001
私、羽川めいこは3年ぶりに帰ってきた。
3年ぶりに帰ってきた街中は変わっているようで変わってはいなかった。
小さい頃に遊んだ公園だって、幼稚園に通っていたときの道だって、少し綺麗になっているだけでほとんど変わってはいなかった。
公園にまで行く途中にいる良く吠える犬のゴンタだって、相変わらず馬鹿みたいに吠えていた。スーパーの近くにある家の柴犬まりんだって私の事を覚えていてくれたようで、飛びついてきたぐらいだ。
そんな少ししか変わらず、私の事を覚えてくれている街並みというのはやっぱり居心地が良くてついつい鼻歌を歌ってしまう。そんな上機嫌な私の目の前を一人で歩く女の子を見つけた。その子のことを私はよく知っている。その子の名前は瀬名あやめちゃん。相変わらず綺麗な黒く長い髪を揺らして歩いていた。あやめちゃんは小さい頃からずっと一緒の私の親友だ。私は、その変わらない姿に嬉しくなって、つい高く手を上にあげて、声をかけようとした。
あやめちゃん!そう元気に声を出そうとした瞬間、あやめちゃんが私に気づいたのか少しの間、目が合う。そうして少しだけ、静かな時間が過ぎる。私は手を上げたままのポーズが何だか恥ずかしくなってしまった。手を下して小さく照れ笑いしながら、小走りであやめちゃんに近づこうとすると、あやめちゃんは下を向いて横を通り過ぎてしまった。
私にはそれがおかしく思った。あやめちゃんはもしかして私のことを忘れてしまったのだろうか?そんな馬鹿なことを考えてはみるけれど、きっと違うと思う。あやめちゃんは親友で、そんな子ではないと知っているからだ。
ではなぜなのだろうか。どうして、無視をしたのだろう。どうして、私を見てもおかえり、といってくれなかったのだろう。
私は、そんなあやめちゃんの姿が、不思議でならなかった。離れた3年間に何かあったのかも知れない。そう言えば、どこかうわの空な様子は、寝不足のパパの動きに似ていた気もする。
折角あやめちゃんのお隣に引っ越してきたのになぁ。やっと、会えたのになぁ。なんてことをたくさん考えながら歩いていれば、もう目の前に自分の家があった。いつの間にかスーパーや、まりんにゴンタの家、懐かしい公園を通り過ぎていたようだった。




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