直ぐ睨みつける。

「サイケ叩いたらキレるぞ」
「キレてぇのは俺のほうなんだよ!」
「……なんでしずお怒ってるの?」

首を傾げるサイケに、静雄はとうとう廊下の壁を破壊した。十月も末のことである。






リビングに入るとそこはハロウィン仕様になっていた。カボチャの飾り物やキラキラした装飾。大量のお菓子。極めつけはサイケの頭についた白いウサ耳と津軽の頭についた狼耳のカチューシャが仮装を物語っていた。

「いざやくんがねー、ハロウィンには人におかしをぶつけて不幸をおいだすんだって言ってたの!」
「でも臨也がもう夜遅いから外に出るなって言ったからよ、しかたなく帰ってきた静雄に菓子を投げて不幸を追い出した。理解したか?」
「……よぉくわかった。臨也は何処だ」

ソファに座った静雄が身につけているのは家族が送ってくれたバーテン服ではなく、ラフな私服だった。原因は菓子を投げつけた眼前の二人にあるのだが(静雄がサイケを軽く叩いたら津軽が出来立ての手作りプリンを投げた)、二人は全く悪びれた様子も見せずに菓子を次々と口に運んでいた。

「いざやくんはようじがあるって、さっきでかけたよ!」
「……そうか」

ぐ、と拳に力を入れ怒りを堪える。自分一人を欺くためにサイケと津軽に嘘の知識を教えた臨也が許せなかった。

ふいに玄関から物音がして、次いで臨也の声が聞こえた。パア、と表情を明るくして臨也のいる方向に走りだそうとしたサイケの首根っこを掴み、静雄は津軽へとその華奢な体をぶん投げた。

「サイケが怪我したらどうするんだ」
「手前がいるから大丈夫だろ。それより二階に行っててくれ。俺は臨也と二人きりで話がしてぇ」
「……わかった」

不満そうに眉をひそめた(おそらく早く皆でハロウィンパーティでもしたかったのだろう)津軽は、目を回しているサイケを抱えて階段をあがる。その足音を聞きながら静雄は臨也の元へと足を進めた。




「あっ、シズちゃん」

帰ってたんだ、と驚いた臨也の手には白い箱。中身が何か気になるがこの際どうでもいい。静雄は右手を振り上げると、殴られるかと反射的に目を瞑った臨也の前に差し出した。

「トリック・オア・トリート」
「……へ?」
「今日ハロウィンだろ。さっさとよこせ」
「あ、そういうことか。待ってよ。たしかポケットにお菓子が……」
「違ぇよ」


言って、静雄は臨也を優しく抱きしめる。動揺に息をつめた臨也の心臓の音は面白いほど跳ね上がっていた。

「…っな、に」
「臨也、俺は菓子よりお前がほしい」
「―…え」

驚愕に目を見開いた臨也の唇に静雄は乱暴に口付ける。奥で縮こまっていた舌を絡ませるとすぐに甘い声が聞こえた。



そのとき、臨也は知らなかった。まさか静雄がサイケと津軽を騙したお仕置きと称して足腰が立たなくなるまでヤられることに。

そのとき、静雄は知らなかった。よもや臨也が仕事のしすぎでハロウィンと節分をごちゃまぜで記憶していたことを。白い箱の中には静雄は投げつけるようのケーキが入っていたことに。

二人がそのことを知るのは、まだ先のお話。

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