※R15程度の描写があります




ベッドに深く沈み込みゆっくりと息を吸う。
自分の匂いは自分では分からないものだけれど、イタチの匂いが仄かに染み込んだ布団の匂いがわたしは好きだ。全身が彼に包まれているような幸せな感覚。そんな事を微睡む頭でやんわりと口にすると彼は柔らかく笑った。

「そんなものに縋らずとも俺はすぐ目の前にいるだろう」

互いに既に何も身に纏わず、布団の中で素肌を寄せ合う。さっきまでじっとりと汗をかいていたけれど、梅雨に入ったこの時期の夜は随分冷え込むようになった為今はもうすっかり収まっていた。身体を小さくして丸くなるわたしを見て彼は寒くないかと聞いた。そういう優しいところが好きなのだ。なんだか急に恥ずかしくなってわたしは寒くないと言いながらも布団に顔を埋めた。

「ね、誕生日おめでと」
「…?ああ、そうか。ありがとう」
「もう、まさか忘れてたの?」
「あまり意識していなかった」

彼は何でもないように言ってみせたがそれを忘れていたと言うのだ。わたしがクスクスと笑うと同じように彼も笑った。情事の後のこの時間は時が刻まれるのがゆっくりと感じられて、まるで世界から二人だけが切り取られたかのように思える。身体じゅうは痛いし倦怠感も纏わり付いたままだが、わたしはこの時間が気に入っている。

「今日はお休みだから、気合い入れて料理作るね。イタチより上手なのは作れないけど…」
「それは楽しみだな。俺は自分で作るよりなまえが作る料理が好きだ」
「ありがとう。あとね、何か欲しいものはある?物でもして欲しい事でも何でも」
「…何故だ?」
「プレゼントは一応用意してあるけど、それとは別に。日頃の感謝を込めて特別なサプライズがしたいの」
「サプライズを本人に聞いて良いのか?」
「…本人に聞くのが一番良いってみんなに言われたから」

いつもわたしより何枚も上なイタチを驚かせ喜ばせるのはとても難しいのだ。彼の弟のサスケを始め色々な人にアイデアを聞いて回ったが結局誰しもが同じように答えた。蛇足だがそもそもイタチの考えている事は家族ですら掴みづらい、と口を尖らせていたサスケを思い出した。

「で、どう?何かない?今なら何でも聞いてあげるかもだよ」
「そうだな…。それなら、今日は一日こうしていてくれないか。側にいよう」
「そんなの言ってくれればいつだって休みの日は側にいられるのに」
「でも今日は俺の誕生日だからな。お前が考える隙もないくらいに俺だけを感じていればいい」

そう言ってイタチはわたしの後頭部に片手を回し顔を近づけ、そのまま口付けた。触れるだけの優しいそれは、しかしわたしの身体に一気に熱を込み上げさせる。
薄い唇は触れるだけではあるものの一向に離れていく気配はなく、ただじっとくっ付けられていた。焦らされたわたしは彼の唇に自らを押し付けて小さな音を立てた。すると今度は彼の舌が力の抜けていた唇を押し広げて口内に侵入した。あっという間に歯列をなぞられて熱の篭った呼吸に変わっていく。

「さっき、もうしたのに」
「…俺はまだ足りない。なまえも、だろう?」

イタチの足がわたしの足に絡まり本格的に逃げ場を失った。否、逃げる気もなかったが。これじゃあ明日はきっと外出は無理そうだなとわたしは思考の遠くの方でぼんやりと考えた。いく先々で誕生日を祝われる彼がどんな反応をするのか見てみたかったりして。

「あれ、イタチ22歳?オトナだねぇ」
「なまえもそれほど変わらないだろう」
「わたしたち暗部に入った頃は一番年下だったのに、いつの間にかもっと若い子達が入って来て年取ったなあって思っちゃった」
「お前より年上の俺の前で言うか」
「ふふ、イタチはそういうの気にしないでしょ?」
「まあそうだな。それより…」

逃げていないで集中しろ、と彼はわたしの身体を引き寄せた。逃げたつもりはないけれど、確かに話題を逸らしたのはわたしだ。いつもより余裕がなく獲物を狙う狼のようなイタチにわたしは少し嬉しくなって彼の背中に腕を回した。お出かけはまた今度にして、今日は彼の願い通り彼の好きなようにさせてあげよう。


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